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中東諸国のカタール断交のウラには何がある? - 冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代

6/6(火) 15:00配信

ニューズウィーク日本版

<中東6カ国のカタール断交の背景として様々な要因が指摘されているが、イランやISISへの敵対姿勢をはっきり示さないカタールへの警戒感が強まった可能性も>

サウジアラビア、エジプト、アラブ首長国連邦(UAE)、バーレーンの4カ国(これにイエメンの暫定政権とモルディブを加えた計6カ国)は、協調する形で今週カタールとの国交断絶を発表しました。カタールと言えば、サウジ、UAE、バーレーンと共に「湾岸協力会議(GCC)」を形成しており、西側にはフレンドリーなことで一貫しています。スンニ派の首長国という政体も、サウジやUAE、バーレーンと一緒です。

このカタールの首長は19世紀以来、サーニー家の当主が務めてきており、1971年に英国から正式に独立して以降も同様です。ちなみに、現在の首長タミーム・ビン・ハマド・アール=サーニー(タミム首長という言われ方が一般的)は、37歳という若手リーダーです。

そのカタールに対して、これら諸国が断交をしたわけで、サウジなどは外交関係を遮断するだけでなく、陸海空路の交通までストップさせる構えも見せていますので、穏やかではありません。

一部には「カタールが湾岸諸国を裏切ってイランと通じている」などという「容疑」が語られていますが、つい数日前までカタールは、サウジ主導のイエメンにおけるシーア派(ホーシー派)との戦闘に参加していた(現在は除外されている模様)くらいですから、スンニ派のカタールが、シーア派のイランと連携するなどということは、にわかには信じられません。

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カタールは西側との関係も良好で、特にアメリカは大きな軍事基地を置いています。現在のマティス国防長官が司令官を務めていたこともある米中央軍(セントコム)の前線司令部が置かれていたこともあるぐらいです。

そのカタールが、どうしてサウジ以下の穏健なスンニ派諸国から敵視されるのか、まだ決定的な原因は分かっていません。ですが、とりあえず仮説としては、色々な指摘ができるように思います。

1つは、カタール首長家がスポンサーになっている「アルジャジーラ」放送への反発があった可能性があります。「アルジャジーラ」は穏健なイスラム圏世論を代表するというイメージがありますが、アラブの春を支援したのは事実ですし、エジプトでは「ムスリム同胞団政権」の成立に手を貸したとして、シシ大統領はこれを危険視しています。

バーレーンやサウジも、「アルジャジーラ」の報道姿勢は独裁体制打倒のキッカケになるとして警戒しているということもありそうです。



2つ目としては、カタール首長家は「カタール国内の反体制派」を懐柔するために、イスラム圏の幅広い「反体制グループ」に薄く広く援助をしているという噂があります。自分たちが地元で革命を起こされないように、イスラム圏全体の過激な運動に理解を示すポーズを取って一種の「保険をかけている」というのです。

一部には、その資金は回り回って「アルカイダ」や「IS」にも行き渡っているという説もあるぐらいです。これに対して、サウジやエジプトが「許せなくなった」ということはあり得ます。

3つ目としては、アメリカの影響という問題です。トランプ大統領は、G7サミットに行く前にサウジを「最初の外遊先」に選び、そこでGCC会議にも出席しています。その際に、トランプ大統領は「イランとIS」を究極の悪玉として認定し、敵味方の区別をハッキリするように迫った結果、態度の曖昧なカタールに対してサウジやエジプトが警戒感を強めたという可能性があります。

4つ目としては、トランプ大統領のGCC会議参加によって、一見するとサウジとアメリカの関係は強化されたように見えますが、可能性としてはトランプ大統領があまりにも「トンチンカン」な姿勢を見せてしまい、サウジとしては「アメリカには中東を仕切る能力はない」と判断された可能性もあります。

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結果として、サウジやエジプトが「アメリカの意向を離れた暴走」を始めたというシナリオがあり得ます。特にサウジは、アメリカから巨額(1100億ドル=約12兆円)の武器購入を決めているので、これによる湾岸の覇権づくりを早速実行に移したのかもしれません。アメリカのティラーソン国務長官は「断交しないように」という調整工作をしたようですが、今のところは無視された格好です。

5つ目としては、この地域の特殊事情として「トラブルがあれば原油価格の上昇要因になる」ので、あえてトラブルを起こすことへの抵抗感が少ないということもあるかもしれません。

カタールの首都ドーハといえば、2022年のFIFAワールドカップの開催地です。2018年のロシアも多少の懸念があるわけですが、2022年についても、無事に開催ができるのか、政治的に微妙な情勢となってきました。

冷泉彰彦

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