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従業員・地域ファーストが世界品質ブランドの源泉―ビクトリノックス・ジャパン 田中 麻美子社長

6/7(水) 23:22配信

オルタナ

サステナブル・オフィサーズ 第15回
Interviewee
田中 麻美子 ビクトリノックス・ジャパン社長
Interviewer
森 摂・オルタナ編集長

 携帯用ナイフの世界シェア大半を押さえる、スイスの「ビクトリノックス」。1884年、「故郷に雇用を創造する」ことを目的に、創業者カール・エルズナーがスイス中央地域にある小さな村・イーバッハに開いてから130年が過ぎた。グローバルブランドに成長した現在も同地に本社を置き、従業員の幸福と地域経済・環境との調和を重視したものづくりを徹底している。持続可能な環境に配慮した企業姿勢とブランドの源泉となる同社の理念について、日本法人の田中麻美子社長に聞いた。

ふるさとの幸せを第1に考える

--「サステナビリティ」という概念が世界の経営者に広がっています。創業130年を越え、世界123カ国でビジネスを展開するビクトリノックスは、サステナブルな企業であると思いますが、創業理念について、まず教えてください。

田中 ビクトリノックスは、サステナビリティがビジネス界で話題になるずっと前から、社内で使っています。本社があり、従業員が暮らすイーバッハという村での雇用創造・事業の持続を第一に考えてきました。その創業理念をまずお伝えすることで、ビクトリノックスのサステナブルな企業戦略をより深く理解していただけると思います。

イーバッハ村は、現在も人口3500人程度の小さな村です。創業者であるカール・エルズナーは、雪が積もる冬の間に仕事がなくなるこの村から父親たちが出稼ぎでいなくなり、家族がばらばらになることに心を痛めていました。

『家族そろって幸せに暮らすために、村に1年中働ける仕事を創りたい』。これが初代エルズナーの創業動機です。ドイツ・フランスに刃物鍛造の修業に出かけた創業者は、1884年に故郷に戻って仲間とともにナイフをつくるワークショップを開催しました。当初は苦労したものの、改良を重ねて、1891年にスイス陸軍に採用される「ソルジャーナイフ」を開発し、事業はようやく軌道に乗り始めました。

創業理念に基づく「従業員ファースト」は徹底しています。まず、レイオフをしていません。その姿勢が一番顕著だったのが、世界恐慌(1929年)やアメリカの同時多発テロ(2001年)の時でしょう。こうした世界の大混乱時にも「1人も社員を解雇しない」という方針を貫きました。

同時多発テロの後、私たちの看板商品である「マルチツール」の機内持ち込みが禁止されました。売り上げが3割落ち、「余剰人員」が出ました。しかし、会社は村内にある他業種の会社に社員を働かせてくれるように頼み、給与を払い続けました。その後業績を必死に回復し、また復籍させたのです。これは企業の存在意義が「雇用創造、従業員の幸福」だからです。レイオフをしてしまえば「企業の存在意義がなくなってしまう」と、トップは考えています。

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最終更新:6/7(水) 23:22
オルタナ

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