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昌子源にかかる期待と重責。叫ばれる世代交代の必要性、吉田を超えるCBの台頭

6/7(水) 12:02配信

フットボールチャンネル

 日本代表は7日、国際親善試合でシリア代表と対戦する。この一戦は翌週のロシアW杯アジア最終予選・イラク戦を意識した重要なシミュレーションであると同時に、将来を見据えたテストの場でもある。世代交代の必要性が叫ばれる中、特に固定化が進んでいたセンターバックのポジションに昌子源が殴り込みをかける。(取材・文:元川悦子)

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●昌子源が吉田麻也の相方として先発か

「今回のテストマッチはイラクに少し似ているシリアという相手を選んだ。特にアグレッシブさとパワーのところだ。この試合に勝つためにまずは失点しないことが大事だと選手たちに伝えた。イラクという重要な試合の準備をしっかりやっていこうと話している」

 ヴァイッド・ハリルホジッチ監督が前日記者会見でこう語った通り、7日のキリンチャレンジカップ・シリア戦(東京)は「仮想イラク」と言っていい一戦。13日に中立地・テヘランで行われる大一番を想定して選手を選考し、ベスト布陣を選択するだろう。

 2日前のトレーニングと選手たちのコメントを総合すると、シリア戦のフォーメーションは4-3-3が有力。1トップに大迫勇也(ケルン)を据え、右FW久保裕也(ヘント)と左FW原口元気(ヘルタ・ベルリン)が支える3トップの先発はほぼ確実だ。

 中盤は右インサイドハーフに今野泰幸(G大阪)、左インサイドハーフに香川真司(ドルトムント)、アンカーに山口蛍(C大阪)の組み合わせをイラク戦にぶつけたいはず。ただ、左足小指骨折から復帰したばかりの今野にはリスクがあるのも事実。スタメン起用して時間制限で交代させるか、途中から出場させるか難しいところで、直前の状態を見てからの判断になりそうだ。

 そして守備陣は、最終ラインが右から酒井宏樹(マルセイユ)、吉田麻也(サウサンプトン)、昌子源(鹿島)、長友佑都(インテル)の並びで、GKは川島永嗣(メス)の出場が濃厚だろう。こうした中、やはり最大の注目点は今回落選した森重真人(FC東京)に代わる、吉田の新たなパートナーだろう。センターバックコンビがどこまで機能するかはチームの命運を大きく左右するポイントと言っていい。

「源はスピードもあるし、強さもあるし、コーチングもすごくいい。ただ、僕自身があんまり一緒にパートナーをやったことがないので、しっかり試合前から詰めなきゃいけないし、やりながら微調整してかなきゃいけない」と2018年ロシアW杯アジア予選全試合フル出場のディフェンスリーダー・吉田が強調するように、今回抜擢されると見られる昌子とはプレー経験が極めて少ない。

●昌子が感じる自信と重責。ついに挑む“本番”

 昌子の過去代表2試合を振り返ると、初キャップだった2015年3月のウズベキスタン戦(東京)は森重とコンビを組んで先発フル出場。2キャップ目の2016年6月のブルガリア戦(豊田)は吉田と交代出場する形だった。トレーニングでもサブ組に入るケースが大半を占めていたため、日本代表で本当の実戦に挑むのは大きなチャレンジに違いない。

「(ハリルホジッチ監督は)今回の2試合はゼロっていうのをかなり意識してるんじゃないかと。そういう中で森重くんを外してるんで、僕や槙野(智章=浦和)くんや弦太(三浦弦太=G大阪)に期待してる部分は大きいと思う。そこにしっかりと応えるようにやっていければいけないですね」と昌子自身も重責をひしひしと感じているようだ。

 それでも、傑出したコミュニケーション力と表現力、適応力を備える男だけに「誰と組んでもやれる」という自信は人一倍ある。

「鹿島でもそうですけど、いろんなタイプのセンターバックと組んで、初めての人でも自分なりに合わせたり、いい関係を築ける自信が結構あります。(吉田)麻也くんは僕よりはるかにレベルの高い選手なんで、あんまり不安ではないかなと。お互い理解し合えるところはあるんで、うまくやれればいい関係ができるんじゃないかと感じてます。それにサッカーはだいたいコーチングで解決できる。麻也くんもすごい(声を)出すし、僕自身も出すタイプなんで、自然とマークの受け渡しとかもばらつきなくできると思います」と昌子は楽観的に捉えている。

 彼の言うように、吉田と2人が絶えず声を出し続け、意思疎通を図っていけば、ラインコントロールの乱れやチャレンジ&カバーのミスも起こりにくくなる。むしろ人前での発信を苦手としていた森重よりも、吉田との良好な関係が構築できるかもしれない。

●若手センターバック台頭の必要性。昌子にかかる期待

 新たなコンビがうまくいけば日本サッカー界にとっても朗報だろう。吉田が「現状、若いセンターバックの頭数がホントに少ないんで、下の(世代の)選手が入ってこなきゃいけないなっていうのは個人的にはずっと思ってたこと」とズバリ指摘した通り、日本のセンターバック難は長年の問題だった。

 2010年南アフリカW杯16強入りの立役者だった中澤佑二(横浜FM)・田中マルクス闘莉王(京都)の鉄壁コンビをアルベルト・ザッケローニ監督が外し、吉田を軸に据えた後も、元々ボランチが本職の今野や森重が使われる形になっていた。

 2014年ブラジルW杯時点で今野が31歳、森重が26歳、吉田が25歳。後任のハビエル・アギーレ監督はもっと若いDFが必要だと考え、坂井達弥(大分)や塩谷司(広島)らを抜擢したものの、定着は叶わず。昌子や植田直通(鹿島)もその頃から代表に呼ばれ始めたが、出場機会がないままだった。ハリルホジッチ体制発足後も、吉田・森重という軸に槙野、丸山祐市(FC東京)、昌子、植田が絡んだが、若手の台頭は思うように進まなかった。

 しかしながら、W杯最終予選に突入してから攻撃陣の世代交代に火がついたことで、指揮官の考えも大きく変わってきた。今回、守備陣のテコ入れに踏み切ったのも、その自信と手ごたえがあったからだろう。確かに1年後のロシア本大会を考えたら、ベテランの域に入りつつある吉田や森重、槙野に全てを任せておくわけにはいかない。

 現時点で25歳の昌子、22歳の三浦、あるいは先のU-20W杯に出場した中山雄太(柏)や冨安健洋(福岡)らを育てる必要性を痛感したはずだ。

●「あのCL決勝並みのレアルともう一度戦ってみたい」

 昌子は昨秋、「サッカー選手の全盛期は25歳と言われるけど、センターバックに限っては30歳前後がピークなのかもしれない。麻也くんや森重くんが今、そういう時期を迎えていると思う。自分はまだまだ発展途上にある選手。彼らくらいの年齢で成熟したDFになっていたら理想的だと思う」としみじみ語っていたことがあった。

 が、昨年末のFIFAクラブW杯決勝のレアル・マドリー戦を経て「そんなに悠長に構えていたら世界トップに追いつけない」という危機感を抱いたのではないだろうか。

 実際、2017年に入ってからの成長スピードは凄まじいものがある。「あの大会は間違いなく自信にはなったけど、相手も本気じゃなかった。レアルのCL決勝と俺らとやった試合なんて全然違った。あのCL決勝並みのレアルともう一度戦ってみたい」と世界トップを体感したことが、急激な進化につながっているはずだ。

 今回のシリア戦で彼が「十分やれる」という感触を残せば、吉田の相棒の座を射止められる可能性は少なくない。同じ92年生まれのプラチナ世代の仲間である宇佐美貴史(アウグスブルク)や武藤嘉紀(マインツ)、柴崎岳(テネリフェ)でさえ破れなかった代表レギュラー獲得を一足飛びにつかめるかもしれないのだ。

 守備陣の若返りが進めば、日本代表の競争はこれまで以上に活発になっていく。大きな期待を背負う昌子の一挙手一投足、吉田とのコンビネーションをしっかりと見極めたいものだ。

(取材・文:元川悦子)

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