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【月刊『WiLL』(7月号)より】完全密着『八重山日報』本島に殴り込む!

2017/6/7(水) 9:00配信

WiLL

沖縄メディアに風穴を開ける

 もう20年近く前になるが、私は旅行会社で働いており、中学や高校の修学旅行の添乗先として、しばしば沖縄を訪れた。このとき、ガマと呼ばれる洞窟の中で、平和ガイドと称する「市民」が旧日本軍の“蛮行”を、自分がその場にいたかのように語るのが定番だった。
 だが、それだけでは終わらない。夕食後のホテルにも「語り部」と称する老人がやってくるのだ。彼らもまた「今次大戦では沖縄だけ地上戦が行なわれ、それで本土は助かった」、「日本軍は沖縄県民を虐殺した」などという話を繰り返す。
 そしてホテルのロビーには『沖縄タイムス』と『琉球新報』。当時は単なる添乗員だったが、その書きぶりに強い違和感を持った記憶がある。
 その後、私は大手週刊誌の記者となり、中国関連問題を中心に取材するようになってからは、ますます沖縄県紙に対する不信感が増した。
 強調しておくが、私の不信感は彼らの「イデオロギー」に対してではなく、両紙の報道における「ファクトの欠如」に向けられている。権力の監視を叫ぶのは構わないが、その報道に「客観性」は備わっているのか。
 石垣市長の中山義隆は、両紙が報道記事としての「両論併記」の基本さえ守らないと怒りを露わにした。
「権力の監視がメディアの重要な役割だというのは、まったくその通りです。しかし、沖縄のマスメディアは片一方の意見だけを取り上げるばかりか、社説以外の一般記事にも『彼らの主観』を織り交ぜるのです。
『両論併記』をきちんと実践しているのは、はっきり言って、『八重山日報』だけでしょう」
 そう言って、市長は机の上の『八重山毎日新聞』(コラム『不連続線』平成29年4月21日付)を見せた。

〈市民運動会は10月1日開催が決まったが自衛隊受け入れ表明で市民を大きく分断・対立させながらの開催に、あらためて中山市長は無神経で独り善がりの政治家だと感じる(中略)自衛隊は残虐な戦争に直結する軍隊だ。その軍隊の受け入れを決める重大事に、良識ある人々が市民運動会に興じてていいものか▼もし自衛隊配備で石垣が戦争に巻き込まれた時あるいは自衛隊絡みの重大な事件事故が起きた時、「そういう大事な時期にみんな能天気にも運動会で遊んでいたのか」と後世に批判されかねない〉(原文ママ)

「運動会と自衛隊配備はまったく関係がないのに(石垣の地元紙のひとつ)『八重山毎日新聞』はこういった書き方をする。そして『沖縄タイムス』、『琉球新報』の県紙二紙も前回の県知事選挙と同様に辺野古に関しても会社ぐるみで世論を作ろうとしているように感じます。
 実際、若い記者が『見たままを書いても原稿が通らないんです』とぼやいていますからね。だから、『八重山日報』の本島進出が沖縄のメディアに風穴を開けてくれることを期待しています」

 石垣島の中心部から車で約5分、住宅地のはずれに『八重山日報』の本社はあった。2階建て社屋の手前には青々とした草が目立つ空き地が広がり、放し飼いされたヤギが草を食む。なんとも長閑な風景に心が安らぐ。
 しかし、1階の印刷工場を抜け、2階の編集部に上がると、長閑とは正反対の厳しい表情を浮かべた前盛朝一さん(取締役)が待っていた。
『八重山日報』は今年で創刊40周年。節目の年に本島への躍進を遂げ、晴れがましい気持ちではないか。
「とんでもない! 今回の本島進出には社運がかかっています。もともとは『今年の4月1日までに5000部の購読予約が取れたら始めよう』と話していたのですが、まだ2000部のうちに4月になってしまいました。まさに見切り発車で、今後の伸び率で“生死”が決まるといっても過言ではありません」
 そう、『八重山日報』は、石垣島からあふれ出るように上洛したのではなかった。現在の発行部数は「6000部」、ライバル紙『八重山毎日新聞』は「1万6000部」(ともに公称)なので、石垣島でも負け越しており、とある大手調査会社のデータを見ても、『八重山毎日新聞』の売上高・従業員数が6億2000万円・35名(平成27年)に対し、『八重山日報』は1億2000万円・20名と後塵を拝している。
 そんな状況で、『八重山日報』はいかにして中立的な報道を堅持してきたのか。石垣の政財界に通じる名士が匿名を条件に話を聞かせてくれた。
「中立性を感じたのは、八重山教科書採択問題のとき。きちんとした行政手続を経て育鵬社の歴史教科書に決まったにもかかわらず、当時の教育長・玉津博克さんのことを、県紙二紙や『八重山毎日新聞』は悪魔の如く罵った。あれこそまさに『感情的になったペンの暴力』だったと思う。
 そのとき『八重山日報』は、反対勢力がルールを曲げて育鵬社の教科書を排除しようとしている事実を報じた。沖縄メディアの多くが反体制だけを目的にする中、あくまでファクトにこだわったんだ」
 石垣で取材中に出会った理髪店を営む男性(59歳)も、『八重山日報』の愛読者だと言う。
「読み比べたらわかるけど、沖縄で偏っていない新聞は『八重山日報』だけさ。ただ、ページ数が少ないから、ちょっと物足りないんだよな。それが弱点だと思う。自分の好きなスポーツ欄が小さいのが残念。だけど本島に進出したのなら、沖縄を変えるよう頑張ってほしい」
 かなり方言がきつく、若い島民に“通訳”してもらったが、言いたいことは理解できた。
 現在、『八重山日報』は八ページの紙面構成。本島進出となれば、ページ数も企業としてのサイズも、その倍以上の規模を誇る二紙と戦うことになる。『琉球新報』は売上高97億4000万円・従業員225名。『沖縄タイムス』は同91億円・240名(いずれも平成27年)。
 いったい、どんな戦略を持っているのか。

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最終更新:2017/6/7(水) 9:00
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