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【月刊『WiLL』(7月号)より】完全密着『八重山日報』本島に殴り込む!

2017/6/7(水) 9:00配信

WiLL

正反対の二人

 配達の現場を取材するため一緒に本島北部に向かい、配達員と合流することにした。落ち合う場所は宮里藍の出身地として知られる北部の東村。村までは、高速道路を飛ばしても2時間近くかかる。
「購読申込みがすごい勢いになったのは4月に入ってから。それが沖縄人らしいなぁ、と思ったさぁ」
 車中で仁さんがこぼす。そういえば、石垣で会った取締役の前盛さんも「購読予約数が足りないまま本島版をスタートした」と語っていた。
「沖縄人はのんびりしてるし、予約するのが嫌いなの。だから新聞も出たら申し込めばいいさぁと呑気に過ごしてたんでしょう。『本島版がもう出ている』って気づいてから慌てて申し込むんだね。6月まで待ってもらっている人が何百といますよ」
 そういう仁さん自身は、どんな経緯で『八重山日報』に関わることになったのだろうか。
「9年前までは建設会社にいてね。勤務先の社長に言われて、なかば無理やり議員秘書にされたのさ。
 それで島尻安伊子事務所で働いていたんだけど、昨年7月の参院選で落選しちゃってねえ。どうしようかと思っていたとき、『八重山日報』の本島進出の話が出て。それで手伝ってくれということになったのさぁ」
 仕える国会議員が落選したのは不運だったが、『八重山日報』にとっては天の配剤だったかもしれない。
「オフィスの交渉をして、知人から使わない事務机や椅子を貰ってきたのも、僕。支局の電源やLANケーブルを天井から吊っているでしょ。あれは人が増えてもすぐに対応できる選挙事務所のノウハウ。床を這わせたのでは、そうはいかないからね」
 照れくさそうに笑う仁さんは、本島支局の“選対本部長”なのである。
「記者や営業も増やして、すぐ隣に空いている百坪の事務所に移るのが目標さ。本島版を出したからには、タイムスや新報を向こうに回して勝負できるようにならないとね」
 大胆な目標だと思ったが、その目は笑っていなかった。
「この勢いで多くの人が支持してくれれば、夢じゃないさぁ。県紙2紙の報道では、ギャーギャー喚いて主張する人ばかりが目立つけれど、同調しない人もたくさんいる。実はその人たちこそがサイレント・マジョリティなんじゃないか。そういう人たちの受け皿になるべく真実を書いていけば幅広い人達に支持してもらえるのではと思っているんですよ」
 そんな話をしているうちにクルマは東村に着き、配達員の大城司さんと合流した。もう配達も終盤だ。
 未明に那覇で刷り上がった新聞は、『八重山日報』の社員が交代でクルマを飛ばし、毎朝5時頃に名護市在住の大城さんの自宅に届ける。大城さんは、それを北部一帯に配達する。助手席には毎朝、奥さんが一緒だ。
「1日60~70軒くらい配っています。どんどん増えるみたいだけどね。毎日200キロくらいあるのかなぁ。配る家と家の間隔がいちばん長いところでは、ガラガラの道でも40分くらいかかるね。でも、コレと一緒だから退屈しなくていいんだ」
 赤瓦の純沖縄風民家に新聞を投函しながら、恥ずかしそうに奥さんを指さす笑顔は、なかなか素敵だった。
 直接、読者に会うことは少ないというが、購読者の中には郵便受けに「配達ご苦労様です。一緒に沖縄を変えましょう」というステッカーを貼ったり、「八重山日報専用」と書き記す人もいるという。
 配達の同行取材が終わって那覇へ戻る途上、突然、仁さんが支局へ電話をかけた。
「あ、編集長? お昼食べた? ああよかった。僕の机の上にお弁当があるんだけど、よかったら食べて。外でお昼食べることにしたからさぁ。そう、その黄色い包み」
 今度は、笑いながら私にいう。
「僕はもうすぐ結婚する予定の彼女と一緒に住んでいて、いつも彼女がお弁当を作ってくれる。
 編集長に愛情弁当をおすそ分けしてあげられて良かったさぁ。彼のそういう話は聞かないけど……どうなっているのかねぇ」
 改めてプロフィールを確認すると、仲新城編集長と仁さんとは生まれ年が同じだ。それを指摘すると、意外な事実が明らかになった。
「そう、お互い昭和48年生まれなのは知っていたんだけどね。年齢だけじゃなくて、なんとまったく同じ日の生まれだったのさぁ」
 編集長として紙面の陣頭指揮を執るオピニオン・リーダーと、事務方を一手に取りまとめる仁さん。本島支局の命運を握る二人が、まったく同じ日の生まれ──。
 単なる偶然と言ってしまえばそれまでだが、私には何らかの意味があるように思えてならなかった。
 ふたりはタイプがまるで違う。仲新城編集長は仕事に注力するあまり、服装やモノなどに頓着しない。取材用ノートが花柄の表紙だと指摘されると、ボソリと「百均の」と答えるような人だ。一方、仁さんは毎日必ずメガネとカバン、腕時計を取り換えるシャレ男。正反対な二人の“化学反応”への期待が湧いてくる。
 仁さんとタコライスの昼食を済ませて本島支局に戻ると、愛情弁当は、きれいにカラになっていた。

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最終更新:2017/6/7(水) 9:00
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