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【識者の眼】日本代表、シリア戦で“デュエル・キング”を探し出せ! 切り札になりうる新参者たち

6/7(水) 11:58配信

フットボールチャンネル

 日本代表は7日、国際親善試合でシリア代表とタイ戦する。これは来週13日に行われるロシアW杯アジア最終予選、アウェイでのイラク戦に向けた重要なシミュレーションだ。これまでにない過酷な環境で、屈強な相手とぶつかり合うにはハリルホジッチ監督が強調し続けてきた“デュエル”の強さが不可欠。それは今回招集メンバー入りしたニューカマーたちに求められる能力でもある。(取材・文:河治良幸)

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●シリア戦は過酷なアウェイ戦のシミュレーション

「シリアはイラクに似ている。Aグループからプレーオフに回る可能性があり、フィジカルとアグレッシブさを兼ね備えた相手だ。守備の“デュエル”がものすごく強く、3失点しかしていない」

 ヴァイッド・ハリルホジッチ監督はシリアについてこう評価し、W杯アジア最終予選のイラク戦に向け、格好のテストであることを強調した。通常より厳しいピッチコンディションで、イラクという屈強な相手と対戦する前に、ホームではあるが同じく最終予選を戦うタフなチームを対戦相手にできることは確かなメリットだ。

「パス中心の組み立てができなくなる。空中戦、ロングボールが多くなる。そこで勝つ、セカンドボールを奪う想定。ボールをしっかり奪う。そこから、できるだけ背後に。相手の短所をしっかり突く、ただ長所もあるので、消しにいく。その準備のための選手を選んだ」

 そう語るハリルホジッチ監督。シリア戦に勝利するだけなら、ホームアドバンテージを生かしてある程度、ポゼッションを意識した戦い方を選択するプランもあるが、“本番”のテストマッチである以上、アウェイの困難な状況を想定した戦い方を取り入れることが重要になる。

 DF三浦弦太、DF宇賀神友弥、MF加藤恒平が初選出、昨年11月に招集経験のあるMF井手口陽介もまだ出場キャップはないが「常に向上しており、もの凄く伸びしろがある」(ハリルホジッチ監督)という評価を受けて選ばれている。

 さらに今回はMFでの選出となった遠藤航にも共通するのが守備における“デュエル”の強さだ。シリア戦では練習から3月のUAE戦と同じ[4-3-3]の採用が予想される。特に今野がケガ明けの中盤のチョイスが気になるところだが、“デュエル”はシリア戦、さらにはイラク戦をにらんだ選手起用の主な基準になるだろう。

●三浦と宇賀神、それぞれの“デュエル”の魅力

「自分が武器としている対人やフィードはガンバでも出せている」と語るのはセンターバック候補の三浦だ。清水エスパルスから移籍1年目でガンバ大阪のレギュラーを掴んだ三浦は機動力が高く、空中戦と地上戦の両方でコンタクトプレーに強さを発揮する。ACLは無念のグループリーグ敗退に終わったが、局面における三浦の強さはアジアの相手に対しても際立っており、“デュエル”ではライバルの昌子源や槙野智章に勝るとも劣らない。

 ポジション的にいきなり先発起用される可能性は低いが、吉田麻也を除くセンターバックの候補はみな国内組であり、同じタイミングでの合流。テストマッチでいきなりチャンスを得ることができれば、一気に吉田のパートナー候補に躍り出るかもしれない。それだけのポテンシャルは秘めている。

 ハリルホジッチ監督もシリア戦の前日記者会見で「三浦は学ぶためにも呼んでいます。ただ、1年後、2年後にどうなっているでしょうか。素晴らしい能力を持っているし、素晴らしいセンターバックになるでしょう」と、即起用に慎重な姿勢こそ見せながら、潜在能力を高く評価している。

 28歳で初選出となった宇賀神は「年齢的にはラストチャンスだと思う」と語り、特に「対人だったり、ゲーム形式になった時にはガンガンいきたい」と意気込む。浦和レッズとは違う4バックのサイドバックでの起用になるが「守備から攻撃的なこともできるんだぞというところは評価してもらえているのかなと思います」と語るように、高い位置でボールを奪い、タイミングよく攻め上がる姿勢を変える必要はない。

 周囲との連携やクロスの質など、このポジションに問われる要素は多いが、第一に示すべきはサイドの局面における“デュエル”の強さであり、ACLで中国や韓国、オーストラリアの強豪を相手にも怯まずに戦えた自信を代表戦でも見せることができれば、これまで国内組が定着できなかった左サイドバックというポジションに新たな推進力を加えることができるはずだ。

●井手口や加藤にもチャンス。中盤の競争は熾烈に

 [4-3-3]の中盤はこれまでの経験から順当なら山口蛍、今野泰幸、香川真司の3人がレギュラー、さらにUAE戦において香川との交代で出場した倉田秋が途中起用のファーストオプションになる。しかし、今野に関してはケガ明けであることも考慮しておそらくシリア戦はそれほど無理させないはずで、インサイドハーフのポジションでは井手口や加藤といった選手にもチャンスはありそうだ。

 中盤での高いボール奪取能力と攻め上がりがハリルホジッチ監督に評価されている井手口。前回招集された際に「本当にレベルの差を感じたし、悔しい思いもした。プレースピードや判断スピード、全部が違った」と日本代表の壁を実感しており、当時チャンスをもらえなかったことに関しては納得している様子だが、そこから半年経って成長した姿を見せられるかどうかが問われる。

 大先輩の今野については「(UAE戦で)本当に守備も攻撃も際立って目立っていたし、(自分と)同じポジションであそこまで目立つのはすごい」と語るが、見習う部分が多いことを自覚しつつも「競っていかなければいけない」と競争心はのぞかせている。ただ、本人も“いつも通りの平常心”を強調するように、チャンスにも舞い上がることなくプレーできれば、そのまま持ち味を発揮することができるだろう。

 初選出ながら、5月28日にスタートした欧州組合宿の初日から帯同した加藤にはこの期間に欧州組の猛者たちとのフィジカルトレーニングやミニゲームを通じて感覚を引き上げてきた強みがある。攻撃面に課題を感じながらも「守備のところは全然やれる感覚があります」という加藤は同じポジションのライバルについて「みんな守備のところですごく特徴がある選手で、タイプ的には似ている」と語る。

 おそらく起用が想定されるのは井手口と同じくインサイドハーフだ。まずは中盤でボールを奪うこと。そしてボールを奪ったところから何ができるかが見所となる。とはいえ「すぐにプレーさせるかどうかは分かりません。今じゃないかもしれないですね。W杯へパフォーマンス上げて行かなければいけない。まだA代表でそこまで経験のない選手をいきなり出すのは難しいかもしれない」と、指揮官は加藤の試合での起用には消極的。まだチームのレベルに慣れる段階かもしれない。

●攻撃面の“デュエル”で違いを生む乾の力

 中盤で選出された遠藤は[4-3-3]のインサイドハーフも選択肢になるが、基本的にはリオ五輪代表時代のメインポジションだったアンカーで山口に挑む立場になりそうだ。この位置での高いボール奪取力に加え、カウンターのリスク管理や空中戦といった多様なシチュエーションでの守備能力を発揮すれば代表の中盤に新たなオプションを加えることができる。攻撃面も細かいパス回しよりダイナミックな展開が鍵を握るため、出場すればうってつけのアピールチャンスだ。

 彼らとは違った意味で“デュエル”を期待される選手が2年2ヶ月ぶりの招集となったMF乾貴士だ。スペイン1部のエイバルで確かな存在感を示した乾は左サイドで守備のハードワークも目立ったが、やはり特徴はボールを持った時の勝負強さだ。「攻撃の部分の特徴も出していけた」とシーズンを振り返る乾はボールを失うことなく起点になるプレーをベースに、高い位置でチャンスに絡むことを強く意識している。

「緊張感を持ち過ぎると空回りしちゃうので、いつも通り平常心でやっていきたいですけど、その中で結果がついてくれば一番ですね」

 そう語る乾は合流当初から右足首に痛みを抱えていたものの、欧州組合宿中の電気治療などで症状は確実に良くなっており、チャンスがあれば出場する準備はできている。ハリルホジッチ監督はシリア線前日記者会見で「ようやくパフォーマンス上がってきた。フィジカル的にかなり準備ができている」と回復を強調した。

「試合に入ったとしても5分でケガになるかもしれない」と、まだリスクを完全に取り払えたわけではないようだが、スタメンではなかったとしても、乾にはジョーカーとして途中から攻撃に違いを生み出す役割も期待される。タフなゲーム展開になるほど彼の攻撃における1対1の勝負強さが大きな武器になる可能性は高い。左サイドで原口元気に挑む構図になり、ハリルホジッチ監督が「宇佐美との競争」だと語った通りライバルは多く、今後に向けて少しでもアピールしておきたいところだ。

 チームには色々な要素があるが、新しく選ばれた選手やこれまで十分なチャンスを得られていない選手がここからポジションや役割を勝ち取っていくための重要なポイントが“デュエル”であることは間違いない。シリア戦において、そこで大きくアピールする選手が出てくれば、それは過酷な環境での戦いが想定されるイラク戦での確かな力となるはずだ。

(取材・文:河治良幸)

フットボールチャンネル編集部

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