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毒針もつサンゴ食べる魚の謎を解明、ヌルヌルの唇で「キス」

6/7(水) 12:45配信

ナショナル ジオグラフィック日本版

手強い餌サンゴの新たな攻略法、クロベラの仲間、オーストラリアの研究

 自撮り写真を撮る際に、唇を突き出した表情を作る人はよくいるが、熱帯魚の中には、生存戦略として唇を突き出しているものがいる。

【動画】サンゴを食べるクロベラの一種

 6月5日付けの科学誌「Current Biology」に発表された論文によると、インド洋や西太平洋にすむクロベラ属の一種(Labropsis australis)は、粘液でヌルヌルとさせた唇を武器に、毒針を持つサンゴを食べているという。

 サンゴは一見、やわらかくて害がなさそうに見えるかもしれないが、餌にするには手強い相手だ。サンゴの骨格は先端が鋭く尖っており、その上に被さる本体は、無数の毒針と粘液で覆われている。こうした理由から、論文によるとサンゴ礁に生息する約6000種の魚のうち、サンゴを食べる種は128種しか報告されていない。およそ98パーセントの魚がサンゴを食べるのを避けていることになる。

 ただし、このクロベラの一種は例外だ。彼らの唇は「きわめて肉厚で前に突き出ており、口を閉じているときには筒状になっています」。論文の共著者である、オーストラリア、ジェームズクック大学のデビッド・ベルウッド氏はそう述べている。

「拡大して精査したところ、クロベラの唇には、まるでキノコのかさの裏側のように、たくさんのひだがあることがわかりました。ただし違いは、表面が粘液で覆われている点です」

「チュッ」という音も

 ベルウッド氏と同僚のビクトル・ウエルタス氏は、クロベラと、サンゴを食べないベラの両方の口と唇について、走査型電子顕微鏡による観察を行った。

 どちらの魚も歯と顎の骨は似ていた一方で、唇は大きく異なっていた。クロベラの唇には中央から外へ向かって伸びる薄い膜組織が大量に見られたが、もう一方の種の唇は薄くてツルリとしており、膜組織は存在しなかった。

 次にクロベラの唇をごく薄く切り取って内部構造を調べたところ、そこには粘膜を分泌する細胞が詰まっていた。

 さらにベルウッド氏らは、サンゴを食べている最中のクロベラを高速カメラで撮影した画像の分析を行った。クロベラはサンゴにほんの一瞬唇を付けて、力強く吸引する。その動作はまるで「キス」のようで、実際に「チュッ」という音が聞こえる場合も多い。

 彼らはサンゴを適当につついているというよりは、ごく狭い範囲のサンゴを口でしっかりとふさいでおり、これはおそらくサンゴの粘液と肉を効率的に吸い取るためだと思われる。

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