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【月刊『WiLL』(7月号)より】独占手記 我が「冤罪」169日勾留記

2017/6/7(水) 9:00配信

WiLL

検事の誘惑

 私は4月14日に逮捕され、その日のうちに東京拘置所に身柄を移されました。ここへ来てから3週間ほどは、午前、午後、夕食後の取り調べが続きました。逮捕される少し前から、主任検事からヒラの検事に代わり、怒鳴られることはなくなりました。それに、東京拘置所の取り調べはビデオ撮影されるので、よけいていねいになりました。ヒラの検事は、「罪を認めたほうが効率的ですよ」と誘いかけてきましたが、私は、「いや、認めない」と拒否し続けました。私は逮捕後、一切の調書に判を押していません。これは弁護士の指示でした。
 取り調べがある日は、東京地検の検事が東京拘置所にやってきて、取り調べを受けます。朝9時か10時ぐらいから正午ぐらいまでやり、午後は1時か2時から4時まで。夕食後しばらく休んで、午後6時から10時ぐらいまで続いたこともありました。
 就寝は午後9時ですが、就寝時間に関係なく取り調べは続きました。その後、消灯している中を舎房に帰るのです。
 消灯といっても、警備上の理由で、真っ暗になるわけではありません。舎房の天井には長い蛍光灯が二灯ついているのが、一灯が消されるだけで、本だって読める明るさでした。
 6月27日に公判が始まると、出廷する日は、手錠をかけられたうえに腰ひも付きで移動します。被告が20人ほどバスに乗せられて、東京地裁へ。私は最初に乗せられて、車内のカーテンを閉められ、ほかの被疑者からわからないように“隔離”されていました。バスの中では大通りに出るとほかの人たちはカーテンを開けて外を眺めることが出来ますが私だけはカーテンを開けることは禁止でした。「あなたが乗っているのでカーテンを開けられない」という看守の返答でした。
 取り調べや裁判がない日は、基本的に自由です。未決拘禁者は受刑者ではないので、作業や労働はありません。といっても、何をしてもいいわけではなく、舎房の中では寝ていい時間も決まっています。午前中は横になることは出来ず、午後は昼食後から午後の運動の時間までは毛布を使って昼寝をしてもいいことになっていました。それでも、布団を敷くことは許されませんでした。座るのも自由ではなく、ペラペラの座布団では体が痛くなるので毛布を折って敷いていたら、看守から「座布団だけを使うように」と注意されたこともありました。
 午前9時45分から10時までと、午後2時45分から3時までの15分ずつは、体操の時間がありました。体操の音楽が室内のスピーカーから流れてきて、「足上げて」「はいつくばって」「うつぶせになって」などと指示が入ります。
 私はそのとおりには、まったくやりませんでした。体操といっても、自由に体を動かしてもいいし、運動をしないという自由もあります。
 私は、体操の時間には自分で考えた運動をやっていましたが、足踏みやジャンプをすると、看守から「ちょっと静かにやってください」などと注意をされるので、座布団の上でジャンプして音を立てないように工夫したものでした。
 室内での運動のほかに、収容棟の12階にある屋上で、30分間の運動時間が週に4回ありました。屋上といっても、金網で二重に覆われた「2メートル×5メートル」の箱のような広さです。青空を見られる貴重な短い時間でしたが、東京の街なみは見えませんでした。
 私は運動不足になりたくないこともあって、運動場には欠かさず行きました。そこでは、何をやってもいいと言われていたので、腕立て伏せや腹筋・背筋運動、柔軟体操などをやっていました。この屋上での運動は、雨天の日は中止。
 屋上への上り下りの際、収容者は30メートルほど間隔をあけて、ひとりずつ移動するので、勾留者はお互いに顔を合わせることはありませんでした。
 舎房にはテレビがない代わりに、本や雑誌は読めますし、ラジオ番組を室内のスピーカーから流しています。ただし、朝七時のニュースを正午から流すなど、内容をチェックしていたようです。
 私が東京拘置所にいたのは、夏をはさんでとても暑い時期でした。とくに去年は、例年にも増して暑かった。収容棟と舎房はエアコンが一応効いていましたが、温度は28度か29度の高めに設定されていて、とくにご飯を食べたあとは汗が吹き出すほど。そんな時は、フェイスタオルを水で濡らして、体を拭いたものです。
 暑かったので、風呂はありがたく感じました。週に2回入れましたが、7月から9月までの3カ月間は、入浴は週3日に増えました。浴室は、1人用のユニットバス式の浴室が4カ所各フロアにあり、1人ずつ入浴します。浴室は、私の自宅よりもきれいでした。
 風呂といっても、入浴時間はわずか15分。浴室に入って、服を脱いで入浴し、服を着て出るまでを15分で済ませなければなりません。その間に、体を洗い、必要なら洗髪をする。ヒゲを剃りたいときは、看守からヒゲソリ用のカミソリを借りて、浴室内で使用し、入浴後にカミソリは返します。だから、湯船にのんびりと浸っているような時間はまったくありません。
 夏場には、風呂以外にシャワーも2週間に1回ほど認められていましたが、浴びる時間は4分間だけ。シャワーでは、お湯で体の汗を流すだけで、なぜか石けんやシャンプーの使用は認められませんでした。
 入浴の時は、下着を換えることができましたし、日曜以外は毎日交換してくれました。下着は前出の官品です。
 拘置所に入所した当初、「D棟11階1号室」と名札のついたネットに洗濯物を入れておくと、月・火・水・金の週4日、朝食後に、係の受刑者が受け取って洗濯をしてくれます。火曜は、色が移らないようにと、白ものの洗濯日にきまっていました。私は白い洗濯物を毎回出していましたが、色が移って戻ってきたことは一度もありませんでした。
 洗濯物は、出した日の午後には、きれいになって乾かされ、たたんで返してくれました。パンツは使いまわしにされていたようなので、のちに友人から差し入れてもらい、パンツのストックは10枚以上できました。

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最終更新:2017/6/7(水) 9:00
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