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小栗旬“話したくても話せない”過去とは? 『CRISIS』金子ノブアキ脱柵の理由を読む

6/7(水) 16:10配信

リアルサウンド

 「話せないことだってある」。6月6日に放送された『CRISIS 公安機動捜査隊特捜班』(カンテレ・フジテレビ系)の第9話。鍛治(長塚京三)から稲見(小栗旬)が、自衛隊時代の同期で、当時仲の良かった結城雅(金子ノブアキ)が二週間前に突然姿を消し、捜査対象になっていると聞かされることから物語は始まる。今回の事件をきっかけに、これまでベールに包まれてきた稲見の過去が徐々に明かされていくのだった。

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 稲見が行きつけの「BAR 40886」に向かっている途中、結城が突然姿を現す。(余談だが、“40886”という数字はアル・カポネの囚人番号。アル・カポネの名言の中には「金持ちはますます金持ちになる」という言葉がある。これは「持てる者はさらに与えられてますます豊かになる」という『CRISIS』第5話で登場したセリフを彷彿とさせる。)久々の再会を喜び、互いの近況を語り合うふたり。だが、結城は以前の彼とは違う。“歪んだ理想主義者”に変わってしまっていた。

 稲見がいくら問いただしても自衛隊を脱柵した理由を決して明かさない結城。憎しみや悲しみ、絶望など様々な負の感情ををたたえた眼差しで、稲見を見ながら「俺は歪みきった世界を正すつもりだ。引き起こした混乱の責任も負わず、当然、罰を受けるべき人間がのうのうと生きていけるシステムを壊すつもりだ」と淡々と口にする。そして、「お前もそれを手伝え。俺とお前の力で、世界をよりよい場所へと変えよう。俺たちにはそれができる」と稲見に協力を促すのだった。

 なぜ、“歪みきった世界を正すつもり”になったのか、“引き起こした混乱の責任を負わない者”“罰を受けるべき人間”とは一体誰を指すのか、具体的には何も語ろうとしない結城。彼を変えたきっかけは、第9話の冒頭シーン“2016年6月15日午後3時01分。”の事件が関係していることに違いないだろう。がれきの山の中にいくつもの死体が転がっているまさに地獄絵図のような現場。その中に自衛隊が突入していき、ライトを照らしながらゆっくりと奥に歩みを進めていく。最後に左手薬指に赤い宝石の指輪をつけた女性の遺体の前で、ひとりの自衛官が立ち止まった。その自衛官は彼女を見た瞬間からどんどんと呼吸が荒くなっていく。

 その呼吸を乱す自衛官が結城であり、腕を真っ赤に染めた指輪の女性の遺体が彼の婚約者もしくは妻だったのではないだろうか。結城と彼の恋人らしき女性が幸せいっぱいの笑顔を浮かべて写っているツーショット写真が、次回予告に映し出されていた。その写真の女性は、全く同じ指輪を左手薬指にはめていたのだ。ふと結城が稲見に「結婚したとか子供が生まれたとかそんな話はないのか?」と言ったセリフが頭をよぎる。結城は、結婚もしくは婚約しており、なおかつ相手のお腹には子どもが宿っていたのではないだろうか、と深読みしてしまう。

 なぜなら、指輪についていた赤い宝石はおそらくガーネットだからだ。ガーネットは、“信頼と愛の石”と言う伝承があり、ヒーリング効果としては“信頼と愛”などのほかに“出産”がある。そのため、国家が関わる何らかの事件のせいで、(未来の)奥さんと子ども両方を一気に失くしてしまったのではないだろうか。そして、自衛隊、つまり結城はその“国家を守る”ためにあの現場に派遣され、“権力者の尻拭い”をさせられたのではと推測してしまう。

 ただ、あくまで推測に過ぎない。結城はじめ、彼の事情を知っているであろう鍛治もまた「話せないことだってある。上にいけばいくほどろくでもない秘密を聞かされて、ほとんどは墓場まで持っていかにゃならん。成仏できるか自信がないよ」と口を閉ざしているのだから。また、結城だけではなく、特捜班のメンバーの過去もあまり明かされていない。稲見の過去について田丸は「話したくても話せないことなのかもしれない」と言っており、まだまだ謎は多い。その分、視聴者も色々な事柄を深読みし、どれが伏線なのかを探し出し、自分なりに考え、自由に推測できるからこそ、このドラマはやっぱり面白い。

 今回の事件は第10話に続いていく。第10話では、稲見の過去にもさらに踏み込んでいくことになるのだろう。稲見にとっての“通過儀礼”になるという結城。稲見に結城を“地の果てまでも”追わせることで、青沼(飯田基祐)が心配していた「藪をつついて蛇を出す(つつかなくてもよい藪をつつき、恐ろしい蛇を出すことから、余計なことをして、思いもしない悪い結果を招く)」ことにならないといいが。同時に、“植木(稲見)に水をやりすぎて、根を腐らせてしまう”結果を招かないことを祈るばかりだ。

 結城が言っていた「そもそも俺たちのいる世界では、何が問題なのか定義することすら容易じゃない」、という言葉。何が間違いで、何が正しくて、何が悪で、何が正義なのかという、『CRISIS』の中で常に問われてきたものを象徴していたように思う。次週でついに最終回を迎えるが、特捜班の活躍により、少しでもこの国を“風通しがいい、澄んだ世界”に変えることはできるのだろうか。そして、本当の意味で特捜班が事件を“解決”してくれることを期待したい。

戸塚安友奈

最終更新:6/7(水) 18:40
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