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鹿児島のタイ人Jリーガーは今どうしているのか? 一瞬の目力に見えた18歳の反骨心

6/7(水) 12:00配信

SOCCER DIGEST Web

勝負飯は自炊のタイ飯? ではなく「バナナです(笑)」

 九州は鹿児島の地で苦闘を続けるタイ人がいる。シティチョーク・パソ。ヤーという愛称を持つ18歳だ。
 
 育成に定評のあるチョンブリーFCのアカデミー育ち。世代別代表にも名を連ねてきたタイ屈指の逸材のひとりである彼は、昨年12月に行なわれた日本プロサッカー選手会(JPFA)主催のトライアウトに参加。J3鹿児島ユナイテッドFCの目に止まり、初のタイ人Jリーガーとなった。
 
 鹿児島に来て4か月が過ぎたヤーはどうしているのか。鹿児島のホームゲーム鳥取戦へ足を運んだ。
 
 試合開始前に配られたスターティングシートにヤーの名前はなかった。ここ数試合、メンバー外が続いていることは周知、ある程度は予想できたことではあるのだが……。
 
 最後にリストインしたのは、5月6日に初の先発出場を飾ったセレッソ大阪U-23戦まで遡る。そんな状況下、どのような感情を抱いているのか、スタジアムに来ていた本人に話を聞かせてもらった。
 
――チームに合流して4か月が過ぎました。現在の率直な感想を聞かせてください。
 
「いつもチームメイトが助けてくれていて、サッカーをしている時に困ることはありません。でも、部屋にひとりでいるとタイを思い出して淋しくなることはありますが」
 
――練習以外の時間は何をしていることが多いのですか?
 
「チームメイトと食事に行ったり、食材を買って部屋で自炊することもあります。後は日本語を勉強したり、タイに居る家族や友人たちとLINE電話で話したりですね」
 
――なるほど。では試合前やパワーをつけたい時に食べている“勝負飯”は自炊のタイ飯ですね?
 
「いや、バナナです(笑)」
 
――家族や友人と連絡を取っているそうですが、タイ人の友人選手からJリーグについて聞かれることもあるのでは?
 
「はい、彼らは『日本の生活に馴染めてるの?』『練習ってどんなことをやるの?』『言葉はどうしているの?』とか聞いてきます。日本でプレーすることに興味はあるんだと思います』
 
――今日(6月4日)、チームは劇的な展開で5試合ぶりの勝利を上げた中、あなたはメンバー外という厳しい現状下にいます。どうしてそうなのか、自己分析はできていますか?
 
「はい」
 
 最後の質問への“一言だけの回答”と、一瞬見せた“目力”に彼の反骨心を感じ取り、インタビューを終わらせた。
 
 複数のチーム関係者との立ち話で、筆者がヤーを取材しに来たことを告げると、「技術は申し分ない。あとは気持ちがそれに伴えば」と皆一様に話す。年齢など関係なく、彼は“助っ人選手”として期待されているのだ。
 
 U-23タイ代表に招集された彼は、取材した翌日早朝に鹿児島を出発した。1月に家を飛び出して以来の帰国。理由はどうあれ、18歳の青年には嬉しい里帰りだろう。
 
 慣れ親しんだタイの湿気と家族の愛情で心を潤わせ、鹿児島へ戻ってきてほしい。そして彼のあの“目力”に賭けてみたいとも思えた。
 
取材・文:佐々木裕介

最終更新:6/7(水) 12:00
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