ここから本文です

痴漢冤罪事件に巻き込まれるとどうなるか? 経験者曰く「駅員室に入るとほとんど終了!?」

6/7(水) 16:00配信

HARBOR BUSINESS Online

 今年に入って首都圏では痴漢の疑いを掛けられて逃亡を図り、ホームから線路に飛び降りる暴挙に出るケースが続出している。電車のダイヤが大幅に乱れるだけでなく、5月12日には逃げた本人が電車にはねられて死亡するという惨事も起きている。

 死んでしまうことに比べたら、痴漢容疑で捕まることくらいどうってことない気もするが、実際に痴漢の疑いを掛けられた場合、その恐怖は想像以上だ。

 痴漢の容疑を掛けられた場合、どんな目に遭うかについて、リアルな“刑事手続き”を知らない読者がほとんどだろう。

 痴漢の疑いを掛けられ、写真撮影や指紋採取までされたことがある筆者が、今回、被害者に手首を掴まれた後、具体的にどんな手順で刑事手続きが進むのか紹介する。これは筆者の体験に基づく事実である。本稿では、ただ事実を淡々と説明するにとどまる。法的なアドバイスについては専門家の意見を参考にしていただきたい。

◆痴漢冤罪はある日突然に!

 痴漢事件というのは、多くの場合ラッシュアワーで混雑する公共交通機関で発生する。特に多いのが電車内だ。痴漢に遭ってブチ切れた被害者は、被疑者と思われる相手の手首を掴むなどして「次の駅で降りてください!」と迫ってくる。

 これが間違いなく痴漢をやった犯人であれば問題はないのだが、最近の痴漢は、自分が直接疑われないように、被害者と自分の間に“スケープゴート”になる人を挟んだりするなど手口も巧妙化している。

◆駅員室に行くと、どうなる?

 痴漢の疑いを掛けられた場合の対処法について、「駅員室には行くな」という意見がよく出る。たしかに痴漢の疑いを掛けられ、電車から降ろされると、駅員は被害者と、痴漢の疑いがある人を駅員室に連れて行こうとする。

 駅員室に行くと、痴漢の容疑の疑いがある人は、被害者とは隔離され、駅員は警察を呼ぶ。駅員にとって、駅構内のトラブルを収めることは業務のひとつだが、刑事事件が発生した以上、後のことは全部警察に丸投げするというのはよくあるスタンスだ。

 また、2つ目のよくある対処法として、名刺などを渡して身分を明かし、その場から堂々と立ち去るという方法もある。しかし、これの成功率はそれほど高くなく、被害者や駅員の強引な誘導によって、駅員室まで連れ込まれてしまうことがほとんどだ。

◆突然、制服の警察官が登場!

 そうして駅員室に連れて行かれたとき、駅員は「別々に事情を聞くから…」と言い、まず被害者と被疑者を完全に引き離す。おそらく裁判の公判まで、2度と会うことはないだろう(幸運にも起訴されなったら、本当にもう2度と会うことはない)。

 そして、初動として最寄の交番や派出所から制服警官がやってくる。警察官は通常2人で来て、被害者と被疑者に対して、とりあえず駅員室で話を聞いてくる。

「お宅、痴漢したわけ?」

 あくまでも私見だが、痴漢の疑いを掛けられた人に対して、警察官は最初から疑いの眼差しを向け、不信感いっぱいで聞いてくる。

「いえ!やってません!」

 なんて、いくら訴えてもほとんど効果はない。

◆最寄の警察署に連行される!

 そうこうしている内に、最寄の警察署からも警察官が到着する。この場合、私服刑事が来るか、警察署の制服警官が来るかはケース・バイ・ケースだ。すでに現着していた警察官から、事情を聞くと、署から来た警察官は、

「まぁ、詳しい話は署で聞くから、一緒に来て」

 と、痴漢容疑を掛けられている人を、そのまま駅前に止めてある警察車両(普通はパトカー)に乗せ、警察署まで連行してしまうのである。その後、釈放されるまで外部と直接連絡を取る方法はない。

◆警察署ではすぐに取調べ

 警察署まで連行されると、すぐに取調室に入れられ、早速、取調べが始まってしまう。この段階になると、その立場は完全に痴漢の容疑を掛けられた“被疑者”だ。

 警察の取調室といえば、映画やTVドラマでよく描かれる場面だが、同じなのは狭苦しい点くらいで、机の上にスタンドライトはない。また、調書を手書きでは書かないので、ノートPCとコンパクトプリンタが机の上に置いてある。罪状否認をしている場合、言葉遣いこそ乱暴だが、ドラマのように胸倉を掴んで「キサマが、やったんだろぉ!?」などと恫喝をされることもない。

 最初の取調べでは、

・弁解録取書

・身上経歴調書

 という2種類の供述調書を作るのが基本だ。弁解録取書というのは、事件に関する被疑者の“言い訳”のようなもので、掛けられている容疑に対して、その罪を認めるか、否認するかという被疑者の立場を調書で明らかにするのである。

 一方、身上経歴調書は、被疑者自身の生い立ちや学歴、あるいは職歴などを調書にするものだ。このふたつの調書を作ったところで、最初の取調べが一段落するのが普通である。弁解録取書も身上経歴調書も、一般的には“供述調書”と呼ばれる書類で、取調べにあたる担当捜査官(普通は私服刑事)がPCを使って作成する。

 PCで作る書類なので、他の場所で改ざんできてしまう可能性がある。そこで手続き的にはその場に置いてあるコンパクトプリンタですぐにプリントアウトし、その内容に間違いがないかを被疑者自身がチェックすることになっている。そして、内容に間違いや不服がなければ、被疑者は調書の末尾にサインをし、差し替えができないよう、各ページの隅に指印を押すのである。

 そのため、容疑を否認している被疑者でも、犯罪を犯しているような調書にサインをしてしまうと、同意したことになる。調書はしっかり読んでチェックしておくに越したことはない。

 次回は指紋採取、そして留置所とはどんなところなのかをお届けします。

<文/ごとうさとき>

【ごとうさとき】

フリーライター。’12年にある事件に巻き込まれ、逮捕されるが何とか不起訴となって釈放される。釈放後あらためて刑事手続を勉強し、取材・調査も行う。著書『逮捕されたらこうなります!』、『痴漢に間違われたらこうなります!』(ともに自由国民社 監修者・弁護士/坂根真也)が発売中

ハーバー・ビジネス・オンライン