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「仕事はプライベートのため」だと? だから服装もだめなんだ ワークスアプリ牧野氏

6/8(木) 7:47配信

NIKKEI STYLE

 「仕事はプライベートのために嫌々やっているもの」という発想が、ビジネスシーンでの装いへのこだわりを損ねている――。こう指摘するのは、人工知能(AI)ソフトウエア開発を手がけるワークスアプリケーションズの牧野正幸最高経営責任者(CEO)だ。就職しててすぐに「給料2カ月分でスーツを買った」といい、「趣味はスーツ」と豪語する牧野氏に、ビジネスとファッションについての思いを語ってもらった。

 ――スーツに対するこだわりの理由をお聞かせください。
 「そもそも、学生のころから『日本のサラリーマンはめちゃくちゃ格好悪い』というイメージがあって。実際、『ドブネズミルック』とまでいわれていた。米国では東海岸と西海岸で服装が違う。西海岸では誰もスーツなんて着ないけれど、東海岸ではスーツ着ます、みたいなね。でも日本は全員中間、というのか中学校の制服と同じで、『とりあえず3年間同じ服を着続ける』という印象だった」
 「とはいっても、日本人もずいぶんとファッショナブルになってきた。女性は昔からそうだけど、男性もね。私服は意外とみんなこだわっているし、こぎれいにしているんだけど、スーツは違う。『制服だから、とりあえずなんでもいいや』という人が多い」
 ――こだわりがないのはなぜでしょうか。
 「日本人のスーツに対するこだわりのなさの根底には、働き方に対する考え方があると思う。『ワークライフバランス(仕事と生活の調和)』という言葉があるけれど、『仕事とプライベートをきっちり分ける』という考え方がある。もちろん分けてもいいんだけど、『仕事はプライベートのために嫌々やっているんだ』という前提条件を立てている人が、ずいぶん多いと思うんですよね」
■「仕事は悪だ」という考え方が前提にある
 「最近、『働き方改革』が注目されていますが、私はいろいろなところで委員を務めています。そこで、非常に違和感があるのは、『仕事は悪』だと決めつけていて、『だから労働時間は規制しなくては』という考え方があることです」
 「また、日本の多くの企業は入社後に社会人としての基礎的な部分を教える期間がある。当社の場合は長くて約半年間、『自分でものを考える』やり方を教育する時間を設けています。一人前になってからも、エンジニアならどこの会社でもそうですが、様々な技術を習得するための時間が必要です。その時間は仕事なのか、仕事ではないのか。当社では仕事の時間の2割を業務外のことに使う『スカンクワーク』を推奨しているので、会社で勉強している者がたくさんいます」
 「いずれ近い将来、自分のキャリアを磨くためにアフタースクールに通うことすら、『そんなことしたら働き過ぎだろう』とされてしまうのではないかと、感じることがある。とにかく『努力することは一切認めない』、という風潮になってしまうのではないか。極端かもしれないけれど、こうしたことの根本には、『仕事はプライベートを充実させるためにやむなくやっている』という考え方があるのだろう」


 「でも、そうすると、人生の半分を占めるであろう働く日々が、死ぬほど苦痛に満ちた日々となってしまうわけです。そんな考えが前提にあれば、『俺はカネを稼ぎにきているだけだから仕事中はどんな服でもいい』『スーツは着ろといわれているから嫌々着ているだけだ』となって当たり前ですよね。嫌なことにカネをかけたくないし、何も考えたくない。そうなるでしょう」

 「私はそれが嫌だった。昔から仕事は大好きだったしね。30歳を超えたあたりから、『仕事以外の自分のプライベートなライフスタイルも仕事も充実させたい』と、睡眠時間をガンガン削ったことはあったんだけど(笑)。仕事も遊びも、毎日死ぬほどやり続けたことはあったけど、仕事も私のなかではライフの一つだからね」
 「仕事でもほかのことでも、『やらされている』という気持ちでやっているものは一つもない。だから、一つ一つはしんどいけど、仕事も楽しい。しんどくても自分のために、楽しくてやっている」
■スーツは高いものを選べ そうすればそれに見合う男になれる
 「くだらないんですけど、学生のころから、直木賞作家の藤本義一さんがダンディーで格好いいなと思っていて。彼も私と同じ、関西出身だったしね。藤本さんが、たしかエッセーだったと思うんだけど、『スーツは、高いものを選べば選ぶほどいいんだよ』と書いていた。人間は、その服装に似合う人間に必ずなるから、限界までスーツや服で高いものを買えば、それに見合う男になれる、とね。単純に『なるほど、格好いいな』と」
 「それで、就職すると給料をひたすらためて、2カ月分がたまったときに、そのお金でスーツを買いました(笑)。最初は父親に買ってもらった3万円くらいのスーツを着て会社にいっていたんだけれど、『これじゃあ、だめだ』と。『3万円分』の男にしかなれないから。ただ、1着しか買えなくて結局1年間、毎日同じ服をきていました。けれど、すごくいい買い物だったと思っています」
 「働くうちに『スーツは戦闘服だ』と思うようになった。私はコンサルティングの仕事をしていたから、外に出てお客さんと話すときに、スーツは本当に重要なアイテムだなと思ったね。第一印象を決めるときに服装は重要だし、牧野は『こういった格好にしている』という個人のブランディングにもなるから。スーツに関してこだわるようになったのは、そのあたりかな」
(聞き手は松本千恵)
 「リーダーが語る 仕事の装い」は随時掲載です。

最終更新:6/8(木) 7:47
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