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プレイバック青春18きっぷ

6/8(木) 13:33配信

旅行読売

多くの旅人を鉄道旅に誘ってきた「青春18きっぷ」は今年、発売35周年を迎えた。

 「青春18きっぷ」の前身にあたる「青春18のびのびきっぷ」が初めて発売されたのは、1982年3月1日。基本ルールは今と同じで普通・快速列車のみに乗ることができ、年齢制限もなかった。価格は8000円と安く、1日券3枚と2日券1枚の4枚つづりで計5日間有効。利用期間は3月1日~5月31日の3か月間であった。
 このきっぷを企画したのは、国鉄旅客局である。若者に鉄道旅行の習慣を身につけてもらい、年を取っても鉄道を愛用するファンを増やすのが狙いだったという。
 「青春18のびのびきっぷ」は発売直後から好評を博した。第1回の1982年春季は3万1000枚、1982年度全体で7万4000枚を売り上げ、初年度から国鉄屈指のベストセラーきっぷとして名を挙げた。
 「青春18のびのびきっぷ」という長いネーミングには、「ローカル線で青年がのんびりした時間を持ってほしい」という思いが込められていた。だが、長すぎるという批判もあり、翌年の1983年に「青春18きっぷ」となった。
 1984年には1日券5枚つづりに変更。春と夏に加え冬季版も設定された。これで「1日券5回分、年3回発売」という基本形が確立。価格は1982年に1万円、1986年に1万1000円に改定し、その後、消費税転嫁以外の値上げはない。
 「青春18きっぷ」の人気が加速したのは、1987年の国鉄分割民営化後のことだ。JR各社が販売に力を入れたこともあり、国鉄時代に比べ販売枚数は急増した。
 販売数増の背景として、民営化後、在来線の輸送サービスが国鉄時代に比べて飛躍的に改善したことが挙げられる。普通列車が増便され、快速の運転区間が拡大されたことで、「青春18きっぷ」の利便性も向上。格安旅行の強い味方として、鉄道ファンや若者以外にも広く浸透していった。旅情を誘うポスターも話題になった。

 転機は1990年代後半に訪れた。1996年に5枚つづりから5日券1枚に変更された。金券ショップでのバラ売り販売への対抗措置だった。翌年には長野新幹線が開業し、並行在来線だった信越線の横川―篠ノ井駅間がバスや第三セクター鉄道に移管され、「青春18きっぷ」が使用できなくなった。この後、新幹線がのびるたびに利用可能範囲は縮小していった。
 それでも「青春18きっぷ」の販売は堅調で、2006年度には年間売り上げが100万枚を突破。この時は、2007年春に8000円で販売された「JR発足20周年・青春18きっぷ」が人気を後押しした。鉄道旅行ブームもあり、この時「青春18きっぷ」は絶頂期を迎えたといっていい。
 ところが、2009年に高速道路の特別割引で料金の上限を1000円とする「1000円高速」が始まると、「青春18きっぷ」の売り上げが急減。2010年度の販売数は62万枚にまで落ち込んだ。格安高速バスの攻勢もあり、2010年代前半に「青春18きっぷ」は試練の時代を迎えた。その後、高速道路の割引制度が縮小され、格安高速バスへの規制強化が進むと、「青春18きっぷ」は息を吹き返し、2015年度は72万枚にまで回復した。
 2015年に北陸新幹線、翌16年に北海道新幹線が開業し、「青春18きっぷ」が使えない範囲が拡大した。一部区間で「通過特例」と呼ばれる救済ルールができ、一部の第三セクター鉄道などに乗れるようになったが、そのぶんルールはわかりにくくなった。
 それでも「青春18きっぷ」の人気は健在だ。最近は利用者の過半数が40代以上といわれ、「年を取っても鉄道を愛用するファンを増やす」という、発売当初の狙いは達成されたと言っていい。これだけ使いやすくお得なきっぷはおそらく今後出てこない。国鉄が生んだ「企画きっぷの最高傑作」だろう。

文/鎌倉 淳

最終更新:6/8(木) 14:15
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