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中の本田、左の乾、前の大迫。鳴り響いた“崩しの三重奏”。ハリルJ、明確な新オプション【識者の眼】

6/8(木) 11:53配信

フットボールチャンネル

 7日、親善試合のシリア戦に臨んだ日本代表。13日のW杯アジア最終予選イラク戦を前にテストの一戦となったが、1-1の引き分けに終わった。前半はシリアにペースを握られたものの、後半から投入された選手がチームを活性化。中の本田、左の乾、前の大迫による連係は、新たなオプションとして確立されたのではないだろうか。(取材・文:河治良幸)

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●途中出場の選手たちがチームを活性化

“仮想イラク”として臨んだ親善試合のシリア戦は1-1の引き分け。前半に香川真司が左肩を負傷するアクシデントもあり、前半は好守がうまく機能せず低調なパフォーマンスに終わった。

 後半は本田圭佑、井手口陽介、乾貴士といった交替選手が効果的な働きでチームを活性化させたが、1-1という結果は多くのサポーターを満足させるものではなかっただろう。

 ホームの代表戦で勝利できなかったことは問題視するべきだが、イラク戦に向けた“トライ&エラー”の目的を考えれば、収穫が多かったことも事実。

 特に2年2ヶ月ぶりの代表復帰で攻撃に違いを生み出し、左サイドから多くのチャンスをもたらした乾貴士、そして最初は右サイドに投入されたが、MF今野泰幸とFW浅野拓磨の交替に伴い、[4-3-3]のインサイドに入ってから存在感を増した本田の活躍は今後の選手起用に大きく影響する可能性がある。

 後半13分から左サイドに投入された乾は「落ち着きを見せたいところもありましたし、その後で、仕掛けるところは仕掛けるっていうのを自分の中で意識して」ピッチに入ったという。

 ただ単純に縦や裏をどんどん狙うのではなく、自陣寄りにタメを作ってからスイッチを入れる。乾のプレーにより、前半はバタバタしたまま相手のフィジカルとバッティングしていた日本に明確な攻撃の起点ができた。

 そして後半18分、本田が右サイドからインサイドハーフにポジションを移すと、日本の攻撃は見違える様にスムーズになり、乾のところから次々とチャンスが生まれる様になった。

 象徴的だったのが後半32分の決定的なシーンだ。吉田麻也からボールを受けた本田が大きく左に展開すると、乾が吸い付く様なファーストタッチから縦に仕掛け、最後は中に切り込んで惜しい左足シュートを放った。

●左利きの本田がインサイドハーフに入る効用

「タメを作れるし、俺としては左利きの人が左を見てくれるので、あそこで受けられる。チャンスになったシーンもそうですし、右利きだとなかなかああいうボールは出せないので、圭佑くんがあそこに入ることで、左のワイドの選手は楽になると思います」

 本田がインサイドハーフに入ることのメリットを乾はこう説明する。「それができる時は日本は強いと思います」と乾。

 確かに本田と乾の間で流動的なパス交換をしたわけではない。しかし、本田が中で作って左で乾が仕掛けるという関係ができたことで、日本の攻撃に筋が通ったことは間違いない。さらに、前線の大迫勇也がシンプルなポストプレーで絡むとにより、「中、左、前」という崩しの三重奏が完成した。

「高い位置でボールを受けて勝負ができるので。やっぱり前半は高い位置でボールを受けることがなかったので、そういうところが前半と後半の違いかなっていうふうに思います」(乾)

 後半37分には本田がボールをキープした所から大迫がクサビで落とし、乾が仕掛けてシュートを放つも、ペナルティエリア内に侵入していた大迫の体に当たってしまった。

 明らかに攻撃が機能していた時間帯に大迫を下げ、岡崎慎司を投入したのは親善試合ならではの選手交代で、予定されていたものかもしれない。

 乾のパスを岡崎がコントロールできていれば決定的なシュートにつながりそうなシーンはあったが、終盤は岡崎が試合感を取り戻すために“消費”された感はいなめなかった。

 とにかく乾が投入され、さらに本田がインサイドに入ってからの日本代表の攻撃はこの“三重奏”を中心に、時にアクセントで中盤の倉田秋や左サイドバックの長友佑都が、フィニッシャーとして逆サイドから浅野が絡むことで四重奏、五重奏にもなる相乗効果を生んでいた。そこから結局ゴールが生まれなかったことは残念だが、あとはアウェイの環境でも機能できるのかだ。

 もちろん、左サイドには先制点の起点になった原口元気もおり、ハリルホジッチ監督がどのシチュエーションでどういう選択をするか分からないが、最終予選の最中で明確なオプションが加わったことを実感させたシリア戦だった。

(取材・文:河治良幸)

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