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痴漢冤罪で考える。だが男性専用車両は現実的ではない --- 尾藤 克之

6/8(木) 16:22配信

アゴラ

昨日の記事のアクセスが良かったので調べたところ、6/3の平井駅の事案が影響していることがわかった。フジテレビのグッディなどでも紹介されたようだ。本事案については、いくつかのサイトによって確認できる。「何を言っても女の意見だけで痴漢が成立する。平井駅で痴漢冤罪?」(https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170605-00000041-it_nlab-sci)。

■悪魔の証明は実質不可能

警察への批判があるが、警察は要請があればそれに従い捜査をするのは当然だ。よって批判は適切ではない。また、乗客に対する批判もあるがこれも適切ではない。しかし、痴漢問題に冤罪が多いことも事実ではあろう。

なかには示談金目当てで被害を申告する悪質な常習者もいると聞く。本来、刑事法上の基本準則として「疑わしきは罰せず」が存在する。しかし、痴漢に関してはこの原則が機能していないように感じる人が多いのかもしれない。

悪魔の証明は、多くの分野で活用されている。法律などの場面でも使われることが多い。なぜ、悪魔の証明と呼ばれるかというと、「~していないこと」「~が存在しないこと」の証明が実際には不可能だからである。痴漢に関して言えば次のような解釈になる。

「この電車には痴漢がいる」という事実は、痴漢を逮捕すれば立証が可能になる。この例では、仮にA氏が逮捕されたとしよう。しかし、A氏はかたくなに無罪を主張している。A氏が痴漢であることを立証するのは検察官になる。したがって、最初の時点では、A氏が自ら無罪であることを立証する必要性はない。

被害者の証言により事実が立証されれば(痴漢の場合は、被害者の証言が優先されることが多いため)、A氏は「痴漢ではないことの立証(証拠)」が必要になる。A氏が乗っていた電車の乗客を全員調べて「痴漢でないことを立証」することは実質不可能に近い。ゆえに「悪魔の証明」という。

現実的には、A氏の無罪を証明するのに乗客全員を調べることは不可能だから、物理的に痴漢行為ができない(位置が遠いので行為をすることは不可能)などを指摘して、矛盾を崩すことがおこなわれる。しかし、起訴後99%有罪、起訴率35%の現実から無罪を勝ち取ることは容易ではない。

痴漢が発生した場合、目撃者がいて被害者の証言と一致する場合、現行犯逮捕になる可能性が高い。電車内の場合、路上と異なり防犯カメラの証拠映像等が存在しない。そのため、被害者に犯人の特徴等を確認するが、痴漢に関しては被害者の証言が優先される。

逮捕されれば、刑事訴訟法にしたがい手続が進んでいく。検察官送致、勾留、勾留延長、起訴・不起訴の処分で手順が進み、最長で逮捕日から23日間捕まった状態が続くことになる。起訴されれば期間は長引くことになる。一般のサラリーマンであれば、長期欠勤は懲戒の対象になるだろう。

■男性専用車両導入は現実的ではない

一方で、女性専用車両があるのに男性専用車両がないことが不公平であると指摘する人がいる。まったくその通りだが、現状で男性専用車両が導入される可能性は低い。男性専用車両を導入することは、鉄道会社にとっては異なるオペレーションを運用することになるからコスト増につながる。

都内のJR初乗りは130円だが、値上げに転嫁しても構わないというのであれば可能かも知れない。しかし、それではお客を他にとられてしまうことになるから、他の鉄道会社も歩調をあわせて運賃をUPさせる必要性がある。これが簡単でないことはわかるだろう。

一部の車両に対して防犯カメラを設置するなどの対策はあるかも知れないが、痴漢冤罪防止用として男性専用車両を導入することは簡単ではない。女性専用車両も元々は痴漢対策のために導入されたわけではない。乗客へのサービスの一環として導入されたものである。

希望する人がまだ少数という点もあるだろう。多数意見になって、社会的に強力な意見になれば鉄道会社を動かすことにつながる。なお、世界的に見て痴漢冤罪防止用の車両を導入している国は見当たらない。これがなにを意味するかも考えるべきだろう。

尾藤克之
コラムニスト

尾藤 克之

最終更新:6/8(木) 16:22
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