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【日本代表|シリア戦戦評】乾貴士と本田圭佑の働きは本当に素晴らしかったのか?

6/8(木) 17:00配信

SOCCER DIGEST Web

乾と本田を称賛することには少し違和感を覚える。

 日本の戦いぶりは予想以上に酷かった。攻撃も守備も中途半端になった原因は、おそらく中盤の構成力の低さにあっただろう。
 
 原口元気が「前から行っても守備がハマらなかった」というのは前線と中盤の距離感に問題がおそらくあったわけで、実際、日本はシリアのスピーディーな攻撃に苦しめられた時間帯があった。
 
 香川真司の負傷交代(10分)という思わぬアクシデントがあったとはいえ、前半は特に酷かった。48分に先制された後は、さすがにホームで負けられないと闘志に火が付いたように見えたが、それでも結局は1-1の引き分けである。
 
 シリアの運動量が落ちてきた後半に日本が主導権を握るのは当たり前で、乾貴士のテクニックが素晴らしかった、本田圭佑のインサイドハーフが良かったなどと称賛することには少し違和感を覚える。
 
 むしろ懸念すべきは、昨年11月のサウジアラビア戦と今年3月のUAE戦で抜群に機能していた1トップの大迫勇也が沈黙した点だ。これも、中盤との連係に原因がおそらくあるだろう。今野や山口からボールを引き出せず、たとえパスを受けてもフォローがないせいで孤立と、悪循環にハマっていたのも、中盤と適度な距離感を保てていなかったからだ。
 
 これまでは大迫の絶妙なタメからリズムを生み出していた日本。しかし、その武器を生かせずに手詰まり状態になると、シリアのカウンターを食らうようになり最終ラインはズルズルと下がり始めた。これで前線、中盤、4バックの3ブロックは完全に間延びし、空いたスペースをシリアに使われるようになってしまった。
 
 その傾向が強かったのがつまり前半で、試合をコントロールしていたのはアウェーのシリアだった。こうした流れでシリアが48分にマルデク・マルドキアンのヘッドで先制したのは、むしろ自然な流れだったと言えるだろう。

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復帰したばかりの今野に多くを求めるほうが無理。

 あの失点を振り返り、酒井宏樹は「どこかフワッとしていた」とコメント。一瞬の油断が命取りになることを改めて教えてくれたゴールだったいうことも言っていた。その意味で、イラク戦を前にそれに気付けたことは収穫だ。実際、吉田麻也とCBコンビを組んだ昌子源も「やられた部分も成長につながる」と話していた。
 
 見方によっては、乾のテクニックが光った、本田のインサイドハーフに可能性を感じた、というのも収穫と言えるのかもしれない。
 
 ただ、イラク戦に向けて先行するのは期待よりも不安だ。気掛かりのひとつは、今野泰幸のパフォーマンス。同点ゴールを決めた以外にインパクトを残せず、ひと言で言えば、シリア戦の今野は「UAE戦の今野」ではなかった。3月のUAE戦を最後に実戦から遠ざかり、6月4日の磐田戦で復帰(途中出場)したばかりの彼に多くを求めるほうが無理というものだ。
 
 シリア戦でアンカーを務めた山口蛍も動きが重かった中盤は香川の戦線離脱も決まり、まさにクライシス。もしかするとイラク戦は、今野をあきらめて、トップ下に倉田秋、2ボランチに山口(もしくは井手口陽介)と遠藤航を置く布陣で戦うかもしれないが、いずれにしても香川の戦線離脱は痛手だ。
 
 なにより、イラクに精神的なアドバンテージを与えてしまうのが厄介だ。ネームバリューだけで相手を威圧できる選手がひとり少なくなってしまうのは予想以上に痛い。
 
 シリア戦はいくつかの収穫があったかもしれないが、どちらかと言えば、失ったもののほうが大きいと考える。

取材・文:白鳥和洋(サッカーダイジェスト編集部)

最終更新:6/9(金) 12:17
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