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旅人マリーシャの世界一周紀行:第146回「唇のお皿が大きいほど美人! ピン札しか受け取らない“気高き”ムルシ族のド迫力っぷりとは…」

6/8(木) 15:00配信

週プレNEWS

蚊帳(かや)付きのベッドだけが置かれた監獄のような宿で、ひと晩ーー。翌朝、ドアを叩くのは昨日ガイドしてくれた少年アベだった。

【写真】唇にお皿をはめこんだ“ムルシ族”の美女たち

「あら、アベ。よくここがわかったね。小さな村だもんね。でもまだ眠いし、今日はどうするか決めてないから、ツアーの話はまた後でね」

仕事熱心のアベの勧誘をとりあえず断ると、私はその後ろにもうひとり、しっくりくるガイドに出会ってしまった。

恋も旅もタイミングが重要。「男の数は35億。細胞レベルで旅してる?」(すみません、ちょっとやってみたかったブルゾンネタ!)。アベには悪いけど私はちょっと浮気して、今度は見た目のチャラいお兄さんガイド、アリ族のマサを雇うことにした。

その後にすぐまたアベに会ってしまったが「マサは友達だし、いいガイドだよ!」と認めてくれた。理解のある元カレ、いや、元ガイドでよかった。



さて、マサと向かったのは火曜ジンカマーケット。

「ジンカマーケットは、服・野菜・鍋・動物・酒・鶏・スパイスの7種類のブースに分かれているんだよ。ひとつずつ見て行こう」。

マサは見た目と違って、なかなかマジメで丁寧なガイドをしてくれた。「インジェラの原料はこれだよ。触ってごらん」とか「器は叩いた音で良し悪しがわかる」とか、「バターはひとつまみ1ブル(約5円)で売っているんだよ」とか。



バターの買い方は独特で、売り手が指先でネチョッと摘まんだバターを葉っぱに乗せていき、何摘まみかで値段が決まるという方法。

「頭痛の時は頭に塗るんだよ。あと、リップクリームにもなる。それから花嫁になる人は全身に塗って1週間パックして結婚式を迎えるんだ。匂い? もちろん臭いさ(笑)」

………。どうやらエチオピアではバターは食用だけではないようだ。乾燥防止のためらしいが、思いがけないバターの万能な使い道に、唖然。

昔、マヨネーズで髪を洗うとツヤツヤになるという都市伝説を信じて、ギトギトの臭い頭になった自分を思い出した。





続いて洋服売り場へ行くと、一部にだけやたらと女性が群がっている。

「安いよ! 安いよ! 1着10ブル(約50円)! お買い得!」。そこはバーゲン会場だった! 叩き売りの声に女性がヒートアップするのはどこの国も一緒で、私も1着、お買い上げ。

「洋服はケニアの国境モヤレですごく安く売っているから、そこで仕入れているんだ」。あら、私はエチオピアでケニアの服を買ったのかな? まあいいや(その後、何度洗濯しても茶色い水が出てくるとは、この時は思いもよりませんでした…)





ひと通り、マーケットを見た後、マサが追加料金でアリ族の村の見学をしないかと勧めてくれたのだが、「アリ族も素敵だとは思うけど、やっぱりムルシ族にも会ってみたかったな…。ありがとう、またね!」

マサは私がしつこい勧誘を苦手だと理解してくれていたので、それ以上の押し売りもなサくヨナラをした。ジンカ村にはアリ族が多く、他の民族に比べると見た目に特徴的な違いがない。

反対に、この辺りで一番奇抜なのが下唇に皿をはめ込んだ“ムルシ族”で、旅人に人気No.1の民族。

奴隷貿易が盛んな時代、美しい女性が奴隷として連れていかれてしまったことから、その身を醜く見せて価値を下げようとしたのが始まりなんだとか。今では皿が大きいほど美しい女性とされていて、結婚時には銃や牛がもらえるのだそう。





ムルシ族の集落まで行けば会えるのだが、車をチャーターしたりガイドやソルジャーを雇ったり国立公園の入園料も必要で、なかなかそのハードルは高い。

その上、苦労して会いに行ったにも関わらず、一部の者は非常にアグレッシブでお金にがめついところがあるなど、そのビジネス的撮影会にもガッカリする旅人が後を絶たないらしい。

「他の民族は見れたし、ムルシ族は諦めようかな…」と思っていたその時、マサが慌てた様子で戻って来た。

「キミはラッキーだ! ムルシ族に会えるぞ! お金はあるかい? 今そこに来ているから急いで!」


不意打ちのチャンスに小走りでついて行くと…、「ダ、ダルシム!!」。そこにはまるで『ストリートファイター』に出てくるキャラのような目つきで睨みをきかせたムルシ族が10人ほど並んでいた。

プライベートな時間だったのか、写真で見たような派手な装飾やメイクではなかったが、スッピン姿のムルシ族に胸が高鳴る私。「我らはムルシ族だ」というプライドと媚びない姿勢、そのオーラに圧倒される。迫力ある~!

しかしその喜びは一瞬で、すぐに緊張感の走るピリピリした空気に包まれた。「急いで急いで、ホラ、ムルシ族様たちがお待ちだから! まずはちゃんとあいさつをして!」

マサに急かされた私は、「えっと、えっと、どうすればいいの? お金が先? いきなり写真撮っちゃっていいの?」と、あたふた…。ムルシ族はコミュニケーションをとる気など全くなさそうで、こちらを見て身内で何か話すと鼻で笑った。面倒くさそうな表情をして舌打ちをしたり、ヤンキー座りをしている者までいる。

まるで、リンチ寸前のような雰囲気の中、私はペコペコとムルシ先輩に頭を下げ、その中でひとりだけ唇にお皿をはめていた女性に写真をお願いした(どうやら装飾やお皿は観光客向けで、普段は外している人が多いようだ)。



彼らは観光客の撮影に対して、ピン札しか受け取らないという“気高き”族であることでも有名だった。

そして私が、この日のために用意してきた5ブルのピン札を恐る恐る手渡すと、バッと奪い取り、すぐにそれを投げつけてきた。

「こんなはした金! もっと出せ! 私はアンタが2回シャッター切ったのを見たんだよッ!」。そばで見ていた赤ちゃんを抱いた女性がヤジを飛ばす。

「ハ、ハイ! ス、ス、ス、スミマセン! お金ならありますっ!」

ムルシ族は目が良いのか、シャッターを切った数になかなか細かい。大丈夫、5ブルのピン札をたくさん用意してきた。しかし、すでに戦意喪失している私は、早くこの場を去りたかった。

ちなみにムルシ族の男性は皿をはめていないので珍しくもないのだが、流れで最後にもう1枚写真を撮ると、「ハイ、終わり~。この後、彼らはローカルビールを飲みに行くからね。ムルシ族様にお礼を言ったらキミは帰って!」と、マサはいつの間にかムルシ族を打ち上げに連れて行くマネージャーのようになっていた。

ずーっと会いたいと思っていたムルシ族だったけれど、やはり彼らとの交流には強いメンタルが必要なようだ。

またいつかリベンジしに来るから、お皿を大きくして待ってろよ~!



★第147回「今年は2009年? 『バック・トゥ・ザ・フューチャー』なエチオピア暦の旅は甘くないぜ!」

【This week’s BLUE】
鮮やかな青い布ばかりのスカート屋。民族たちはとってもオシャレ!

●旅人マリーシャ
平川真梨子。9月8日生まれ。東京出身。レースクイーンやダンサーなどの経験を経て、SサイズモデルとしてTVやwebなどで活動中。バックパックを背負 う小さな世界旅行者。オフィシャルブログもチェック!  Twitter【marysha98】 instagram【marysha9898】

最終更新:6/23(金) 15:12
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