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パチスロ旧基準機の年内完全撤去は絶対にありえない、その3つの理由

6/8(木) 16:00配信

HARBOR BUSINESS Online

 パチスロファンの中で、旧基準機が年内には完全に撤去されるという噂がまことしやかに広がっている。パチスロの旧基準機とは、専門的に言えばAT・ARTをサブ基盤で管理しているパチスロの事であり、現在、パチンコホールに設置されているパチスロ機の中では、一番出玉が見込める遊技機である。

「ゴッド凱旋」、「ハーデス」、「沖ドキ!」、「バジリスク絆」、「まどマギ」等(スロットファンにしか分からない名称ではあるが……)の、客にも人気があり、ホールの収益も見込めるパチスロの主力機はほとんどが旧基準機であり、この旧基準機の撤去は、ホールにとって死活問題なのである。

 なぜそのような話になっているのか。

 政府がギャンブル等依存症対策法案を検討していくなかで、パチンコ業界を主管している警察庁は、パチンコ・パチスロの射幸性(≒ギャンブル性能)の抑制を対策の柱として掲げている。そんな折、警察庁がパチンコ業界の主要団体を呼び出し、パチスロ旧基準機の撤去スケジュールの変更を要請したことが噂の発端。

 そもそもパチンコ業界では、射幸性の高いパチスロ旧基準機の設置比率を段階的に下げていく事を自主規制として合意しており、2017年12月1日には、ホールのパチスロ総設置台数に対して30%まで設置比率を下げることを既に決定している。その上での、警察庁からの目標変更要請である。「30%が駄目なら0%しかない」となるのも理解できなくはない。

 しかし筆者は、このパチスロ旧基準機の年内完全撤去の可能性はゼロだと考えている。その根拠について解説したい。

 パチスロ旧基準機の設置比率低減の自主規制を発表したのは、全国のパチンコホールのほとんどが加盟している、全日本遊技事業協同組合連合会(以下、全日遊連)である。

 その全日遊連は、今回のパチスロ旧基準機の撤去問題について、消極的な反応を隠していない。6月1日に行われた意見交換会では、理事長自らが「昨年末のパチンコ機の撤去では ベースの問題という明確な根拠があった。しかし、パチスロ高射幸性機の減台について、ホールには何が問題なのか、なぜ外さなければいけないのかという疑問が根底にあると思う」と発言している。

「昨年末のパチンコ機の撤去」とは、遊技くぎの問題で所謂MAX機を中心としたパチンコの高射幸性遊技機が昨年末までにすべて撤去された問題のことである。実は、このパチンコMAX機の撤去問題に対する業界のトラウマが、今回のパチスロ旧基準機全撤去の噂の真実性を高める要因にもなっている。

 ただ昨年のパチンコMAX機の撤去問題には、遊技くぎに関わる法的な問題(違法行為)の可能性が内在しており、警察庁もその点を重々承知しながらの撤去要請であったが、今回のパチスロ旧基準機全撤去に関わる問題には、遊技機を撤去する(撤去せざるをえない)法的な根拠が皆無と言っていい。ホールが撤去しなくても、何ら罰則を受けるものではないのだ。まして法的な根拠のない撤去を、全国のパチンコホールが受け入れる可能性は低く、無理矢理な自主規制ではかえって混乱を招く恐れもある。

 よってパチスロ旧基準機の年内全撤去を全日遊連が承諾するとはほぼ考えられないし、そんな全日遊連に対し、まして警察庁が強制性を持っての指導をするのは現実的には不可能である。

◆「射幸性は高いが違法ではない」という壁

 ホールではなく、メーカー側の動きはどうか。少なくとも、昨年のパチンコMAX機撤去問題においては、メーカー側がホールにお願いする形で事が進んだ。パチンコ機の出荷状態における「違法の可能性」を警察庁に指摘されたのだから当たり前ではあるが。

 パチスロメーカーとしてはどうなのか。

 パチスロメーカー側は、ギャンブル等依存症対策の一環としての射幸性の抑制とは違う観点から、でもパチスロ旧基準機の撤去を推進したいと考えている。

 当たり前だ。3年も4年も前に販売したパチスロ機が現役バリバリで稼働しており、旧基準機よりも出玉性能が落ちる新基準機(現行では新基準機のみ販売可能)の販売がふるわないメーカーにとって、旧基準機は目の上のたんこぶにもなり得る。

 しかし前述のように、パチスロ旧基準機は法的な「違法機」ではない。その上で、メーカー側の意向で旧基準機の撤去を推進するのであれば、入れ替える新台の価格を劇的に引き下げたり、旧基準機の下取り価格を高く設定したりと、ホール側に対する少なくない支出を覚悟しなくてはいけない。

 メーカー側としては、旧基準機の機械性能云々の文脈で撤去を促すのではなく、あくまで警察庁の要請に応える、もしくは社会的な要請に応えるという「理由」で撤去を推進したいのだが、やはり「射幸性は高いが違法ではない」という壁は如何ともし難い。

 また、もう一つの根拠として、警察庁が遊技機の仕様に関わる規則の変更を明言していることがある。

 ホールが、現時点では「違法ではない」とつっぱねようが、規則自体が変わってしまえば、「違法」になる可能性もある訳で、そうなれば全撤去を免れない。業界関係者は、最後の最後に振り下ろされる、警察庁の強権を憂慮してもいる。

 しかし、この規則改正についても、警察庁は激変緩和措置(猶予期間)としての経過措置期間を設けるとしており、常識的な判断をくだすのであれば、改正された規則が施行されたのち、最大3年間というのが目安である。勿論、この経過措置期間は行政側の一存で長くも短くも出来るが、間違っても「年内中に規則を改正し即施行、経過措置期間も最短」という形にはならない。

 業界関係者の言葉を借りれば、規則改正は秋以降になると目されており、施行は来春くらいではないだろうかと予測されている。

 ただ、この旧基準機に関しては、減台はもちろんのこと、遠くない将来にはホールから撤去されるのは間違いない。

 パチンコホールとしても、射幸性の高い遊技機に頼らない収益構造を確立するための努力が求められているし、客も過度な射幸性を求めてパチンコホールに行く時代は終わり始めていることを見越し、あくまで「遊び」としてパチンコ・パチスロと付き合っていくべきだろう。

<文・安達 夕 @yuu_adachi>

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