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「長期」って何年? 答えられたら長期投資じゃない

6/9(金) 7:47配信

NIKKEI STYLE

 経済成長からの分配を期待できない21世紀の厳しい日本社会の中で、将来への不安を克服するためには「経済的自立」を獲得するしかないこと、そしてそのための行動手段が「資産育成」であることをこれまで説いてきました。国もそれを後押しする姿勢を示しており、「長期・積立・国際分散」を投資における行動3原則として推奨しています。そこで今回からこの3原則をひとつずつ深堀りして、将来に向けた「お金の育て方」への理解を深めていきましょう。まずは「長期」から。
 「長期投資」というフレーズは、今やどこの証券会社でも銀行でも投資信託のセールストークに使われるようになりました。例えば窓口では「お客さまにお薦めのこの投信は、長期投資で考えていただければと思います」「ふーん、じゃあ長期ってどれくらいなの?」「はい、3年から5年くらいは持っていただけるとよろしいかと思います」といった類いのやりとりが日常化しているようです。
 ところがこれから説き明かしていく長期投資とは、こんな薄っぺらい話ではありません。端的に言えば、長期投資とは窓口トークのような○年という具体的な期間のことではなく、まっとうな本物の投資をすれば、自然とそれは長期になるのだということです。どういうことでしょうか。

■投資家心理で上下する株価

 書店に行くとよく、「すぐに儲(もう)かる株式投資必勝法」というような本が並んでいます。これらの内容は通例、株式相場で勝負して勝つためのノウハウが事細かに述べられているのですが、要するに一朝一夕でお金を大きくする(儲ける)ためのテクニックです。勝負である限り負けることもあり、その点ではギャンブルと同じです。このように皆さんは投資というと、相場で勝負することだと思い込んでいないでしょうか? つまり株式投資とは相場の値動きを予測してこれからすぐ上がる銘柄を当てることで、「必勝法」の本を読んでテクニックを身に付ければ勝率は上がるのだ、といったふうに。
 結論から言いましょう。それは全然違います。そうした行動はやっぱり投機的だと言わざるを得ません。
 そもそも株式市場では株価が一分一秒せわしなく上下していますが、何を理由に上がったり下がったりしているのでしょうか。新聞やTVのニュースでは「好調な米国の雇用統計を受けて」「100円台の円高を嫌気して」などと、経済指標の動向で解説されることが多いですよね。でも正直なところ、これらは後講釈にすぎません。
 せんじ詰めれば、日々の株価は市場参加者の多くが「買いたい」と思えば上がるし、逆に「売りたい」と思う人が多ければ下がる、それだけのことです。そして市場参加者の心の中には「儲けたい」という欲望や「損したくない」という恐怖があります。つまり日々の株価は彼らの感情の集積によって値動きしているわけで、それを事前に予測して当てることは、必勝本を読んだくらいでは到底不可能だと思いませんか?
 そもそも人は常に合理的な行動を取るわけではなく、しばしば自分でもあぜんとする行動に出るものです。例えばいい例が「散々飲んだ揚げ句、太るとわかっていながら終電前につい食べてしまう締めのラーメン」「当たる可能性は低いと知りながらも買ってしまう宝くじ」。そうした人間の非合理的感情に左右される株価の上下を仮に当てたとしても、それは偶然というものでしょう。やっぱり日々の値動きに注目する短期売買は再現性が見いだせないので、投資ではなく投機なのです。

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最終更新:6/9(金) 7:47
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