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本田がハリルJの“救世主”か。負傷者続出…深刻な人材不足を解決する強烈な個性

6/9(金) 11:32配信

フットボールチャンネル

 シリアとの国際親善試合を終えた日本代表は、多くの負傷者を抱えたまま海外遠征に臨む。次の試合は13日にイランの首都テヘランで行われるイラク戦。来年のロシアW杯出場権獲得に向けて負けられない重要な試合、中盤の人材不足に直面したヴァイッド・ハリルホジッチ監督はどのようにチーム作りを進めていくのか。そこでは本田圭佑がキーマンになるかもしれない。(取材・文:元川悦子)

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●負傷者続出の日本、決戦の地・イランへ

 13日の2018年ロシアW杯アジア最終予選・イラク戦(テヘラン)に向け、チームに新たな弾みをつけたかった7日のシリア戦(東京)。ところが1-1のドローという不本意な結果に終わっただけでなく、香川真司(ドルトムント)が左肩脱臼で離脱。右すね打撲の山口蛍(C大阪)も検査のため病院に行く事態になってしまった。

 長谷部誠(フランクフルト)に代わるキャプテン・吉田麻也(サウサンプトン)も腰の張りを訴え、酒井宏樹(マルセイユ)も右ひざ痛で8日のリカバリートレーニングを欠席。宇佐美貴史(アウグスブルク)はこの日でチームを離れることになった。

 次戦の地・テヘランには、山口、吉田、酒井宏樹を含む24人で乗り込むが、今野泰幸(G大阪)や乾貴士(エイバル)、浅野拓磨(シュツットガルト)も負傷明けで、日本代表は野戦病院化した状態と言っていい。

 日頃から選手のコンディションにはナーバスになりがちなヴァイッド・ハリルホジッチ監督も頭を抱えているに違いない。選手層が手薄になる中、いかにしてイラク相手に勝ち点3を確保するのか。その重要テーマをここからの5日間で模索しなければならないだろう。

 まずイラク相手にシリア戦と同じ4-3-3で戦うのか、従来の4-2-3-1に戻すのかという判断が、指揮官には求められる。全員のシステムへの慣れとセーフティな守備を第一に考えるなら後者が望ましいが、長谷部に続き、山口も欠場の可能性があるとなれば中盤は明らかに選手が足りない。

 彼らに代わるボランチの候補者は今野をはじめ、井手口陽介(G大阪)、遠藤航(浦和)、加藤恒平(ベロエ・スタラ・サゴラ)の4人。だが井手口はシリア戦で初キャップを飾ったばかりで、遠藤も2015年11月のロシアW杯2次予選・カンボジア戦(プノンペン)に先発出場して前半45分間で交代させられて以来、ボランチでプレーしていない。初招集の加藤は全くの未知数ということで、重圧のかかる国際舞台でそれなりの信頼を寄せられるのは今野しかいない。

 昨年9月のロシアW杯最終予選の初戦・UAE戦(埼玉)でもボランチ問題に直面したハリルホジッチ監督は大島僚太(川崎F)を大抜擢したが、その大島が2失点に絡んでしまい、経験不足を露呈する格好となった。日本のボランチ問題は依然として深刻なのだ。

●中盤の最適な組み合わせとは。本田の起用が解決策か

 中盤の停滞を回避するためにも、4-3-3を継続する方がベターかもしれない。シリア戦の後半を見ると、アンカー・井手口の前に本田圭佑(ミラン)と倉田秋(G大阪)がインサイドハーフで並んだ三角形はまずまず機能した。

 井手口は「中東には体が強い選手が多いので、まだまだ詰めていかないといけないという甘さを感じた。もっと詰めてボールを奪えるようにしたい」と課題を口にしたが、ガンバの先輩・宇佐美が「素早くボールを奪いにいくところが(井手口)陽介のよさ。それをしっかり出せていた」と前向きに話していて、初キャップにしては十分戦えていた印象だった。

 接近戦に絶対的な強さを発揮する山口以上に鋭い寄せを見せていたシーンも見られただけに、21歳の若きダイナモをこのままイラク戦で先発起用するというのも1つのアイディアかもしれない。

 その前に本田と今野、あるいは倉田をインサイドハーフとして配置すれば、シリア戦後半のいい流れを持続できそうだ。本田の右インサイドハーフ効果については多くの選手が認めていた点。長友もこんな話をしていた。

「4-3-3はUAE戦で初めてやったんで、シリア戦の前半も難しかったし、なかなかいい流れも作れなかった。中盤をいい形で使えないとあのフォーメーションは機能しないんで、特にインサイドハーフのところが肝になってくるかなと感じてます。(本田)圭佑が入れば1人左利きがいるってことで、僕の左サイドにサイドチェンジを出してくれるんで、すごくやりやすくなる。1人だけでも左利きの選手がいることは大きな武器になる」

 これは乾が述べたことと全く同じ。本田からサイドに大きく展開する形があるか否かは左サイドの攻めのバリエーションを大きく左右するのだ。

 これまでハリルホジッチ体制ではずっと右FWで起用されてきた本田だが、彼は指揮官が求める生粋のサイドアタッカーとは異なるタイプの選手だと言える。今回外れている清武弘嗣(C大阪)が「ハリルさんは(久保)裕也(ヘント)とか(原口)元気とかガッツリ前にいくタイプをサイドに置きたがる」と言うように、その傾向は試合を重ねるごとに強まっている。ボールを奪ってからの速い攻めを信条とする指揮官にしてみれば、縦に仕掛けられる駒を数多く持っていたいのも理解できる。

●ウィングで生きない本田の個性。中盤ではそれが武器に

 シリア戦を振り返っても、右は久保と本田、浅野、左は原口と乾が使われたが、本田以外の彼らはいずれも縦への推進力を前面に出すタイプ。浅野も「前への意識は常に持っていますし、シリア戦に関しても裏とゴールを狙っていた。あとは味方のタイミングに合わせるだけ。出るのはたぶん右だと思うので、それを考えながらやっていきたい」と久保と違った個性を出しながら生き残ろうとしている。

 となると、やはり本田や香川、清武、そして宇佐美のようにボールにたくさん触ってリズムを作るタイプはインサイドハーフがベストではないか。長友は「(インサイドハーフが)圭佑のベストポジションかどうかは分からないですよ。センターバックかもしれないし」と冗談交じりに話したが、本田が中盤に入る形の出来に手応えを感じているようだった。インサイドハーフは近い距離に2人配置できるため、日本に多いテクニカルな選手を数多く使えるメリットもある。

 問題はアンカー脇のスペースをいかに連携しながら埋めるのか。そして、高い位置でボールを奪う守備ができるのかという点だ。その難題は一朝一夕にクリアできるものではないが、代表の活動期間が限られていることを受け入れ、短時間で最大限の強固な組織作りをしていくしかない。

 幸いにして今回はテヘランでのトレーニングが4日間ある。そこで戦術の徹底を図り、イラクの出方によって臨機応変に対応できるような下地を作れれば理想的だ。本田という発信力のあるリーダー、今野というベテラン選手が中盤にいれば、組織作りも進めやすい。

 8日のリカバリートレーニングでも2人がランニングしながらコミュニケーションを密に取っている姿が見られただけに、イラク戦を何とか乗り切りたいと言う自覚は強いはず。シリア戦を踏まえ、ハリルホジッチ監督が中盤の構成をどうするのか。その選択がイラク戦の生命線といっても過言ではないだろう。

(取材・文:元川悦子)

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