ここから本文です

ぼくらがいま「クラフツマン」に学ぶこと

6/9(金) 8:20配信

WIRED.jp

著書『クラフツマン』で、人間と「モノをつくること」の関係をひも解いた社会学者、リチャード・セネット。なぜ、現代にこそクラフツマンシップが必要なのか。よいクラフツマンになるための条件とは何か。クラフツマンの姿勢にこれからの技術と向き合うためのヒントを探るべく、ロンドンの自邸を訪ねた。

よいクラフツマンになるための条件とは何か。

自身が教鞭を執るロンドン経済大学からさほど遠くない市街地に、社会学者リチャード・セネットの住まいはある。柔らかな自然光が満ちる広々とした空間には、美しく手入れされたグランドピアノやチェロが置かれ、その状態から、彼がかつて真剣な音楽家であったこと、そして現在も、熱心な演奏家であることが窺える。

ロシア移民の2世として米国シカゴに生まれた彼は、1歳に満たずして両親が離婚し、母親と2人、のちにシカゴを代表する悪の巣窟として名を馳せることになる低所得者層向け公団住宅、カブリーニグリーンハウスで育った。

「当時は皆が思うような場所ではなかったんだ。実のところ、わたしはとても充実した、豊かな幼少時代を過ごしたんだよ」

その言葉の通り、彼はここで音楽に出会った。カブリーニグリーンハウス近くのカソリックスクールでピアノに親しみ、彼は非凡なる音楽的才能を開花させていく。母親がもっていたスペイン人チェリスト、パブロ・カザルスのレコードから聞こえてくる弦楽器の音色に魅了されたセネットは、学校の司祭の後押しもあり、5歳でチェロを学び始めた。そして10代のころには、シカゴ交響楽団の首席チェリストであったフランク・ミラーに師事するまでになったのだ。

しかし、順風満帆に見えたセネットは、24歳のときに手首に致命的な傷を負い、プロとしての道を断たれてしまう。この悲運から彼を救ったのが、音楽仲間の父であったハーヴァード大学の社会学者、デヴィッド・リースマンだった。「君のように滑稽なほどに左翼的な生い立ちの人間は、もうわたしのところで社会学でもやるしかないだろう」と誘われたセネットは、図らずも社会学を学ぶことになる。

1/4ページ

最終更新:6/9(金) 8:20
WIRED.jp

記事提供社からのご案内(外部サイト)

『WIRED Vol.28』

コンデナスト・ジャパン

2017年6月8日発売

630円(税込み)

特集「Making Things ものづくりの未来」。大量生産、大量消費の時代が終わりを迎えるなか、ヒトはいかにものと向き合い、それをつくり、使っていくのか。