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捨てない経済ー北欧発「リペアエコノミクス」への挑戦

6/9(金) 12:20配信

WIRED.jp

シェアリングエコノミーとメイカームーヴメントは、「修理産業」という領域で、大きく花開くことになるのかもしれない。2016年、ものの修理への減税を発表したスウェーデンをはじめ、北欧では「買って捨てる」消費に終止符を打つための取り組みが行われている。「リペアカフェ」や「ヌーディージーンズ」など、スウェーデン、デンマークでの取材から見えてきた「捨てる」を前提としない、新しいものづくりと消費のかたちとは? (『WIRED』日本版VOL.28より)

【もっと知りたい】ものづくりの未来

5月某日、午後6時。スウェーデン第2の都市であるヨーテボリで、「リペアカフェ」が開かれていた。集まったのは、仕事を終えたばかりのボルボのエンジニア(ヨーテボリはボルボの拠点として知られる)や、機械マニアの青年、地元の主婦に学生など、職種も世代もさまざまな人たち。めいめいに、壊れたヘッドホンやスピーカー、ケトル、パソコンの充電器、洋服、自転車など、修理が必要なものを持ち込んでいる。
誰かがiPhoneのディスプレイ修理に行き詰まれば、得意なメンバーがサポートする。散歩中に道端に捨てられていた50年代のオシロスコープを拾ってきたという青年は、リペア仲間たちと内部構造を観察している。ここでは誰もが「壊れたものを修理し合おう」という純粋な目的のもと集まったボランティアだ。

修理が教えるものの価値

リペアカフェは2009年、「つくる→買う→壊れる→買い替える」というこれまでの消費サイクルに疑問をもったオランダの環境ジャーナリストがスタートした無料の修理イヴェントで、発足以来、ヨーロッパを中心にネットワークを広げ、いまでは世界中に1,000を超えるコミュニティが存在するまでに成長している。直したいものを持ち込んで修理代金を払えばOKの修理ビジネスとは異なり、ここでは「協力し合う」という精神が大切にされている。互いに教え合い、協力し合いながら修理を楽しむことが、リペアカフェの醍醐味だ。
「リペアカフェは、サーキュラーエコノミー(循環型経済)とコラボラティヴエコノミー(共同経済)の両側面から語ることができると思います。壊れたものを修理しながら長く使い続けるという前者のアイデアと、理念に共感した人々がそれぞれの知見を生かしながら相互に助け合い、学び合いながら修理を実践するという後者のそれ。両者はそもそも互いに補完し合う存在といえますが、リペアカフェも、どちらが欠けても機能しえないのです」

そう語るのは、スウェーデンに初めてリペアカフェを持ち込んだリペアカフェ・ヨーテボリのオーガナイザーであるエマ・エールヴァール。エマは、イヴェント会場から3Dプリンター、修理道具の提供まで、リペアカフェ開催を全面支援するヨーテボリの市民教育NPO「Studieframjandet」の職員でもある。

リペアカフェは、直したいものを修理する場であるだけではない。修理が得意でない人にとっては、プロダクトの仕組みを理解したり、道具の使い方や修理技術を習得できる学びの場になるだろうし、修理を担う人にとっても、自分の知見を生かして地域社会に貢献できるだけでなく、修理好きのコミュニティと知り合ったり、知識を深める好機となる。リペアカフェに一度でも参加すれば、「壊れたときに修理できるかどうか」という新たな基準でものを選ぶことができるかもしれないし、ものの内部構造や仕組みを知ることで、「グッドクオリティ」を見分ける能力まで養われるかもしれない。

スウェーデンにおいて、いまはまだ小さなムーヴメントでしかないリペアカフェだが、実のところ、政府はこの「リペア」というアイデアに大きな期待を寄せている。というのも、スウェーデン政府は今年1月、循環型経済への移行を加速させるための施策として、洋服や靴、皮革製品、自転車、家庭用布製品、そして大型家電の修理に対する付加価値税を従来の25パーセントから12パーセントに引き下げたのだ。リペア産業の活性化はまた、スウェーデンで深刻化する難民の雇用機会創出の打開策にもなりえる。環境大臣を務めるカロリーナ・スコ ーグによれば、サステイナブルな消費を推進していくために、今回に続くさらなる減税政策を検討中だという。

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最終更新:6/9(金) 12:20
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