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モントリオールが「デジタルエンタメ先進都市」になった理由と、8つのスタジオを巡る旅

6/9(金) 12:30配信

WIRED.jp

リターンの時期を迎えた街・モントリオール

とりたてて資源も景勝地ももたないカナダの一地方都市モントリオールが、「Cite du Multimedia」(マルチメディア都市)として世界に知られるようになったのは、ヴィデオゲームがきっかけだった。Investissement Quebec(ケベック州投資公社/日本のジェトロに金融機関としての機能を加えた組織、という認識が近い)が、フランスに本社を有するゲーム会社Ubisoftを誘致したことが呼び水となり、立て続けに大きなゲームスタジオがモントリオールに拠点を構えたのである。ニューヨークまで飛行機でおよそ1時間というロケーション、USドルに対するカナダドルのレートの低さ、米国と比べて34パーセントほど低い人件費、そしてなにより、金銭面での優遇(カナダ税から15パーセント、ケベック州税から17.5パーセントの返金に加え、従業員の年収の30パーセントを政府がカヴァー)によって、デジタルエンターテインメント系のスタジオがこぞってモントリオールを目指したのである。約20年前のことだ。

「デジタルエンタメ先進都市」の厳選された8つのスタジオを巡る

それまでめぼしい産業がなかったケベック州政府にしてみれば、海外企業を誘致することで、ローカル企業や人材を育むエコシステムが構築されるだけでも、投資としては価値があった。慧眼だったのは、投資先をマルチメディア企業に絞ったことだ。スマートフォンの登場といった時代の趨勢にも助けられ、モントリオールはその後、ゲーム業界において世界3位のマンパワーをもつ都市へと成長を遂げたのだから。

この流れは、今日のCite du Multimediaを象徴する存在であるMoment Factoryにも受け継がれていると、CEOのドミニク・オーデットはいう。

「ぼくたちのインスピレーションの源が、ゲーム由来のテクノロジーや、そこから派生するイノヴェイションにあるのは間違いない。この街にいると、そのあたりのトレンドに敏感でいられるから、とてもいい環境だと思う。とはいえ、ゲームはあくまでユーザーを孤立化し、スクリーンとユーザーだけの空間をつくるものだから、ぼくたちとしてはゲームエンジンやAR/VRといったものをハックして、パブリックスペースに人が実際に集まり、コミュニケーションが生まれるようなメディアデザインを心がけているんだけどね」

オーデットはさらに、こう付け加える。

「日本と違ってモントリオールには伝統がないから、イノヴェイションへの抵抗が少ないんだよ。ここには、従わなければならない慣習や固定観念がそもそもない。たった20年で、この街がエンターテインメント領域におけるクリエイティヴ & テクノロジーのハブに成長したのは、そんな背景からだと思う。それを考えると、日本から固定観念を打ち破るようなクリエイティヴが次々出てくるのは、本当に恐れ入るよ。きみたちがもつ『なにかをハックする能力』の源泉はどこにあるのだろう。それを知りたくもあり、東京にオフィスを出すことにしたんだ。ぼくたちが指向する“テクノロジーと自然の融合”をスマートに実現させている様子を、じっくり見てみたくてね」

TOMONARI COTANI

最終更新:6/9(金) 12:30
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