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英サッカー専門誌の熟練記者は「ACL暴行事件」をどう捉え、どう切り取るのか

6/9(金) 17:35配信

SOCCER DIGEST Web

ACLは成熟した大会になりつつあったが。

 正直、驚いた。
 
 これまでもサッカーのゲーム中に暴行事件がなかったわけではない。劇的な形で敗北を喫すると、感情を抑えきれなくなる場合は多々ある。とはいえ、そんな些細な理由で蛮行に及んでいいものだろうか。子どもでもあんな真似はしない。あれしきのことで暴力を振るっていては、プロサッカー界は暗澹たる世界に成り下がってしまう。
 
 アジアチャンピオンズ・リーグの浦和レッズ対済州ユナイテッド戦。まずはなにより、素晴らしい試合だった。レッズは0-2の第1レグから見事に3点を奪ってひっくり返し、スタジアムは興奮に包まれた。まさにカップ戦ならではの醍醐味だったし、存分に堪能させてもらった。ナイスゲームをした両チームに、エールを贈りたいと思う。
 
 ではなぜ、終了間際にあのような事態に見舞われたのか。
 
 試合中、暴力的なプレーやそれを誘発するような場面はほとんど見受けられなかった。審判のミスによる不公平さもなく、試合終了のあの間際まで、密度の濃いゲームが繰り広げられていた。済州のチョ・ソンファン監督は「勝者のマナー」について言及し、レッズの選手の挑発行為を非難したが、少なくとも映像で確認するかぎり、彼らはいたってノーマルに振る舞っていたように思う。時間稼ぎは試合の一部だ。誰だってやる。済州は第1レグでの2点のリードを守るべく、試合開始からあからさまにディフェンシブな戦いをしていた。
 
 ACLはひと昔前とは異なり、いまや成熟した大会になりつつある。そう感じはじめていた。それだけに、かくも軽率かつ未熟な行動でイメージを損なわれたのが残念でならない。まだ発展途上ということなのだろう。

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レッズのサポーターに圧倒されたのかもしれない。

 欧州のサッカーシーンでも、得てして暴力や乱闘は起こる。
 
 YouTubeで「soccer fights」「football brawls」などと検索してみればいい。山のように映像が出てくる。たいていはどこかの国のマイナーリーグ、小さなクラブや大会でのものだが、今日も世界のどこかで発生している。未熟な人間は少なくないのだ。
 
 済州のペク・ドンギュは阿部勇樹に肘鉄を食らわせた。あってはならないことだし、あの行為自体は許される代物ではないが、だからといって韓国の国民性と結びつけて論じるのは間違いだ。韓国人は暴力的だと短絡的に考えるのは良くない。Jリーグでプレーする韓国人選手があんなリアクションをするだろうか。そもそも済州は昨シーズンのKリーグでもっともカードの少ないチームだったと聞くし、レッドカードはゼロだった。
 
 いろんな事情が絡んでいたのかもしれない。済州はもともとスモールクラブだ。ここ数年で急成長を遂げたに過ぎず、ACLでラウンド・オブ16まで勝ち進んだのは今回が初めてである。国際試合における経験の絶対的な乏しさが否めない。相手は日本のチームで、しかも場所は埼玉スタジアム。レッズのパワフルなサポーターに圧倒されたのかもしれない。彼らファンはときに、チームに勝利を呼び込むほどの力を発揮するのだから。
 
 ただ、そういった要素を差し引いても、なんら言い訳にはならない。もしもスタジアムの外であんなことをしたら、明らかな犯罪であり、逮捕される。酷い行為だった。
 
 ワールドカップの舞台で同じような暴行事件が起きたらどうなるだろうか。万が一にもあったなら、FIFAは相当に厳しい処罰を下すだろう。尊厳を守るためにだ。ACLも世界に名だたる大会へと成長を遂げたいなら、二度とこのような事態を招かないよう、厳粛な対応をしなければならない。アジアサッカーの成長のためにも、曖昧にしてはいけないのだ。
 
 どんな処罰が適当なのかは、専門家ではないから分からないが、AFC(アジア・サッカー連盟)はいずれ、相応の厳罰を下すことになるだろう

※編集部・注/AFCは6月9日、処罰の内容を公式発表。ペク・ドンギュに3か月の出場停止処分+罰金など済州の3選手にペナルティーを科し、済州に4万ドル(約440万円)、浦和には2万ドル(約220万円)の罰金を言い渡した。

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最終更新:6/12(月) 16:13
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