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痴漢冤罪、警察の取調室では「冤罪だろうがパンツの中まで検査される」

6/9(金) 9:00配信

HARBOR BUSINESS Online

 今年に入って首都圏では痴漢の疑いを掛けられて逃亡を図り、ホームから線路に飛び降りる暴挙に出るケースが続出している。

 被害者に手首を掴まれた後、具体的にどんな手順で刑事手続きが進むのか。筆者は痴漢の疑いを掛けられ、写真撮影や指紋採取までされたことがある。前回は駅員室から警察の取調室に連れて行かれるまでを説明したが、今回はそれ以降の展開について説明したい。

 これは筆者の体験に基づく事実である。本稿では、ただ事実を淡々と説明するにとどまる。法的なアドバイスについては専門家の意見を参考にしていただきたい。

◆指紋採取と写真撮影は強制される!

 取調べが一段落すると、次に待っているのは、

・写真撮影

・指紋採取

 である。

 これは逮捕された被疑者が必ず強制され、拒否する権利はない。ただ、痴漢事件だと多くの場合、被害者や目撃者が被疑者を取り押さえたとか、駅員が駅員室で身柄を拘束したとかで“現行犯逮捕”が成立するケースが多い。したがって警察官に手錠を掛けられ、

「○時○○分!現行犯逮捕!」

 というわかりやすい逮捕ではないので、被疑者はいつ自分が逮捕されたかわからないのである。

 最初の取調べの中で、担当の刑事から自分が逮捕されていることを聞かされるか、取調べ後に写真撮影と指紋採取をされるとき、初めて被疑者は自分が逮捕されたことを知るのだ。

◆鑑識課の”スタジオ”で写真撮影

 逮捕後、警察署内で移動するときは基本的に手錠がかけられ、腰縄が打たれる。写真撮影と指紋採取は署内の鑑識課で行われるのだが、取調べ室から鑑識課まで移動するのに、手錠&腰縄姿で連れ回される。

 署内に居る警察官たちにとって、手錠&腰縄姿で歩く被疑者の姿なんて見慣れたものだが、その姿で連れ回される被疑者自身にとっては“気分はもう犯罪者”だろう。

 鑑識課には、写真撮影をする“スタジオ”がある。そこで被疑者は正面・横顔・左斜め前の姿が撮影される。今はデジカメで撮影するので、鑑識課の専門家が撮影するのではなく、取調べをした刑事かその部下が、サッサと写真を撮るのが普通だ。

 一方、指紋採取はスキャナを使ってデータを取り込むので、この作業は鑑識課の担当者が行う。鑑識課の担当は、被疑者にあまり関心ないのか、丁寧な言葉使いで淡々と仕事をこなす。データがスキャニングされるのは、両掌と側掌紋(手首から小指にかけた手の横側)になる。

 ちなみに逮捕されて強制されるのは、写真撮影と指紋採取だけだ。

「DNA採取」を強制的にするためには、別の令状が必要になる。ところが、警察は多くの場合、あたかも強制のフリをしてDNAも採取しようとすることがある。痴漢事件の場合、被害者の衣服に被疑者のものと思われる体液でも付着していない限り、事件の捜査にDNA情報は提供しても意味はない。

◆留置場に入る前に身体検査がある!

 痴漢事件の多くは朝、あるいは帰宅時のラッシュアワーに多く発生する。したがって、痴漢の容疑を掛けられて、被疑者が警察署へ連行されるのは、午前中か夜である。

 午前中に逮捕されてしまった場合、写真撮影と指紋採取の後も取調べは続く。とはいえ、現在は長時間の取調べは内規で禁止されているので、食事休憩などもあり、連続で取調べられるのは3時間程度だ。夕食の時間(午後5時頃)には、その日の取調べは終わる。

 しかし、家には帰してもらえない。当然の成り行きとして、警察署内にある留置場……いわゆる“ブタ箱”にブチ込まれるのだ。

 留置場に入る前には、変なものを留置場に持ち込まないよう、身体検査が行われる。この身体検査の方法も警察署によってやり方が違うが、ヒドい警察署では完全に全裸にさせられる。拘置所と違い、一応、マントのような物を羽織らせてもらえるらしいが、その中はスッポンポンだ。

 もっとも昨今、そこまでする警察署は少なく、一番多いのはパンツ一丁にされるケースである。留置場を管理する「担当さん」と呼ばれる警察官数人に囲まれ、パンツ一丁になった状態で、余計な物を持っていないか確認される。この時、担当さんの1人がスキを見つけて、パンツの中もしっかり覗かれてしまうので覚悟しておこう。

◆犯罪者の巣窟?留置場の異様な空間

 ほぼ全裸の身体検査を受けた後、所持品はほとんど全て警察預かり(“領置”という)になる。衣服も規制が厳しく、ボタンのついた服、ベルトのあるズボンなど、普通のサラリーマが着ているスーツでは留置場に入場できない。留置場内で着られるのは、ジャージがスウェットの上下のような物だけだ。

 着る服がない場合、警察は上着から下着、靴下に至るまで、タダで衣装を貸してくれる。履物も靴は領置され、その代りに番号の書かれたサンダルを履くことを強要される。そして、

「今からオマエのことは、そのサンダルに書かれた番号で呼ぶから」

 と告げられる。

 留置場内の部屋は、昔は「房」と呼ばれていたが、今は「居室」という。ただ呼び名が変わっただけで、実態はそれほど変わりはない。鉄格子の入った檻で、家具の一切ない部屋である。収容されている被疑者の数が多かったり、特殊な事情がない限り、最初は複数の被疑者と一緒に生活する“雑居”に入れられる。

 留置場の居室の入れられる前には、担当さんから「他の被疑者に名前や罪状は話さないように…」と釘を刺されることもある。しかし、留置場にブチ込まれた同士で交わされる会話のネタなんて、

「何で捕まったの?」

 という質問から始まるのが普通だ。また、そういう会話をしているのを担当さんが見つけたとしても、それが咎められることは滅多にない。

 ただ、留置場の場合、基本的に入れ替わりは頻繁で、部屋を支配するボスのような奴はいない。また、妙な連帯感がある。普通に社会人としてのコミュニケーション能力があれば、変ないじめを受けることはないだろう。

 とはいえ、留置場内にいるのは刑事事件の容疑をうけて身柄を拘束されている被疑者ばかりだ。本当に罪を犯している人間も少なくない。留置場内は24時間警察官が監視している世界なので、むやみにビビる必要はないが、あまりに日常とはかけ離れた空間に呆然としてしまうかもしれない。

◆そもそも「逮捕」とはどういう意味なのか?

 朝はいつもと同じように会社や学校に通うつもりで家を出たら、気づいてみたら警察の留置場にブチ込まれていた……初めて逮捕を体験した人は、留置場の居室内でそんな自分の境遇に呆然自失するのが普通である。問題はそんなブタ箱にいつまで閉じ込められてしまうか?という点だ。

 被疑者に対して逮捕状を突きつけて、身柄を拘束する“通常逮捕”の場合は、逮捕状を執行した瞬間から、実際に犯罪を犯した犯人を逮捕する“現行犯逮捕”だと、身柄を拘束して

「○時○分 逮捕!」

 と、宣言した時から、ともに48時間以内に事件を検察庁へ送検しなければならない。事件が検察に送られると、今度はそれを受理した検事は24時間以内に、被疑者の身柄の措置を決断しなければならない。それは、

・起訴か不起訴かを決定する

・裁判所に「勾留請求」をして、捜査を継続する

 という選択だ。

 検事がどちらの選択をしたとしても、“逮捕による身柄の拘束”というのは、最長72時間で終わり。それ以上の時間、被疑者の身柄を拘束しておこうと思ったら、今度は「勾留」という手続きをしなければならないのだ。

 次回は検事調べと、勾留質問はどんなものなのかをお届けします。

<文/ごとうさとき>

【ごとうさとき】

フリーライター。’12年にある事件に巻き込まれ、逮捕されるが何とか不起訴となって釈放される。釈放後あらためて刑事手続を勉強し、取材・調査も行う。著書『逮捕されたらこうなります!』、『痴漢に間違われたらこうなります!』(ともに自由国民社 監修者・弁護士/坂根真也)が発売中

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