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PTA、ルーツは戦前の「母の会」 矛盾に満ちた巨大組織

6/9(金) 7:00配信

Book Bang

 PTAという組織は、一種の圧力団体として、戯画的に受け止められてきたことは否定できない。「子どもに見せたくない番組」のアンケート結果などが、面白おかしくメディアで報道されていた記憶も新しい。子どもを学校に通わせている保護者にとっては、決して素通りできない団体である。子の教育とは関係ない活動に、保護者が駆り出される。私は保護者が異なる環境で育った経験があるが地域差を考慮しても、負担がいちばん軽かったのは、父子家庭。母親の奉仕が期待されていた。子どもの目から見ても、ジェンダー差が著しかった。

 この巨大組織は矛盾に満ちている。任意加入の民間団体であるが、実質的に入会は強制である。全国会員数、およそ850万人。「お母さんの活動」というイメージが強いが、その上部組織、公益社団法人「日本PTA全国協議会」の役員は、全て男性である。

 本書は、著者が実際に、子の通う公立小のPTA活動に関わったことをきっかけに書かれた。戦後、GHQの指導によって、民主化政策のひとつとして取り入れられた組織がPTAである。本来、子どもたちの福祉増進のための組織であったはずだが、本家アメリカのPTAとは異なる発展を遂げていった。PTA的組織の前身となったのは、戦前からあった「母の会」である。母親の奉仕と修養を目的とした会であった。現在のPTA組織が、保護者奉仕を基本にしている活動が多いのも、「母の会」的系譜と思想が、断絶に至らなかったからだ。

 共同体のベースとしての公立小学校。基本的に小学区制で運営されているため、学校コミュニティは地域コミュニティとほぼ同一の役割を果たしている。そもそも、「地域」とは何なのか。コミュニタリアニズムは、戦中の相互監視システムとなにが違うのか。保護者は、子を人質に取られながら、国家装置に動員されている。本書のタイトルから連想するこの構図は、決して妄想の類ではない。

[レビュアー]西田藍(アイドル/ライター)

新潮社 週刊新潮 2017年6月8日号 掲載

新潮社

最終更新:6/9(金) 7:00
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