ここから本文です

【テレビの開拓者たち / 白倉伸一郎】石ノ森章太郎への思いも原動力に

6/10(土) 14:00配信

ザテレビジョン

第1作「仮面ライダークウガ」('00~'01年テレビ朝日系)から10作目の「仮面ライダーディケイド」('09年テレビ朝日系)までの“平成ライダー”シリーズをはじめ、「仮面ライダー」のテレビ版や劇場版を数多くプロデュース。現在放送中の「仮面ライダーエグゼイド」(テレビ朝日系)に至るまで、45年にも及ぶ「仮面ライダー」の歴史に多大な功績を残してきた白倉伸一郎氏。東映のプロデューサーとして、他にも“スーパー戦隊”シリーズなどを手掛ける彼は、どんな思いを抱きながら、これらの特撮ヒーロー作品を作り出しているのだろうか。

【写真を見る】映画「劇場版 仮面ライダーエグゼイド/宇宙戦隊キュウレンジャー THE MOVIE」(仮)は8月5日(土)公開!

■ プロデューサーはバランスよく幅広い知識を持っていないということに気付きました

──まずはこの世界を志したきっかけからお聞かせください。

「学生時代、細野不二彦さんが描かれた『あどりぶシネ倶楽部』という漫画に、ものすごく影響を受けまして。大学の8ミリ映画同好会の話なんですけど、プロデューサーの片桐という登場人物がいるんですね。その片桐が大好きで、漫画を読んでいるうちに、『プロデューサーって、テレビ局やスポンサーがクリエーターに対して無理難題を言ってくるのを、毅然として守るのが仕事なんだ』と勝手に思い込んでしまって。自分もこんな風に、クリエーターの夢と希望を守る仕事に就きたいと思ったんです。だから東映の面接を受けたときにも、『制作の現場とその周りの関係者たちとの間に立って、政治的な折衝を行う人間が必要だ』とか青臭い御託を並べ立てたわけですよ。今思うと、こんな僕を受け入れてくれた東映という会社は、本当に度量が広いなと(笑)」

──実際、東映に入社されてみて、いかがでしたか?

「まず思ったのは、クリエーターにテレビ局やスポンサーが無茶を言ってくる、なんて対立構図は存在しないということ(笑)。それと、世の中にはすごい人がいっぱいいるんだなということですね。監督や脚本家の方々はもちろん、会社の中にも、僕には想像もつかないような発想ができる人がたくさんいて。理屈先行で入社してきた自分は、この先、何ができるんだろうと愕然としましたね。でも、そんなすごい人たちと接していくうちに、自分が彼らと肩を並べて仕事できるようになるためには、バランスよく幅広い知識を持っていないといけないんだということに気が付いて。ものづくりをする人なら、数学は5だけど国語は1、みたいなタイプでもかまわない。その点、自分はプロデューサーなので、オール5は取れなくてもオール3くらいは取れるようにしておこう、と」

■ 仮面ライダーは、どこか“異形”の存在であるべきなんでしょうね

──そんな中、自分はプロデューサーだと初めて自覚できたのは、いつごろですか。

「入社半年くらいで『真・仮面ライダー 序章』('92年東映ビデオ)という、仮面ライダー20周年のビデオ作品に携わることになって。これが初仕事で、上司の吉川進(当時・テレビ第二営業部長)に連れられて、原作者の石ノ森章太郎先生にごあいさつにうかがったんです。そのとき、石ノ森先生の企画書を読んで『これはおかしいです』とダメ出ししちゃったんですよ。仮面ライダーの生みの親に向かって、『そもそも仮面ライダーとは…』って、初対面の若造が(笑)。すると先生から『君の思うようにやりなさい』とお墨付きをいただいて。こっちはもう天下を取ったみたいな気分で、『俺もこれでプロデューサーだ!』と思ったんですが…、それは全くの勘違いでね(笑)。石ノ森先生は、僕のことを認めたんじゃなく、『仮面ライダー』を見て育ってきた若い世代の意見も聞いておこう、と思われただけなんですよ、今にして思えば。そして実際、出来上がった作品は自分の中では悔いが残るものになってしまって…。やっぱり理屈では作品は作れないんだなということを痛感しました」

──その後、“平成ライダー”シリーズをプロデュースし、「仮面ライダー」と深く関わっていくことになりますが。

「今話したような恥ずかしい経験があるので、『仮面ライダー』を作るときは疎かにできないし、死ぬ気でやらないと石ノ森先生に申し訳が立たない。それは本当に覚悟を持って臨んでいます」

――それはつまり、石ノ森章太郎先生の遺志を継ぐ、ということですか?

「もちろん、その表現は間違いではないんですが、もう少し正確に言うと、石ノ森先生の世界観を尊重しながらも、そこに固執せず、かつ自分の独りよがりでもない…要は“普遍的な価値”を持った仮面ライダーを作る、ということですね。仮面ライダーは歴代いろんな作品がありますが、一つ言えるのは、作り手個人の“僕が考えた仮面ライダー”になっちゃいけないんです。その意味では、『真・仮面ライダー 序章』は、“白倉伸一郎が考えた仮面ライダー”だったんですよね」

──白倉さんは、近年の「仮面ライダー」シリーズを、どんな風にご覧になっているのでしょうか?

「東映には、仮面ライダーと双璧をなす“スーパー戦隊”というシリーズがあって。変身ポーズが決まっているとか、必殺技をコールしながら攻撃するとか、そういう、かつて仮面ライダーで展開していたような“お約束”の要素を全て受け継いで、現在まで連綿と続いている。ですから今のライダーは、スーパー戦隊と対照的に、お約束は極力排除しなくちゃいけないわけです。今のスーパー戦隊は、“お約束”の様式美みたいなものが世に受け入れられていて、作り方のノウハウは出来上がっている。ところが平成ライダーでは、まだそのノウハウが確立できてないんです。『これぞ平成ライダー!』という“お約束”がない分、シリーズごとに違う世界観でやるしかないところはありますね」

──でもだからこそ、作品ごとに新鮮な驚きがありますよね。ライダーのデザインも毎回斬新で。どんなに奇抜なデザインでも、放送が始まって何話か見ていくうちに、かっこよく見えてくる、という(笑)。

「だんだん分かってきたのが、仮面ライダーに関しては、パッと見た瞬間に全員が『かっこいい!』と思うようなデザインはよくない。つまり、ヒットしない(笑)。むしろ変テコな方がいいんです。そう考えると、最初の仮面ライダー1号・2号だって、バッタがモチーフじゃないですか。子供に好きなもののアンケートをとってもバッタが上位に来ることなんて、当時だってなかったと思うんです(笑)。そういう、あさっての方向から弾が飛んでくるものの方が、子供たちの想像も広がる。やはり仮面ライダーは、どこか“異形”の存在であるべきなんでしょうね」

■ 誰も見たことのない新しい特撮ヒーロー作品を開発することも僕らの大切な義務

──現在は「仮面ライダーアマゾンズ」シリーズ(シーズン1='16年、シーズン2='17年/Amazonプライム・ビデオ)も手掛けられていますが、ウェブ配信の作品を作ったことによって、今後につながる発見や気付きはありましたか?

「シーズン2を制作してみて、『まだ可能性があるぞ』ということが、ちょっと見えかけてきた感じですね。シーズン1のときは、テレビ版へのカウンターというか、同じ『仮面ライダー』の冠を使いながら、当時放送していた『仮面ライダーゴースト』('15~'16年テレビ朝日系)の視聴者が、全くの別物として楽しめる作品を目指していたんです。でもシーズン2は、『エグゼイド』のファンのことは、あまり意識していない。それより重きを置いているのは、今までのどの仮面ライダーとも違う、新しい作り方を目指そうと。極論を言えば、“正義が悪を倒す”という形にも、もはやこだわらなくていいんじゃないか、とかね。古今東西のヒーローものは、“正義が悪を倒す”というゴール地点は決まっていて、そのゴールに向かう道のりの部分を、手を変え品を変え工夫しているわけですけど、一方では、その決められたゴールがストーリーを作っていく上での安易な“逃げ道”になってしまうこともある。新しい仮面ライダーを作るには、まずその逃げ道を断たないとダメなんじゃないかと」

──では白倉さんは、仮面ライダーとは違う、そしてスーパー戦隊とも違う、全く新しいヒーロー作品を作りたいという思いも…。

「もちろんあります! “仮面ライダー45周年”“スーパー戦隊40作”と言うと聞こえはいいけど、悪い言い方をすると、過去の遺産ですからね。もちろん、これまで先達が築き上げてきたものを継承していくことは大事です。ただ、せっかくヒーロー番組を作れる環境にいるんだから、それを十二分に生かして、“新商品”、つまり、新しい今まで誰も見たことのない特撮ヒーロー作品を開発することも、僕らの大切な義務だと思うんです。常に新しい企画は考えていて、実際に今、具体的に温めている企画もあります。近いうちにぜひ実現させたいですね」

最終更新:6/10(土) 23:31
ザテレビジョン

記事提供社からのご案内(外部サイト)