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日本は敵地反撃能力を持つべきではないのか

6/10(土) 12:10配信

Wedge

 小野寺五典・元防衛相がゴールデンウィーク中、ワシントンに出張、自民党安保調査会の提言を説明して、敵の基地に反撃を行う攻撃能力を日本が持つべきとしたことに対し、米カーネギー平和財団のジェームズ・ショフとデービッド・ソンが、5月5日付けDiplomat誌ウェブサイト掲載の論説で慎重な対応を呼びかけています。要旨は次の通りです。

 小野寺元防衛相が連休中、ワシントンに来訪し、自民党の安保調査会は次期中期防(2019-2023年)に向けて、敵国基地を攻撃する能力を戦後初めて備えるべきことも提言する旨を説明した。これが実現すれば、安倍晋三総理にとって重要な一歩になり得、また北朝鮮に対して圧力をかける手段を求めている米国の関係者にとっても朗報となる。しかし、そのようなことは、費用に見合う効果を持ち、周辺諸国との関係でも摩擦を呼ばないものであるだろうか?

 この件は、北朝鮮のことだけでなく、アジア太平洋の安全保障確保における日本の役割全体の中で考えるべきである。日米安保体制の下では、攻撃は米国、防御は日本という、役割分担が行われてきた。既に1950年代から、自衛のためなら敵地を攻撃する能力を保有することは合憲だとする政治家・官僚はいたが、政府の方針とはならなかった。しかし、今、北朝鮮のミサイルの性能が向上し、日米で開発中のミサイル防衛(MD)の能力を凌駕することが明らかとなったので、この議論が蒸し返されているのである。

 しかし、日本国内の反対派は、そのようなことをすれば周辺地域の緊張を高めるばかりか、日本の情報・偵察・監視能力では、北朝鮮のミサイル移動式発射台、固形燃料ミサイル、潜水艦発射ミサイル等に対処するには不十分で、敵基地をたたいても十分な効果は発揮できないとする。また北朝鮮のトンネル網は充実しており、その破壊に要する費用は莫大なものとなる。

 日本が攻撃能力を獲得すれば、北朝鮮以外の事案についても、米国との間の安保協力のメニューは増えるかもしれない。それは、東シナ海における抑止力を向上させることにもなるだろう。しかし、それでも、日本による外国基地攻撃能力の取得が周辺諸国に警戒心を呼び起こすこと、そして米軍が既に保有している攻撃能力とダブることを考えると、日本には別の方面に限られた資材を向けてほしい。それはMD、宇宙、サイバー、そして海上交通の安全確保である。

出典:James L. Schoff & David Song, ‘Should America Share the 'Spear' With Japan?’(Diplomat, May 5, 2017)

 筆者のうち、Schoffはカーネギー財団でこの数年日本を担当している人物で、もう一名のSongは経歴不明ですが、名前から判断して若手の韓国系専門家でしょう。

 同盟関係においては、相手の冒険に引きずり込まれる危険性と相手に裏切られる危険性の双方が常に存在しており、それは日米関係においても同様です。トランプ政権の出現と北朝鮮の核ミサイル問題の深刻化は、後者の懸念を日本人に持たせており、独自防衛力整備の必要を指摘する声はこれから益々強くなり得ます。

 トランプ政権の日本への出方は、未だ方向が不確定です。中国は米中首脳会談を契機に、経済的利益を米国にちらつかせるとともに北朝鮮問題の処理を引き受けて、トランプの出方を和らげています。中国への強硬な対応を主張しているバノン首席戦略官及びナヴァロ前国家通商会議議長の力が削られたこともそれを助長しています。ロス商務長官は5月4日、米国の貿易赤字増加で日本とメキシコのみを名指しで非難しました。

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最終更新:6/10(土) 12:10
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