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最大5G超。過酷すぎるブレーキングで今年のカナダGPは大変なことに

6/10(土) 18:22配信

webスポルティーバ

 カナダ第2の都市モントリオールを流れるセントローレンス川に浮かぶノートルダム島は、1967年のモントリオール万博の会場となった人工の島であり、1976年のモントリオール五輪ではボート競技の会場として使われた水路も残る。今は公営カジノと公園になっているこの島が、年に一度だけジル・ビルヌーブ・サーキットとしてF1カナダGPの舞台になる。

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 緑と水に囲まれた美しいサーキットだが、シーズン全20戦の中でもっともブレーキに厳しいという牙を持つことでも知られている。マシンが高速化した2017年は、これがさらに鋭い牙となりそうだ。

「ここは長いストレートの終わりにハードブレーキングゾーンがあり、その組み合わせでできているから、もっともブレーキにタフなサーキットのひとつなんだ」(ニコ・ヒュルケンベルグ/ルノー)

 一般的に、ブレーキに厳しいサーキットというのはシンガポールやアブダビなど、ハードブレーキングそのものよりも冷却が十分にできないことに理由がある。ブレーキング時に1000度を超すカーボンのブレーキディスクとパッド、キャリパーを十分に冷やすことができなくなるからだ。

 しかしこのカナダは、長いストレートで十分に冷却ができる。ブレーキ時間は1周で計11.7秒ほどで、ラップタイムの17~19%程度でしかない(逆にスロットル全開率は60%ほど)。それでもブレーキが厳しいというのは、それ以上にハードなブレーキングが多いからだ。

 1周1分10秒ほどの間に、減速Gが4.5Gを超えるようなハードブレーキングが6回もある。ちなみに、乗用車で急ブレーキをかけたときの減速Gはせいぜい1G程度。つまり、体重60kgの人なら後ろから60kgの力で押されるくらいの衝撃だが、ジル・ビルヌーブ・サーキットでは1周70秒の間にその4.5倍以上の衝撃が6回も加わることになるのだ。

 フェラーリが使うブレーキメーカー「ブレンボ」のデータによると、もっともハードなのは最終シケインへのブレーキング。時速322km/hから時速148km/hまでわずか1.6秒(距離にして49m)で減速し、その間の減速Gは4.7G。ドライバーは161kgもの力でブレーキペダルを踏みつけるという。もうひとつのオーバーテイクポイントであるヘアピン(ターン10)のブレーキングでも、時速292km/hから時速68km/hまで2.44秒(距離63m)で、減速Gは4.5G。

 これらは2016年のデータであり、マシンのダウンフォース量と速さ、タイヤのグリップレベルが格段に向上した2017年は、さらにブレーキングは急激なものになると予想されている。あるシミュレーションによれば、最終シケインの減速Gは5.6Gにも達し、1周平均減速Gは昨年4.3Gだったのが、今季は5G超えもありそうだという。

 全70周の決勝でドライバーがブレーキペダルを踏む踏力は、総計72.5トンにも及ぶ。減速エネルギーは179kWhで、これは1家庭の電気消費量の62時間分に相当する。

 マシンの高速化にともなって、今年ブレンボのブレーキディスクは厚みが28mmから32mmに、そして冷却風を通す穴は1200個から1400個に増やされている。それでも温度と摩耗に気をつけていなければ、カナダではブレーキに何が起こるかわからない。

「公道サーキットというのは壁が近いし、ランオフエリアがなくてトリッキーなものだけど、ここは縁石を使うところも多いし、路面のグリップが低い。しかも高速だから、低ダウンフォース仕様で走らなければならない。そういう要素のコンビネーションが、このレースを難しくしているんだ。だからこそ楽しいし、僕はチャレンジが好きだから楽しみだけどね!」

 ダニエル・リカルド(レッドブル)がそう語るように、カナダGPが荒れることの多い理由のひとつが、このサーキットの難しさにある。

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