ここから本文です

ドラマ『小さな巨人』の裏テーマは“人事”か? 結末の鍵を握る「警察の中の警察」

6/11(日) 8:16配信

otoCoto

ドラマ『小さな巨人』(TBS系、日曜夜9時)が最終回まであと2話となり、大詰めを迎えている。

『小さな巨人』は、挫折を味わったエリート刑事・香坂(長谷川博己)が自分の正義と信念を貫こうとして、警察という得体のしれない巨大組織の中で悪戦苦闘する物語だ。

前半の芝署編では私企業と癒着していた狡猾な三笠署長(春風亭昇太)の悪事を暴き、後半の豊洲署編では実在の事件をモチーフにした悪徳学園の陰謀に迫る。やや強引な展開も見られるが、共通のスタッフも多い大ヒットドラマ『半沢直樹』ばりの、ダイナミックな演出とキャスト陣の熱演で視聴者をここまで引っ張ってきた。

全編を通して主人公たちに立ちはだかるのが、捜査一課長、小野田義信(香川照之)。

高卒のノンキャリ叩き上げながら、現場の最高指揮官でもある捜査一課長に上り詰めた小野田は、香坂たちの前で平然と「癒着のどこが悪い?」と言い放つ人物。この先、香坂と小野田がどのような決着をつけるのかに注目が集まっている。

そしてもう一人、最終回に向けて鍵を握っていると思われるのが、警視庁警務部監察官の柳沢肇(手塚とおる)だ。

警務部の監察官とは、警察不祥事の捜査などを行う、いわば「警察の中の警察」。
第1話では不祥事(飲酒した状態での職務質問)を起こした香坂に「君は死刑だ」と冷酷に告げ、所轄への左遷を決定した。警務部の監察官が人事に与える影響は大きい。この柳沢肇などの活躍が示すとおり、『小さな巨人』の裏テーマは、「人事」である。

小野田は権謀術策を駆使して捜査一課長へと出世した。香坂も同僚の山田(岡田将生)も、それぞれの事情で捜査一課長への出世を目論んでいる。ただし、警察は昇任試験に受かれば出世できるというわけではない。上司の覚えがめでたくなければ出世できないのだ。

香坂が三笠に頭が上がらなかったのも、小野田が元捜査一課長の富永(梅沢富美男)とのつながりを大切にするのも、出世争いで世話になった上司だからである。つまり、警察という組織は人事によって支配されていると言っていい。このあたりは大企業と非常によく似ている。いや、それ以上かもしれない。大企業で人事に悩まされているサラリーマンほど『小さな巨人』のストーリーが身につまされるのではないだろうか。

三島祐里(芳根京子)は人事課の職員だったからこそ、警察という組織の中のリアルを垣間見ることができた。そして、警察内部の不祥事に目を光らせ、人事に大きく関わる柳沢監察官の動向が注目される……というわけだ。

警察小説の名手・横山秀夫の短編小説集『陰の季節』(文春文庫)では、架空の警察本部D県警の人事を担当する警務部が舞台となっている。「地の声」というエピソードでは、新堂という警務部監察課監察官が主人公で、新堂は『小さな巨人』の柳沢とほぼ同じ役職だと考えていい。『陰の季節』の登場人物たちは、警察内部で起こった不祥事を内部で処理をしようと奔走する。彼らは警察という組織の掟を遵守し、組織を守るために行動する。『陰の季節』には、このような一文がある。

「警察組織は、他のどの組織とも違う、完璧なムラ社会だ。警察学校の門を潜った瞬間に産声を上げ、組織とともに生き、死ぬまで組織と縁が切れない」

一方、小野田は香坂に「癒着のどこが悪い?」と言い放った後、こう続けている。

「警察組織の中には、皆が知っていて知らないふりをしていることがたくさんある。だから組織が成り立っている。絶対に触れてはならんものがここにはあるんだ。」

1/2ページ

最終更新:6/11(日) 12:02
otoCoto