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【開発秘話】年間販売目標を5日で達成したオートバックスの急発進防止装置『ペダルの見張り番』

6/11(日) 8:10配信

@DIME

 アクセルとブレーキの踏み間違いによる急発進が原因の事故が、社会問題化している。このような中、クルマの急発進を防止するとして注目を集めているのが、オートバックスセブンの『ペダルの見張り番』である。

【写真】年間販売目標を5日で達成したオートバックスの急発進防止装置『ペダルの見張り番』

 2016年12月5日に発売された『パダルの見張り番』は、全国に500店舗以上あるカー用品店『オートバックス』でのみ売られている急発進防止装置。高齢者や運転に不慣れな人たちによる、アクセルとブレーキの踏み間違いによって起こる重大事故を未然に防ぐ。本体、取り付けハーネス、取り付け工賃込みで39,999円(税別)で、100車種以上の国産車に対応。期間限定で、購入者に保険付帯サービスもつけている。年間1000個を目標に販売を開始したところ、発売開始5日目で目標を達成。現在でも月1000個近いペースで売れ続けている。

■クルマの急発進を抑制

『ペダルの見張り番』は、OAC(オーバーアクセルキャンセラー)とBOS(ブレーキオーバーライドシステム)という2つの機能を搭載している。

 OACは踏み間違いを防止する機能。停止時と徐行時にアクセルが急激に踏み込まれ、クルマの車速信号とブレーキ信号の異常を検知した場合、急発進しかけたクルマを強制的にクリープ現象の状態にしてしまう。制御のレベルは、ドライバーが3段階で設定でき、作動時にはブザーで警報音を鳴らす。

 一方BOSは、アクセルとブレーキが同時に踏まれた場合に必ずブレーキ動作を優先させるというもので、作動時はブザーで警報を鳴らす。

 企画を担当した松井亜希子さん(TOB・WS商品部ホイール・スポーツ商品グループ バイヤー)は、「同時に踏むことなどあるの? と思うかもしれませんが、ペダルとペダルの間隔が狭い軽自動車を、足の大きな男性が運転したときや、女性が冬場にムートンブーツを履いて運転したときなどは、ブレーキだけを踏んだつもりでもアクセルに足がかかっていることがあります。また、高齢者の中には、左足でブレーキを踏む人がおり、アクセルとブレーキを一緒に踏んでしまうことがあります」と話す。ブレーキを踏んでいてもアクセルに足がかかっていればクルマは進むので、BOSは搭載されることになった。

 また、松井さんとともに企画に携わった小林協太さん(TOB・WS商品部ホイール・スポーツ商品グループ バイヤー)によれば、『ペダルの見張り番』はアクセルを電子制御するクルマが対象で、ワイヤーで機械的に制御するクルマには装着できない。取り付けは、アクセルやブレーキの信号線に接続するだけだという。

■スロットルコントローラーの機能を生かす

 商品が企画されたのは2015年末のこと。アクセルとブレーキの踏み間違いが原因の事故が徐々に目立ち始めたことがきっかけだった。松井さんは、「アクセルとブレーキの踏み間違いを防止できる商品があったらいいね、といった雑談レベルの話から開発が始まりました」と振り返る。

 2016年に入り早速、開発に動き始める。この時点では、後付けできる急発進防止装置はなく、方式も白紙の状態。まずは協力先を見つけるべく、5社近くに声をかけた。

 しかし各社からは、色よい返事が得られなかった。その主な理由は、カメラやセンサーが必要で安全性を担保することが大変なことや、売れ行きが見込めなかったことなどだった。それに、カメラやセンサーを使うとした場合、開発にはコストと時間がかかり、価格も高くなる。メーカーオプションやディーラーオプションより高くなることは、何としても避けたいところであった。

 なかなか協力先が見つからなかったが、2016年春に、カー用品メーカーのミラリードが協力してくれることになった。ミラリードに協力を依頼することにしたのは、スロットルコントローラーの機能を生かせば比較的安価に開発できることを提案されたからであった。

 スロットルコントローラーとは、アクセルの働きを制御するためのパーツで、スポーツ走行をしたい人や燃費重視の走行をしたい人が装着する。特徴は、軽く踏んだだけでスロットル(エンジンに送る空気の量を調整する弁)が大きく開くこと。これとは逆に、アクセルを強く踏み込んだときにスロットルを閉じる制御にすれば、アクセルとブレーキの踏み間違いによる急発進は抑制できるというわけである。

 既存のスロットルコントーラーと制御が異なるだけで、開発そのものに困難な点はなかった。しかし、調整で頭を悩ませたという。例えば、OACが作動する徐行のスピードは10km/h未満としたが、これが適切かどうかは、ミラリードとともに検討を重ねた。「アクセルとブレーキの踏み間違いによる事故は、停止状態やバックするときに起きているケースが多いです。20km/hや30km/hで作動させると、高速道路で合流し追い越しをかけたいときなどは危険。スピードに幅を持たせてしまうと、かえってリスクがありました」と小林さん。制御レベルの強さも、抑制感度の設定が適切でないと急な坂道などが登れない恐れがあったので、実際に試乗して感触を確かめ、問題があればプログラムを書き換えて検証を繰り返した。

■年間1000個の目標を5日で達成

 そして、どの程度売れるかの予測も難しかった。スロットルコントローラーが、月10個程度売れればヒットといえるものだったことに加え、後付けできる急発進防止装置がなかったためである。

 結局、採算面などから販売目標は年間1000個としたが、発売してみると、5日後の2016年12月10日には1000個を売り切ってしまった。これは同社にとって想定外の出来事。「次に出来上がるまで2か月かかり、モノがない状況が続きました。4月上旬になってようやく、大量に入荷するようになり、品薄感が解消に向かいました」と小林さんは話す。

 想定以上の売れ方をした背景には、発売前月の11月にアクセルとブレーキの踏み間違いによる事故が多発し、マスコミを賑わせたことがあった。同社では、商品担当の役員だけでなく社長や他の役員も『ペダルの見張り番』を装着したクルマに試乗していたことから、事故の多発を受け役員たちの間で、「『ペダルの見張り番』はどうした?」と話題になり、発売を少しでも早めることにした。

■警察や自治体も注目

『ペダルの見張り番』は購入・取り付け後、店舗スタッフがテストを行ない、その後ユーザーにもテストしてもらうという。それは、人によってペダルの踏み方は様々であり、効果を体感してもらわないと商品の実力や価値が理解されにくいためであった。また、店舗によっては独自に講習会を実施し、体感する場を設けているが、その一方で警察や地方自治体から、高齢者講習の際に紹介したいといった引き合いも来ているという。

 ユーザーの8割は65歳以上の高齢者。ただ、ユーザーが自らの意志で購入しているというよりも、子どもが高齢の親のクルマに装着させるケースが目立つという。

★★★取材からわかった『ペダルの見張り番』のヒット要因3★★★

1.タイミングがよかった

 アクセルとブレーキの踏み間違いによる事故が多発し、報道が相次いでいた中で発売。これ以上ないタイミングで発売されたことが奏功した。

2.社会が待ち望んでいた

 社会問題となっていた、アクセルとブレーキの踏み間違いによる事故を解決する手段として登場。社会が待ち望んでいたため、想定以上の売れ行きとなった。

3.親孝行に使えた

 高齢者の運転は何かと心配だが、自分の親だとなおさらだろう。老親が運転中に事故を起こさないよう、子どもが親を思って購入するケースが目立つことから、親孝行の一環として活用できた面があった。

 高齢者は加齢に伴い、判断力や身体能力が低下し、これに伴い運転技術も低下する。しかし、運転歴が長いだけに運転に自信を持っており、衰えが自覚できない傾向がある。衰えを自覚するのは難しい上に抵抗もあるが、運転を続けないとならない高齢者は、「転ばぬ先の杖」として、『ペダルの見張り番』のような安全対策品を活用してもらいたいものである。

■文/大沢裕司

@DIME編集部

最終更新:6/11(日) 8:10
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