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「サッカーのトレーニングでランニングは無駄」 Jリーグにも上陸。欧州サッカーを変えた新理論

6/12(月) 19:31配信

footballista

「サッカーのピリオダイゼーション理論」考案者レイモンド・フェルハイエン独占インタビュー

最先端のコンディショニング理論としてヨーロッパのトップレベルに急速に広まっている「サッカーのピリオダイゼーション理論」。サッカーのトレーニングを大きく変えつつある新概念とは何なのか? その考案者であるレイモンド・フェルハイエン氏――ヒディンクやライカールトを陰から支えたオランダの名コーチだ――に昨年12月に開催された「ワールドフットボールアカデミー・ジャパン」の講習会後に話を聞いた。



インタビュー・文 浅野賀一(footballista編集長)



選手時代に「サッカーではない」トレーニングを
全員横並びでやることに強い違和感を覚えていた


――日本でも最近「ピリオダイゼーション」という言葉がよく聞かれるようになっています。ただ、私自身も勘違いをしていたのですが、「戦術的ピリオダイゼーション」とレイモンドさんが提唱する「サッカーのピリオダイゼーション」は別のものとのことでした。まずはその違いから教えてください。

「戦術的ピリオダイゼーションというのはポルトガルを発祥とするものです。他の要素も少しは含まれていますが、基本的には戦術に限定するピリオダイゼーションという認識です。一方で、私が話しているサッカーのピリオダイゼーションというのは、すべてのトレーニングに関するものになります。それが違いです」


――ピリオダイゼーションと聞いた時に私が真っ先にイメージしたのは、ボールを使ったフィジカルトレーニング――今までは分離されていたフィジカルトレーニングと戦術トレーニングを一体化し、戦術トレーニングの中でサッカーに必要なフィジカルを鍛える――のことでした。ヨーロッパでもトレンドとなっているメソッドですが、これはレイモンドさんが提唱した理論なのでしょうか?

「そうです。私が選手だった頃、コンディショントレーニングの時はボールを使わない、つまり『サッカーではない』トレーニングで、しかも全員が同じエクササイズをしなくてはいけないことに対して強い違和感を覚えていました。その理由は2つです。

 まず1つは、従来のコンディショントレーニングでは試合の中で必要となる動作とまったく違う動きをする点です。続けていけばそれ自体はうまくできるようになっていきますが、コンディショニングトレーニングがうまくこなせるようになることとサッカーが上達することは別だと感じていたのです。例えばランニング。当時は一定のペースでグルグルと同じところを走るだけでした。ただ、実際の試合ではスプリントして、回復してまたスプリントして、回復して……の繰り返しであり、その間には酸素を体に取り込んで回復していくという過程が必ずあります。ですが、一定のペースで走るエクササイズからはそうしたサイクルがすっぽりと抜け落ちてしまっている。だから、おかしいと考えたわけです。

 もう1つは、ゲーム中に各選手はそれぞれ異なる動きをしているにもかかわらず、トレーニングでは全員が同じメニューに取り組まなくてはならない点です。私は17歳の時、U-17オランダ代表でプレーしていたのですが、股関節のケガで選手を辞めなければいけなくなりました。それから大学に行って、実際に試合の中で各選手が行っているアクションは何か?という研究を始めました。その結果、DF、MF、FWは試合中まったく異なるアクションを行っていることがわかりました。ということは、コンディショントレーニングの時間よりもサッカーのトレーニングの時間、つまりゲーム形式のトレーニングを増やせば、DFは自身に求められるタスクをより長い時間トレーニングできますし、MF、FWについても同じです。個別の事情に合ったトレーニングをした方が、むしろコンディションの問題(ケガも含めて)は解決されるのではないかと考えたのです。

 その研究成果が認められ、25歳の時にオランダサッカー協会(KNVB)で仕事を始めました。そして10年かけてこの理論を発展させ、いろいろな場面に適用させていくことに着手しました。例えばワールドカップではどうするのか、EUROではどうするのか、あるいは女子サッカーではどうするのか、というように、様々な現場で自分の理論を試していきました。現場で実践して適応させていく中で、理論をさらに発展させることができました。常に理論をブラッシュアップし、それを現場に適用することを繰り返していったのです。

 それを10年間続けた後、2009年にワールドフットボールアカデミーという会社を設立して、今まで積み上げてきた理論を世界中でシェアしてくことを決めました。今では様々な国に支社(支部)があります。日本はもちろん、オーストラリア、UAE、南アフリカ、オランダ、ブラジル、アメリカに展開しています」


――これまでは日本もそうでしたが、サッカーのトレーニングは質より量、2部練習も当たり前というのが常識でした。短時間で質にこだわったトレーニングを導入するのは革新的ですが、それだけに現場の反発も大きかったのではないでしょうか。オランダ国内であなたの理論を導入するにあたり、現場にどうやって浸透させていったのでしょうか?

「いろいろと議論は起こりました。けれどそれは、反発が大きかったという意味ではありません。論理立てて説明すれば、確かに理にかなっていると感じてもらえました。ただ、本当に効果的かどうかというのは当然ながら最初の時点ではわかりませんでしたので、実践を通して証明していく必要はありました。

 一番大きな変化が起こったのは、(ヒディンク監督のフィジカルコーチとして帯同した)2002年の日韓ワールドカップの韓国代表の時でした。私のところに『どうやったらあんなにフィットネスの高いチームを作ることができるんだ?』という問い合わせがたくさんあったのです。

 さらにその後、バルセロナでライカールト監督のアシスタントをしていた05-06シーズンのチャンピオンズリーグで優勝しました。こうして、発展させてきた理論を実践の中で証明していくことができました。

 日本も同じで、現状ではトレーニングの量をこなせば上達するという考え方が根強く残っているそうですが、(ピリオダイゼーションの効果が)実践で証明されたケースもたくさんあるのではないかと思っています。例えば、2シーズン前に3冠を達成したガンバ大阪や昨年2冠に輝いた鹿島アントラーズ、J3で優勝した大分トリニータや昨年の大学サッカー選手権で優勝した筑波大学は、いずれもサッカーのピリオダイゼーション理論を取り入れたチームでした。日本でも講習会を通してこの理論が広まってきていますし、現場でも実証されてきていることを見てもらえれば、より積極的に導入してもらえるのではないかと考えています」


――ガンバ大阪や鹿島アントラーズがピリオダイゼーション理論を導入したという話は耳にしていましたが、具体的にどういった関わり方をされているのですか?

「自分が直接チームに関わっているのではなく、そのチームの指導者たちが私の講習会に来てくれました。そこでこの理論について学んでもらい、それを指導者たちが自分のチームに持ち帰って現場で実践しているということです。直接的な関わりは特にはありません。チームから私への質問があれば答えますが、指導者たちが自分たちなりの方法でこの理論を実践していくことが大事というのが私の考えです」

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最終更新:6/13(火) 11:01
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