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川島永嗣、苦境経て進化した守護神の決意。不確定要素多い守備陣、勝負所で頼れる最後の砦

6/12(月) 11:52配信

フットボールチャンネル

 13日、2018年ロシアW杯アジア最終予選イラク戦に臨む日本代表。気温35度超・湿度10%程度という過酷な環境で行われる試合に向けて着々と準備を進めているが、決して簡単な試合にはならないだろう。今回のハリルジャパンはDF陣に不確定要素が多く、経験豊富な守護神・川島永嗣に大きな期待がかかってくる。(取材・文:元川悦子【テヘラン】)

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●シリア戦で浮き彫りになった守備面の課題

 2018年ロシアW杯出場権獲得の大きな節目となる13日のイラク戦(テヘラン)まであとわずかとなった。日本代表は現地入りから3日が経過。11日もテヘラン郊外で17時過ぎからトレーニングを消化した。

 7日のシリア戦(東京)で右すねを打撲し、8~10日の練習を3日連続で欠席していた山口蛍(C大阪)もようやく復帰。別メニューでスピードを上げながらのランニングを行って心肺機能を高めた。

「ケガの方はまあ順調に来ているんであとは(ヴァイッド・ハリルホジッチ)監督がどう判断するかだと思うんで。(標高1500mと高いので)息が上がるというのは多少なりともあるけど、すぐ慣れると思います」と本人はプレーに支障がないことを強調した。右足内転筋痛の長友佑都(インテル)の方も全体練習に完全合流。遠征に帯同している24人全員が戦力となるメドが立ちつつある。

 気温35度超・湿度10%程度という過酷な環境への適応も、日に日に進んでいる印象だ。

「少し標高が高いですけど、少しずつ慣れている。暑さは変えられることじゃないんで、もうしょうがない」とチーム最年長守護神・川島永嗣(メス)も割り切ってイラク戦のピッチに立つ覚悟でいる。

 困難な環境の試合ということで、日本はまず手堅い守りから入るのが鉄則。イタリア・ウディネーゼに所属するイラク人初のセリエAプレーヤー、アリ・アドナンを筆頭に屈強な体躯を誇り、当たりや競り合いの強さを武器とする相手選手たちに自由を与えてしまえば、すぐさま失点を覚悟しなければならなくなる。

 シリア戦のように、後半立ち上がりの重要な時間帯に課題のリスタートから点を与えていたら、勝ち点3どころか、勝ち点1を確保するのも難しくなりかねない。

「新しい組み合わせ、新しい選手が入る中、自分たちにとって一番大切なのは、ミスをせず、スキを見せないこと。この前の試合では相手にスキを与えてしまう場面が何度もあった。失点シーンの前も3シーンくらい相手を抑えられずにシュートを打たれたりしているので、そういうところをまず詰めていかない」と川島は気を引き締める。

●数々の逆境を跳ね除けてきた川島

 シリア戦の失点がリスタートからだったことも改善すべき重要なポイントだ。

「イラクのストロングポイントもカウンターやセットプレー。自分たちがホントに集中を高めていかないといけない部分だと思います。それを防ぐために、自分たち自身で声をかけなければいけない。この暑さで集中力が途切れることもあるから、気づいた人が声をかけたりと状況に応じて対応することが必要だと思いますね」とベテランGKは守備陣のリーダーという自覚をこれまで以上に高め、最後尾からの声かけを強く意識していくつもりだ。

 それを徹底しなければ、したたかなイラクにチャンスを作られるのは必至。実際、昨年10月のホームゲーム(埼玉)でも、原口元気(ヘルタ・ベルリン)のゴールで1-0とリードしていた後半15分、酒井宏樹(マルセイユ)が与えたフリーキックをアブドゥルアミールに頭で決められ、同点に追いつかれている。

 この時、ペナルティエリア内で競り合いに勝ちきれなかった酒井高徳(ハンブルガーSV)は「あの試合は思い返す必要はない。アウェイとホームとは全然違いますし」と努めて前を向こうとしていたが、同様のシーンに直面したらまずマークを徹底し、GKが確実にシュートをブロックして、失点を回避することが肝要だ。そして8ヶ月前の一戦をベンチで見守った川島には「絶対に同じミスはしない」という確固たる決意があるはずである。

 仮に予期せぬ苦境が訪れたとしても、数々の逆境を跳ね除けてきた川島であれば、ブレることなく周りを鼓舞し続けられるに違いない。そのメンタルの強さは、昨季後半を過ごしたスコットランドのダンディー・ユナイテッド、フランスのメスでも実証されている。

 とりわけ、メスでは昨夏の契約当初、トマ・ディディヨンとダディ・オーバーハウザーという下部組織出身の若いGKの控えという立場から、諦めることなく出番をうかがい続け、最終的にフィリップ・ヒンシュベルガー監督の評価を覆すことに成功。

 チームの1部残留の原動力になった。そのタフさと粘り強さは日本代表でも発揮され、3月のUAE戦(アルアイン)から正守護神の座を奪回。ハリルホジッチ監督の信頼もガッチリとつかんでいる。

「代表というのはみんなが行きたい、プレーしたい、日の丸を背負いたいと思う場所。(ハリルホジッチ)監督は最高のものをチームに求めていると思うし、自分自身がその基準や監督の哲学に合わなければ呼ばれない。常に最高を求め続けなければ、そこに入る資格はない」と川島は常日頃から自らに言い聞かせるように語っている。

●「こういう試合は戦術とかだけじゃない」

 そのひたむきな姿勢はチームに間違いなく好影響を与えている。長谷部誠(フランクフルト)という絶対的キャプテンがケガで離脱している今、彼の思いも背負いながら、率先してチーム全体の意思統一を図れるのは、やはり34歳のベテラン守護神以外にいない。そう言っても過言ではないだろう。

 日本の最終ラインは今回も昌子源(鹿島)、あるいは槙野智章(浦和)というセンターバックとしては最終予選未経験の選手が入ることになる。吉田麻也(サウサンプトン)や長友のような経験豊富なDFがいるのは心強い要素だが、ちょっとしたラインコントロールのズレやギャップが生じる場面がないとは限らない。

 そんな時、最後の砦になるのがGKだ。不確定要素の多い最終ラインを最大限サポートし、無失点へと持っていくこと。それがイラク戦の川島に託されたもうひとつの重要な仕事と言える。

「こういう難しいゲームは試合の中で何ができるかが一番大事。いくら事前に話をしていても、ホントに厳しいアウェイの中で自分たちがしっかりと対応できるかだと思う。こういう試合は戦術とかだけじゃないし、どれだけ精神的な強さを見せられるかも重要になってくる」と彼が語気を強めるように、選手全員が戦況を見ながら臨機応変な対応を見せ、意思統一を崩すことなく戦えれば、日本は必ずいい方向に進むはず。

 チーム全体をポジティブな方向へ導くべく、川島には改めてパフォーマンスとリーダーシップの両面で力強い貢献をしてほしいものである。

(取材・文:元川悦子【テヘラン】)

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