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ドッド=フランク法改正案の下院通過

6/12(月) 15:23配信

NRI研究員の時事解説

2017年6月7日、米国の連邦議会下院は、いわゆる世界金融危機後に金融規制を強化するために制定された2010年ウォール街改革・消費者保護法(ドッド=フランク法、以下「DF法」)の諸規定を大幅に改正する2017年金融選択法案(Financial CHOICE Act of 2017, H.R. 10)を賛成233、反対186、棄権11で可決した。

この法案は、共和党のジェブ・ヘンサーリング下院金融サービス委員長が4月26日に提出したものである。同議員は以前からDF法の見直しに積極的であり、トランプ政権発足前の2016年9月にも、同名の金融選択法案の下院委員会通過を実現させた実績がある。

下院を通過した法案の主要な内容は、次の通りである。

1.整然清算権限(Orderly Liquidation Authority)を定めたDF法第2編及びそれに関連する諸規定の廃止

整然清算権限とは、破綻すれば金融システムの安定性に影響を及ぼすような金融機関の経営者がモラル・ハザードに陥らないよう金融機関の清算にあたっての公的資金注入を否定し、株主や債権者の負担による破綻処理と経営者の退陣を求める制度であり、財務長官の決定に基づいて連邦預金保険公社(FDIC)が破綻金融機関の管財人となって整然清算手続きを遂行するものとされている。この制度創設の狙いは、いわゆる「大きすぎて潰せない(too big to fail)」という問題を解消し、大規模な金融機関にも経営規律が有効に働くようにすることであった。

しかしトランプ政権は、DF法の整然清算手続きが、整然清算にあたって管理費用の支払いや財務長官に対して発行されるFDIC債の元利金の支払い及びFDICの権限行使に要する資金を賄うために整然清算基金(Orderly Liquidation Fund)を創設したことなどで、最終的に納税者の負担による金融機関の破綻処理を容認していると批判してきた。

こうした批判的な見方に同調する金融選択法案は、整然清算権限を廃止する一方で、金融規制当局による一定の関与を前提とした金融機関を対象とする破産手続を導入するとしている。新たな手続は、連邦倒産法典(Title 11, U.S. Code)の改正によって設けられ、連邦倒産法典に基づく他の手続と同様に、連邦倒産裁判所の監督の下で進められることになる。

また、金融選択法案は、金融安定監督評議会(FSOC)に与えられている金融システムの安定性に影響を及ぼすために連邦準備制度理事会(FRB)が監督すべきノンバンク金融会社を特定する権限やいわゆるシステム上重要な金融機関などを特定する権限を剥奪するとともに、FRBによる緊急融資権限に新たな制約を加えるとしている。

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