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いまの米国には「警官による銃撃に人種差別が潜んでいる」ことを示すデータが求められている

6/12(月) 8:30配信

WIRED.jp

警察官による射撃死亡事件990件を分析した調査結果が2017年2月に発表され、そこに潜む人種差別や偏見が浮き彫りになった。しかし、米国にはいまだ「警察官による銃撃死亡事件」に関する公的データがなく、今回の結果は氷山の一角に過ぎないという。

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米国では警察官の銃撃による死亡事件[関連記事]が頻繁に起きているが、こうした事件を追跡した全国的なデータはない。データが存在しないということは、このような事件に潜在する人種差別の問題に関する調査結果が、ほとんど上がってこないということだ。

世界で何が起こっているのか理解したいと考えたケンタッキー州ルイヴィル大学のジャスティン・ニックス准教授は、警察官の銃撃に関する唯一の正確なデータベースに注目した。『ワシントンポスト』が2015年にまとめた調査結果だ。

ニックスらはこの調査をもとに研究を行い、結果をまとめた調査論文を『Criminology & Public Policy』誌に2017年2月8日付で発表した。研究のなかで彼らは、被害者の人種や武器所持の有無、警察官や市民への攻撃の有無などを分析した。その結果、2015年に発生した990件の射撃死亡事件のうち、警察官が武器を持たない黒人市民を射殺した割合は、武器を持たない白人市民を射殺した割合の2倍にあたることがわかった。

身の危険を感じたときに強まる差別意識

ニックスらはさらに、人種とほかの要因を区別するため、地域の犯罪率や精神疾患の割合などの変数を調整して分析を行った。ほかの要因を除外すればするほど、潜在的な差別意識がより一層影響力を増したという。

この分析では、ほかにもさまざまなことが明らかになった。たとえば、射殺されたときに被害者が警官や市民を攻撃していた割合は、非黒人マイノリティの方が白人よりもずっと低かったいう。

「警察官が非常に差し迫った危険な状況にある場合、差別意識を補正するのはとても難しくなることがわかります」。そう語るのは、人種プロファイリングについて研究しているカリフォルニア大学バークレー校のジャック・グレイザー教授だ。

ニックスらは、警察署は潜在的な差別意識を最小化するための訓練を導入すべきだと提案しているが、グレイザーはそれに反論している。これまでの研究で、人々の差別意識を取り除くことは難しいことが明らかとなっているからだ。グレイザーいわく、より優れたアプローチは差別意識が警察官の行動に影響を及ぼす可能性を最小化するための訓練を取り入れることだという。

ただ、こうした調査が完全なものではないことはグレイザーもニックスも認めている。たとえば、ワシントンポスト紙のデータベースには死者を出した射撃事件しか含まれていない。これは、警察官が市民に対し殺傷力のある武力を行使したすべての事例の一片でしかないのだ。

「死亡事件だけでなくすべての発砲事件に関するデータがあれば、殺傷力のある武器の使用に関する傾向を把握できたでしょう」と、ニックスは語る。

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最終更新:6/12(月) 8:30
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