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『正解するカド』9話 BLか魔法少女かバトルアニメか。遂に野崎まど節超展開で賛否両論

6/12(月) 15:00配信

おたぽる

「そして、4つ目“ナノミスハイン”」
『正解するカド KADO:The Right Answer 』の9話。米光一成が全話レビューするよ。


■カド、ワム、サンサ、そして……

「そして、4つ目“ナノミスハイン”」
 カド、ワム、サンサに続いて、また何やらぶっそうなものが登場した。
 ヤハクイザシュニナが解説する。

「この現象を端的に理解しやすい表現として翻訳しよう。重力制御・慣性制御・質量制御それら一連の制御。“ナノミスハイン”は、そういった異方の操作を人類が行うための補助器具、言うなれば“異方存在の腕”だ」

 さらに、ヤハクイザシュニナが語る。
 異方についてだ。

「そう、異方の次元数はこの宇宙に37を加える。次元が1つ増えれば情報内包量は二乗される。この宇宙の37乗倍の処理速度と37乗倍の広がりを持つ世界……それが異方だ」
 このあたりのケレン。いいねー。
 野崎まどらしさが、炸裂しはじめた。


■まさに野崎まど節

 脚本の野崎まどはSF小説家。
『正解するカド』を観て気になってる人には、『know』(早川書房)をオススメしよう。
 人造脳葉〈電子葉〉の移植が義務化された2081年の日本が舞台。
 主人公は、内閣情報庁情報官房付情報審議官。
 エリートで天才で、情報階級もほぼ最高位のクラス5だ。

 その主人公が出会う少女が、世界最高の情報処理能力を持った人間。
「あえて君たち政府官僚の尺度に当てはめて表現するなら、そうだな……」
 と語られる階級はクラス9。
 このあたりのクラス7も8もすっとばして9って言っちゃう感じが野崎まど節。

 超絶情報万能少女は、全知全能の神クラスの活躍っぷり。
「気が変わった。まずこの場でストリップだ。それから電子葉薬過剰(ヤク漬け)にして狂うまで犯してやる。最後は素手で自分の頭を無理矢理外さしてやるよ」

 とか言い出す裏の部署の機密情報課に所属するクラス*(アスタリスク)の男との対決。
 さらには、すごい場所で、すごい格好での、重武装の警備兵たちとの大戦。
 物凄さの上昇曲線がふっきれて、とんでもないシーンの連続。細かいところを気にする前に、大風呂敷が広げられていく。

 そう。『正解するカド』も、世界を一変する革命秘密道具をヤハクイザシュニナが次々と提示するケレンなんかは、まさに野崎まど節だった。
 そして、いよいよ上昇曲線がぐいぐい上がりはじめた。
 ヤハクイザシュニナは、大量の情報を摂取したいと言う。

「その為に異方存在は情報の繭を創造した」

『ああ野麦峠』(朝日新聞社刊)が映る。

「人の事業に養蚕というものがあるだろう? 蚕を育てて繭から糸を得る。その糸の代わりに情報を得るのだと思えばいい」

 そして、繭と糸が何かが明かされる。

「情報の繭とは宇宙を、究極の糸とは人類を指す」

 ドーン!
 このあたり、SF好きは予測済みだろう。

「神だ」と不自然なほど何度も言われていたし、ファーストコンタクトものではよくあるパターンだ。

 1953年に発表された傑作SF『地球幼年期の終わり』(東京創元社)も、そうだしね(このあたりは驚きのシーンでもなんでもなくて、もっと壮大なビジョンを提示する凄いSF小説です)。
『贋作ひでお八犬伝』(秋田書店)も、強引にそういうエンディングにして、「まあこんなもんだろ」って言わせてるぐらいの定番展開。

 だが、これでは終わらない。
 ヤハクイザシュニナがなぜか「真道、私と一緒に異方に行かないか?」とか言い出すBL展開に。
 37も次元が違う存在で、自分が作った繭の糸に、告白である。
 いや、それほどの高次元の万能存在なのに、なんで本人の許可など必要なのか。
 何のために? 理由がまったく分からない。
 さらに、フラれちゃうと、数時間前の複製の君でやりなおすから消えてほしいと説明をする。

  なぜ説明した。

「最後になると悪者があれこれ説明して、殺そうとするけど、失敗するヤツ」っていう日本のB級ドラマの様式美を学んでしまったのか。

 案の定失敗するようで、徭沙羅花の指輪がドーンって、ピカーッって、なって、
 魔法少女か、女性版ウルトラマンかってコスチュームをまとって「異方存在、徭沙羅花」が登場。
 バトルアニメに大転換しそうな勢いで、ええええええー。

 ネット上では、馬鹿にするなと怒る人もでてくる大展開で、賛否両論だ。
 いやいやいや、もともとリアリティなくて世界系もはなはだしかったので、これぐらい超展開してくれないと!
 こちとら、4話、8話あたりで、整合性はないものと諦めておるから、まったく問題ない。
 ここまでを5話ぐらいでテンポよくやってほしかったよ。

 ここから、こちらの予想を超える展開の連続を期待して、俺は、また楽しみに観るよ。
(文/米光一成)

最終更新:6/12(月) 15:00
おたぽる