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西武・十亀、魔球シュートは「楽する球」。先発ローテの中心へ、鍵握る投球スタイルの使い分け

6/12(月) 13:30配信

ベースボールチャンネル

 埼玉西武ライオンズの十亀剣投手が調子を上げてきた。その鍵を握るのは、使い方を変えたある球種。プロ入り6年目を迎えた右腕は、好不調の波が激しい「両極端の投手」を脱し、先発不足が続くチームを支えられるか。

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「なんだ、あれ」と思わせるシュート

 開幕ローテーションから外れたものの、5月18日のロッテ戦以降4度の先発で3勝をマーク。今季、西武の先発6番手からスタートした十亀剣が調子を上げてきた背景には、一つの球種がある。

 十亀にとって今季の交流戦初戦となった6月1日、強力カープ打線を6回2点に抑えたポイントがシュートだった。
「相手にとって、『なんだ、あれ?』という球が一番嫌だと思います。そういうイメージで投げていますね」

 右打者には140キロ前後の球が体の近くに食い込み、左打者の外角に逃げながら沈んでいく。オリックスの金子千尋が操るパワーシンカーのような軌道だ。日本には使い手が少ないという希少価値、そして「なんだ、あれ?」という打者の反応から、思わず“魔球”という言葉が浮かんだ。

 しかし、十亀自身は「ウイニングショットではない」と言い切る。

「ゴロが欲しいときにすごく有効ですね。シュートで三振をとってやろうとはまったく思っていません。僕自身にとっては、楽をする球です」

 この試合で十亀が“楽をできる”ようになったのは、2回に松山竜平の2ランで先制されて以降だ。5人の左打者と4人の右打者をジグザグに並べたカープ打線に対し、3回から攻め方を変えている。

「3回から(左打者の)外にシュートを投げていたら、あまりバットに当たる気配がなくて。明らかに『なんだ、これ?』みたいな空振りの仕方だったので、そんな楽な球はない、と。初球で終われますし、三振をとれますしね。それをキャッチャーと二人でちゃんと理解して投げていたので、勝ちを拾えたと思います」

“決め球”の意識は捨てる

 広島戦で勝利するカギとなったシュートだが、十亀にとって諸刃の剣とも言える球種だ。11勝を挙げた2015年から一転、昨季4勝6敗と大きく期待を裏切った一因は、この球にある。キャリア初の二桁勝利からさらなる上積みを目指し、15年まで封印していたシュートを再び投げ始めたが裏目に出た。

「新しく増えた球種は使おうとするじゃないですか。それがちょっと良くなくて、去年はシュートに依存しすぎました。それで真っすぐを投げるときも(体が)開いて。去年と今年では、真っすぐのスピードが4、5キロ違います。そういうところに弊害が出て、去年1年間はあまり良くなかったです」

 シュートを投げることによって、ストレートに悪影響が出る投手は少なくない。その理由は変化をつけようとすることで、投球時に体が開きやすくなるからだ。

 十亀の場合、ストレートからボールの握りを少しずらしてシュートを投げる。スリークオーターとサイドスローの中間のような投球フォームから、ストレートもシュートもやや三塁方向に指先を離していく。異なる点はリリースポイントで、シュートのほうがストレートより少し前だ。

 そうして146キロ前後のストレート、約140キロのシュートを投げ分けるなか、上記の微差に落とし穴があり、「ストレートを投げようと思って、無意識的にシュートになるときがある」。さらに言えば十亀のストレートは自然とシュート回転するのが特徴で、“動くボール”になると威力を発揮する一方、抜けた半速球のようになると打者にとって打ちやすい。

 それを防ぐべく、今季は工夫を施している。一つ目が、意識改革だ。

「今年は割り切って、“シュートを使って抑えたい”ではなく、“シュートもあるよ”というスタンスに変えました。それにより、真っすぐの走りも良くなりましたね。シュートは少し落ちますし、真っすぐは打者に対してそのまま来るので、高さの幅も出てきます。そういう意味で、僕のシュートは相手にとって邪魔になる球じゃないかなと思います」

 広島戦から5日経った6月6日、2日後の巨人戦を控えて十亀はブルペンに入った。ここでの調整法が、二つ目の工夫だ。広島戦で通常よりシュートを多く投げたこともあり、この日のブルペンではストレートを多めに投げた。そうしてフォームの開きを抑え、リリースポイントを安定させようとしている。

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