ここから本文です

感涙もののミノと出会える大森のホルモン焼き『S』

6/12(月) 18:30配信

@DIME

オヤジス度    ★★
エルドラ度    ★
オヤジナリティー ★★★

「ちょっとこの店、失敗した!!」

 店に入ってメニューを見た瞬間、そう思う時がたまぁ~にある。でもその“失敗した”が徐々に“いいんじゃないのココ!!”に変化していく時も、さらにたまぁ~にある。その夜がまさしくそうだった。

 前回書いた煮込みの有名店でイイ気分になり、まだまだ飲み足りないと、大森の繁華街をプラプラと歩いている時、ふと目に泊まったのが『S(仮名)』という名前の店の外観だった。

 2メートルほどの、決して広くない間口の上の看板には、店名以外に『ホルモン焼 内臓 サシミ』という、魅惑の言葉が並んでいる。

 ホルモン焼ときて内臓……もう魅惑ワードである。外から見た雰囲気もやけに庶民チックだし、こりゃあ安くてウマイに決まってると、なんの躊躇もなく店内に入る!

「いらっしゃ~い!」

 店主とおぼしきオヤジさんがそう言って迎え入れたくれた店内は、入り口方向から奥へと伸びるカウンターのみ。壁はいい感じに肉を焼いた煙ですすけている。いい感じだ!

 しかし、ここで第一の失敗に気付いた。タウンターに七輪が置いてあるのだ。オレ“ホルモン焼き”って言葉から、てっきり串焼きのモツ焼きを想像してたんだが、この店、自分で肉を焼く焼肉系だった。決して焼肉が悪いワケじゃないけど、串系よりもどうしてもお値段いっちゃうからね。

 ただ、この店はカウンターだけなんで、最近よく言う“一人焼肉”推奨型だろう。となると一人用の一皿少なめメニューとかもありそうだし、ましてやこれだけすすけた店内。そこまでは高くないだろうと一瞬で計算。しかし、カウンター奥に貼られたお品書きを見て、その計算は脆くも崩壊した!

 お品書きのトップを飾るのは“骨付きカルビ・1850円”って、それだけでオレの普通に一軒の呑み屋で使う総予算ですよ。続きまして“上カルビ・1650円”“カルビ・1250円”! 店の庶民チックな外観をあっさり裏切る普通の焼肉屋価格! まいったぞ、こりゃ!!

  待て待て! カルビは正肉だ。オレは内臓を焼いて食べたいんだ、内臓はもっと安いに違いないと内臓系に目を移す。

『男には覚悟を決める瞬間(とき)がある!』

“牛タン・1250円”“牛ノミ・1100円”“牛ギャラ・1100円”“牛ホルモン・900円”……正肉よりは安いけど、これ普通の焼肉屋価格だぞ! かろうじて“牛ハチノス・750円”“牛センマイ・750円”ってちょい安メニューもあった、、牛じゃなく豚になると“豚リブ・900円”“豚ハラミ・900円”“豚タン・700円”“豚ハツ・700円”“豚テッポウ・650円”と、手が届きやすくなってきているが、まぁ何度も書くけど、すすけた店内にしては高いよオヤジさん!!

 でものメニューを見た高いと思いつつも、内臓のレパートリーは豊富だしさ、またまた書くけどすすけた店内でこの価格ってのは、そうとうに味に自信があるんじゃないか? としか思えなくなってくる。

 となると、オレが内臓の中で一番好きな“牛ミノ”が喰いたくてしかたなくなってくる。

 脳の中が“高いがたまには贅沢しちゃうか、ミノ!”って状態になりつつ、お品書きの飲み物の方に目を移す。

 そしてここで、さらに衝撃を受ける。飲み物も高いよオヤジさん、すすけた店なのに!!

 レモンハイ、ウーロンハイ、チューハイと全てが驚くなかれ510円!! もう一度書く。510円だ! ホッピーにいたっては600円!! 政治家御用達の赤坂の料亭かっつうの!!

 しかし人間って不思議なもんですね。ここまで高いと、その状況を甘んじて受け入れちゃうというか「しかたないだろ!」って急に腹くくっちゃうのね。

「この店はオレが自分で決めてはいったんだから、自分の責任として、いや自分の勉強代として、この店で気持ちよく飲んでやろうじゃないの!!」

 そう覚悟は決まった。ミノとチューハイを頼む。もうこの時点で1610円だ、もってけ泥棒!!

 ありがたいことにチューハイはド濃かった。チューハイをチビチビ、いつくしむように飲んでミノを待つがなかなかやってこない。あまりに遅いなと思って店主をよく見ると、店の奥で炭をおこしていた……って今からかよ!! そうだ、今になって気付いたけど、客はオレ一人じゃねェか!

 大丈夫なのか、この店! 渦巻く不安でチューハイをさらにゆっくり呑むも、オヤジさん、肉くる前に一杯呑んじゃったよ「オカワリ!!」……もう2千円超えました…。

 2杯目と同時に、やっとミノが登場……瞠目した。普通焼肉屋で内臓を頼むと、特に指定しない限り味噌味のモミダレにまぶされてやってくる。しかし、ここはモミダレなしの、素の内臓のみ!

 これはそうとう肉質に自信があるに違いない。その自信を裏付けるかのように、ミノの表面は輝くように白く輝いていた!!

『ゴメン、これなら安いといってもイイ!!』

 一皿のミノは8切れくらいだっただろうか。計算すると一切れ100円以上だ。大事に大事に七輪で焼く。よく「肉を焼く時は、一回しかひっくり返しちゃいけない」という人がいるが、あれは、肉をひっくり返した時に、鉄板の温度が下がってしまうフライパンや鉄板とかを使って焼く場合で、炭火で七輪網焼きみたいに、肉に直制遠赤外線の熱が当たる焼き方の場合は、逆に何度も何度もこまめにひっくり返してやった方がいい。以上、この連載に時々入る豆知識でした。

 それはともかく、丁寧に焼いたミノを、この店、モミダレはなかったが、珍しいことに付けダレがなんと味噌味でして、その付けダレをほんの少し付けて口に入れる……いや、口に入れる前、肉片を口に近づけた段階で、鼻孔をくすぐるいい肉の香りがもうウマイことを約束してるんだけど、それを口に入る。刹那、まだ噛んでもいないのに肉にまとわりついていた旨味を含んだ肉汁が口中を駆けめぐる! そこで満を持して前歯で肉を噛んでみれば、ミノ独特のプリッとした歯ごたえと同時に、さらに噴出する旨味!! 奥歯でコリコリと噛み続けていれば、最近流行りの1時間近く味が持つチューインガムのように、永遠に肉の旨味が出てくるんじゃないか? と思える凄まじい旨さ!

 オヤジさん、こりゃ1100円でも仕方ないわ!!

 そう満足しつつ、ふとカウンターを見ると、茶色い液体の入ったボトルが置いてある。一体何か聞いてみると、

「あ、梅シロップだよ!」

 ってあの焼酎に混ぜる梅のシロップかよ! なんだよ、オレが一番好きなヤツじゃねェかよ。もう最初にいってくれよと、次からの酒は焼酎ロックを頼み、それに卓上の梅シロップを自分でチョチョっとほんの小さじ3分の1くらい入れた焼酎梅割りに変更!! ちなみに焼酎ロックの値段はわからんが、よく見ると“いいちこ・300円”ってのがあるんで、それかれもしれない! なんだよ、これきづかなかったよ300円っての。これだけは安いじゃない!

 梅割りで先程の強烈ミノを食う! もう高くてもどうでもいい気分になる最高の組み合わせ。いや焼酎300円だから、こりゃ高くないかも!! 肉はもうこれ以上肉頼まない所存だし。こりゃもうオレ“安い”って部類に入れちゃう!!

 そんなオレの心持ちとは関係なく、オヤジさんはテレビのニュースに夢中だった。ビールを値上げするなんてニュースだった。

「そんな高くされたんじゃやってけないよなぁ!」

 オヤジがオレに同意を求める。「そうすねぇ」なんてうなずきつつも、オヤジさんの店、もう充分に酒は高いよ! と思った。もう少し、酒安けりゃ、絶対もっと人入るのに! 300円(多分)で焼酎梅割りが飲めるのを知ってればいいけど、やっぱりチューハイ510円は普通ビビるよ。いまだに客はオレ一人の店内で一人気持ちよくオレは飲み続けながらそう思った。

 御会計は、納得のいく3千円くらい、だったと思う。後半の酒代は安かったからな~。まぁ酔っててよく覚えてねェけど!!

文/カーツさとう

@DIME編集部

最終更新:6/12(月) 18:30
@DIME

記事提供社からのご案内(外部サイト)

@DIME

小学館

2017年10月号
8月16日発売

定価600円

売り切れ御免!調理家電&ヒット食品
ふるさと納税 極ウマ返礼品・ベスト47
ホリエモン流 超仕事術公開
タイプ別 痩せるカラダマネジメント