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【総体】“谷間の世代”が県決勝で奇跡の逆転劇!! 広島観音が11年ぶりの王座奪取を狙う

6/12(月) 14:29配信

SOCCER DIGEST Web

電光石火の2ゴールで劇的に出場権を掴み取る。

「今年も、またダメなのかな……」
 
 広島観音の内田仁監督は後半24分に先制された際、こう思いを巡らせたという。
 
 就任4年目の指揮官が県予選の決勝を戦うのは、インターハイと選手権を合わせて今回が4回目。すべて広島皆実の後塵を拝した。今回は、いつもとは違う瀬戸内が相手で苦手意識はない。GK井西海斗(3年)やDF手嶋一哉(3年)の粘り強い守りのおかげで、前半は瀬戸内の迫力ある攻撃を無失点で抑えたが、1点を失なった前後の時間帯は相手の勢いに呑まれてしまい、指揮官の脳裏に敗北がよぎったのだ。
 
 残り時間わずかのタイミングで、ベンチから飛んだ指示は、「絶対に1点取れるぞ!」。後半の間に逆転勝ちまで狙うのではなく、まずは追いつき、延長戦まで持ち込められれば御の字と考えていた。
 
 ただ、ピッチにいた選手は誰ひとり諦めていない。「相手が早い時間で逃げ切ろうとボールを回し始めたので、そこで奪えればチャンスが来ると思っていた」。そう振り返るMF山口直也(3年)を中心に、気力を振り絞り、相手への圧力を高めていく。
 
 すると後半39分、広島観音は試合を振り出しに戻すのだ。MF安野蓮(2年)が前線にパスを展開。相手DFに当たって、ゴール前にこぼれたボールを途中出場のFW横下友則(3年)が押し込んだ。
 
 このゴールで勢いに乗り、アディショナルタイムに山口が左サイドを仕掛けてCKを獲得する。キッカーは怪我から復帰したばかりのDF岡本大河(3年)。ゴール前に入れたクロスが、瀬戸内GKのファンブルを誘うと、横下が再び蹴り込んで逆転に成功。直後にタイムアップの笛が鳴ると、ベンチのスタッフ、選手が喜びを爆発させ、歓喜の輪が広がった。
 

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「いまのままじゃ、絶対に日本一にはなれない」。

 2006年にインターハイで日本一に輝いたこともある広島観音だが、近年は広島皆実と瀬戸内の陰に隠れがちで、全国の舞台から遠ざかっていた。
 
 インターハイが地元で開催され、出場枠がふたつだった昨年は、復権を印象づける絶好のチャンスだったが、予選3回戦で敗退。主力の多くが去った今年は、「昨年のほうが選手の質が良くて、今年は谷間の世代。手応えはまったくなかったし、選手には這いつくばって頑張るしかないと言ってきた」(内田監督)という。
 
 2月の県の新人大会も、準決勝敗退。それでも日本一を目標に掲げる選手たちに対し、内田監督は「お前ら本当にそう思っているのか? 口で言っているだけではダメなんだぞ。新チームになってすぐに周囲のひとから、『日本一は無理だ』と言われて、どうなんだ。ちょっとでも日本一に近づこうとか、しがみついてでもやろうという気持ちを持たないとダメだ」と諭した。
 
 この一件を機に、「それまではちょっと緩い空気があったけど、練習でも試合でも100%を出し切ることを意識するようになった」(山口)
 
 今予選は、そうした日々の積み重ねが結果という形で表われた。福山明王台との初戦は1-0ので辛勝。呉工との3回戦こそ3-0で快勝したが、準々決勝は広島国際学院に先制点を許しながら、延長戦でなんとか逆転勝ちを収めた。
 
 前日の準決勝は山陽を相手に2点を先行したが、1点を返され、肝を冷やす展開で、「楽勝なゲームは一度もなかった」(内田監督)。それでも、「諦めない気持ちが今回の結果に繋がったと思う。諦めない気持ちはどのチームにも負けないし、何点取られても、粘り強く戦い続けるのが特徴だと思う」と山口が胸を張るように、最後まで全力で勝利を目ざした結果、全国行きの栄誉を掴んだ。
 
「いまのままじゃ、絶対に日本一にはなれない」。試合後、内田監督はきっぱりそう言い切った。全国では間違いなく、厳しい戦いが待ち受けるだろうが、その一方で、最後まで諦めない気持ちが持ち味の彼らなら、「もしかしたら……」という気持ちも抱かせる。
 
 元王者・広島観音。10年ぶりのインターハイで旋風を巻き起こすか。
 
取材・文:森田将義(フリーライター)
 

最終更新:6/12(月) 15:39
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