ここから本文です

日本人には驚異のフランス運転事情 押して出ま~す!

6/13(火) 14:33配信

オーヴォ

 ちょっと前まで、フランスの運転免許証は「終身」だった。更新手続きがなかったから、50代男性の免許証の写真が“青年”なんてことは珍しくなかったが、最近ようやく15年という更新期限ができた。もっとも、狭い石畳の裏路地と巨大なロータリーを縦横無尽に走り回るフレンチ・ドライバーは、EU諸国の中でも”悪評“が高く、各国人気質を皮肉る場合でも、「フランス人のような運転」という言い方は珍しくない。

 そんな国で、どちらかというと几帳面な気質で有名な日本人が運転すると、なかなか苦労が多い。日本ではベテランドライバーでも、この国で巨大なロータリーに“突入”すると、おそらく誰もが気分は若葉マークだ。歴史的に馬車が使われてきたヨーロッパでは、円形のロータリーが多い。いわゆる「ラウンドアバウト」だ。信号がないところが多く、反時計周りに回っている車の流れに合流し、流れにのって回りながら、自分が曲がりたい道に向けて右にウインカーを出して出て行く。例えば、四つ角を左折する場合でも、いったん右方向に回りながら、右折の道、直進の道をやりすごし、三番目の道を「右折」していくことになる。初心者には案外これが難しい。



 難易度が高いのは、凱旋門を周回するパリで一番巨大なロータリー。外国人にとっては、一つの難所だ。観光で凱旋門を訪れた人は必ず見ている光景だが、大量の車が凱旋門の周囲を六重、七重にもなって回っている。シャンゼリゼ大通りと、その向こう側のグランダルメ大通りの二本を含め、放射線状にこの周回から出て行く道が12本ある。輪の内周から12本の道に出て行く車が外周に向けてそこ此処で流れを横切り、その12本から、逆に大量の車が猛スピードで突っ込んでくる。そして流れにのっている車は、自分の目的の曲がり角に向けて猛スピードで回っているのだ。

 慣れたパリっ子たちは、最短距離、すなわち外周からロータリーに突入し、即刻円心に近い内周に入り、曲がりたい道に向けてまた外周に飛び出して行くことができる。勘と思い切り、そしてクラクションを鳴らす勇気。「運転技術は不要だよ」というフランス人もいる。

 もう一つ、必要な能力が縦列駐車だ。パリ市内の道は、役所の許可を得た一般車両の駐車場所が多い。住所地の区役所でもらう許可が、日本でいう“車庫証明”になり、住民はふだんから路上が自分の“車庫”になる。とはいえ、一台ずつ決められた場所があるわけではなく、路上の点線内という話だから、帰宅時間になると、自宅周辺の道をぐるぐる回ってその晩の駐車場所を確保する。誰かが出たら、すかさずハザードを出してその場に入る意思表示。同時にハザードを出した車がいたら、早いもの勝ちだ。ここで運転技術がものを言う。駐車したい場所より前方に車を出し、ハンドルを回しながらバックする。そしておもむろに後ろの車にそっと触れ、押しながら後退、後方にスペースを押し広げ、切りかえして今度は前の車をそっと前方に押す。日本なら、どう考えても入れないようなスペースでも、絶対に入る。出る時はもちろん、その逆をやる。ここで縦列の“テクニック”を修めないと、永遠に路上駐車はできない。

 日本では概して車を大切にする人が多い。少し傷がつけば直すし、ぶつけたら損害賠償、頻繁に洗車はするし、故意にあてたりしたら大変だ。「日本人」であることをどこかで捨ててしまわないと、この国で路上駐車は難しいかもしれない。

最終更新:6/13(火) 14:33
オーヴォ