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まるで共謀罪のような監視強化 精神保健福祉法「改正」案に反対続出

6/13(火) 18:11配信

週刊金曜日

 要注意の人物とされたら、行政をはじめとする関係機関がかかわり続ける。警察にも個人情報が流れ、動向を把握される。ささいなことで身柄を拘束されないか、いつも気にしながら生活する――。

共謀罪をめぐる話ではない。国会で審議中の精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(精神保健福祉法)「改正」案のことだ。

 昨年7月に相模原市の障がい者施設で起きた殺傷事件を精神障害によるものと決めつけた政府は、措置入院後の患者のフォローを中心とする法改正案を2月28日に国会へ提出した。参院先行で4月7日から審議が行なわれ、自民・公明・維新などの賛成で5月17日に参院を通過した。民進・共産・社民・自由などは反対した。

 措置入院とは、行政権限による強制入院だ。精神障害のために自分を傷つけたり他者に危害を加えたりするおそれがある、と複数の精神保健指定医が判断すれば、知事または政令指定都市の市長が入院を命令できる。年間に7000人以上が措置入院になっている。

 法案のポイントは、措置入院患者の入院中から、保健所を中心に医療機関・福祉関係者などが集まって退院後支援計画を作ること。患者が退院すると、継続的な医療や孤立防止のため、計画に沿って支援を行ない、関係者による会議も定期的に開く。本人が引っ越したら転居先の自治体に引き継ぐ。

 なぜ、そんな仕組みを作るのか。厚生労働省の当初の説明資料に書かれた法改正の趣旨は、相模原事件を挙げ、「二度と同様の事件が発生しないよう……法整備を行う」と事件再発防止を強調していた。

「支援を名目にした監視の強化だ」と障がい者団体や支援団体から強い反対の声が相次いだ。

 参院の厚生労働委員会では、川田龍平・石橋通宏(民進)、倉林明子(共産)、福島みずほ(社民)の各委員を中心に、かなり突っ込んだ質疑・批判が行なわれた。

「本人のために行なうべき医療が治安目的に変質する」と追及され、答弁に窮した厚労省は4月13日、説明資料の趣旨説明の記述を削除した。支援計画の作成や個別ケース検討会議に本人・家族が参加することを指針にも明記した。

 審議中に法改正の趣旨を削るのは前代未聞だ。しかし法案本文には変化はない。「立法目的が消えたなら、出し直せ」と野党側が反発して審議は一時ストップ。塩崎恭久・厚労相が4月20日に陳謝して趣旨説明をやり直した。

【警察へ個人情報が流れる】

 参院の質疑で浮かんだ最大の疑問点は警察との関係だ。

 個別ケース検討会議に警察は原則入らないと政府は言いつつ、「自殺のおそれ、繰り返し応急の救護を要する状態」などは加われると答えた。警察も参加する地域ごとの「代表者会議」は措置入院の運用一般を話し合う場で、個別事例は扱わないとしながらも、「確固たる信念を持って犯罪を企画する者」「入院後に薬物使用が見られた場合」は、関係機関が個別に警察と連携すると説明した。

 例外とされたことでも、実際の運用で例外と原則が逆転していきがちなのは、強制入院や隔離・拘束の多さを見れば明らかだ。

 参院厚労委の審議は28時間に及び、大もめ法案になった。

 可決の際、「施行後3年をめどに見直し」などを附則に加える修正と18項目もの附帯決議が行なわれた。▽精神保健医療が治安維持を担うとの誤解や懸念が生じないよう留意する▽支援は半年以内程度とし、例外的延長は原則1回▽本人が納得しない場合は支援計画を見直す▽本人が拒む場合は個別ケース検討会議に警察を参加させない――と、少しは歯止めになる内容も入った。

 だが、精神障がい者を危険視し、警察も加わって見張ろうとする法案の本質は変わっていない。

 監視ではなく支援だと政府が強調するなら、措置入院患者全員に弁護士を付けてはどうか。個別ケース検討会議には本人の希望する支援者、代表者会議には弁護士会の代表を加えるべきだろう。

 会期末までの日程はきわどい。衆院での徹底審議を期待したい。

(逆巻さとる・ジャーナリスト、6月2日号)

最終更新:6/13(火) 18:11
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