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目覚めよ、ストライカーの本能。大迫と岡崎、2大エースのゴールがハリルJを変える

6/13(火) 12:15配信

フットボールチャンネル

 いよいよロシアW杯アジア最終予選のイラク戦当日を迎えた。12日にはイラク戦開催地のイランで、イラン代表がアジア一番乗りでW杯出場を決めた。日本もそれに続けるか。重要な一戦に向け、ハリルジャパンのFW陣に必要なのはイランのエースFWアズムンのようなストライカーの本能かもしれない。(取材・文:元川悦子)

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●チームにのしかかる負傷者問題

 2018年ロシアW杯出場権獲得へ一気に前進できるか否かを左右する重要なイラク戦(テヘラン)が迫ってきた。7日のシリア戦(東京)の後、9日に現地入りして4日間の調整を行ってきたが、前日の12日になって右すね打撲の山口蛍(C大阪)もようやく全体練習に合流。24人全員がプレーできる状態にはなった。

 とはいえ、山口を先発抜擢できる確証はないため中盤の人材難は依然としてチームに重くのしかかっている。ヴァイッド・ハリルホジッチ監督も前日会見で「長谷部(フランクフルト)がいない、(香川)真司(ドルトムント)がいない、蛍も少しどうだっていう感じで、今野もまだどうだっていう感じ。清武(C大阪)も来てませんし」とわざわざ自分が外した清武の名まで出して、選手層の薄さを嘆いたほどだ。

 それでも、現有戦力で何とかしなければいけないのがサッカーであり代表チームだ。シリア戦で採用した4-3-3を継続するのであれば、アンカーに山口か井手口陽介(G大阪)、右インサイドハーフに本田圭佑(ミラン)、左インサイドハーフに今野泰幸(G大阪)というのが可能性の高い組み合わせである。

 非公開練習では従来の4-2-3-1もテストし、最終予選初先発となる井手口や遠藤航(浦和)をボランチで起用するプランも試した模様だ。

 12日の練習後、吉田麻也(サウサンプトン)が「今までにないくらい若いメンバーが今回招集されていて、そこをうまくリードしていかなきゃいけない。若い選手が多くなっても、やっぱり日本を背負って戦ってるんで、日本を代表してプレーしてる誇りと責任を持ってやってかなきゃいけない」と若手抜擢を匂わせる発言をした通り、井手口らの出場確率はかなり高そうだ。

 中盤の構成が大きく変わる中、大迫勇也(ケルン)と岡崎慎司(レスター)の両ストライカーには攻めの起点となるのはもちろんのこと、自らチームを勝利へと導くゴールがより強く求められてくる。

「今は僕が起点を作り、両サイドがゴール前入ってきて点を取るっていう形になっている。サイドで起点作って僕がゴール前に入る形をもっともっと作っていかないといけないとは考えてます」と最終予選4試合連続スタメンが確実視される大迫が苦しい胸の内を吐露したように、ターゲットマンとしてゴールに背を向けてプレーする時間が長くなっているのは確かだろう。

●ストライカーを生かす新たな形の創造

 そのせいか、大迫は最終予選初出場となった昨年11月のサウジアラビア戦(埼玉)からノーゴール。シリア戦もシュートわずか1本にとどまった。大迫と終盤交代した岡崎にしてもシュート数はゼロ。国際Aマッチ109試合出場を誇る31歳のベテランも、この最終予選では3月のタイ戦(埼玉)で1点を奪っただけで、物足りなさが残る。

 いかにして彼らストライカーがゴール前の凄みを増し、点の取れるFWへと変貌していくのか。得点力不足にあえぐ日本攻撃陣にとって、非常に重要な命題と言えるだろう。

 ひとつの解決策として考えられるのは、大迫が指摘した通り、サイドが起点を作って1トップが仕留める新たな形を構築することだ。シリア戦で今野泰幸(G大阪)が奪った同点弾はそのヒントになり得る崩し。長友佑都(インテル)から原口元気(ヘルタ・ベルリン)、そして大迫へとつながり、相手DFの背後に飛び出した長友にリターンパスが渡って、最終的に逆サイドから走り込んだ今野が決めた。

 ゴール前には本田や倉田秋(G大阪)も走り込んでいた。そこに大迫も加わって、クロスに反応できれば、得点を決めるのはそう難しいことではない。中盤で誰かが起点を作って、1トップのターゲットマンとしての負担を減らすのも一案。シリア戦後半に本田が右インサイドハーフに入ってタメを作ってくれた時間帯は、大迫もかなりやりやすそうだった。

「あそこで起点ができるのは、僕としてもすごく助かること。もっとゴール前に専念できるし、ゴール前に入れるとも思うから。(圭佑くんとの)縦関係はザックさん(アルベルト・ザッケローニ監督)の時もやっていたけど、あの時と比べて僕も今の方が自信はあるので、お互いが生きてくればいい」と大迫も話していた。

 もちろん中盤でタメを作るのが本田以外の選手であっても構わない。1トップの前線での仕事量を分散させられれば、もっとゴールに力を使えるはず。そういうメリハリこそ、大迫がケルンで相方のアントニ―・モデストから学習した最も重要なこと。その成果を発揮できるような周囲との関係を築ければ理想的だ。

●2人のFWに求められる“本能”のゴール。日本を勝利に導けるか

 その大迫がいち早く得点を奪ってくれれば日本は比較的余裕を持って戦えるが、5月に監督が交代したばかりのイラクも、リオデジャネイロ五輪世代の若手が勢いを持って挑んでくるため、そこまで簡単にはやらせてくれないだろう。

 大迫が粘って相手のエネルギーを消耗させ、途中から岡崎が出てくれば、1トップの得点確率はより上がる。2人が90分間を通してFWとしての仕事をそれぞれ補完しながらやり切る形を作れれば、チームにとってはプラス以外の何者でもない。実際、岡崎はクローザーとしてのイメージを膨らませている様子だ。

「今までの(最終予選の)パターンを見ても、前半がうまくいくのはなかなかない。それも想定してやった方がいいかなと。イラクは後半に弱いし、最後に集中が切れて試合を落としていることが多いので、むしろ後半に勝負をかけた方がいい。入りを失敗すると難しい試合になるので、前半は我慢の展開になってもいいから、固い試合をしてもいいと思います」と背番号9は言う。

 これはレスターで求められている守備的FWの仕事とは180度違うため、今の彼には難しさもあるかもしれない。だが、日本代表通算50ゴールという偉大な実績を誇るアタッカーがフィニッシュの大仕事を託されるのは当然と言えば当然だ。短時間の出場に終わったシリア戦での不完全燃焼感を糧に、今回こそ頭を切り替えて点取り屋としての本能を思い切り出してほしいものである。

 イラク戦前日の12日にウズベキスタンを撃破してアジア最初のロシア行きを決めたイランの前線には、サルダル・アズムン(ロストフ)という22歳の若きストライカーが君臨している。彼はこの大一番でも確実に先制点を奪い、チームを勝利導いた。

 大迫と岡崎は、強いチームにターゲットマンとしての力と得点力を兼ね備えたFWがいるという事実をしっかりと刻み込み、アズムンのように重要な場面でゴールを奪えれば、イラク戦勝利の原動力になるはずだ。

(取材・文:元川悦子)

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