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30代俳優がドラマ界を変える? 小栗旬&金子ノブアキ『CRISIS』再共演の意義

6/13(火) 6:00配信

リアルサウンド

 連続ドラマ『CRISIS 公安機動捜査隊特捜班』(カンテレ・フジテレビ系)は6月13日放送でついに最終回。この作品は、小栗旬と西島秀俊が共演し日本のドラマの枠を越えた本格アクションを見せたことや、作家・金城一紀による完全オリジナルストーリーという点が注目されたが、将来、振り返ったとき、ドラマ制作の流れを変えた作品としても語られることになるかもしれない。

 終盤の第9話、第10話(最終回)では、元自衛隊員のテロリスト・結城役で金子ノブアキが出演。結城は、小栗旬が演じる稲見を巻き込んで、総理大臣などの権力者を糾弾する“革命”を起こそうとしたが、結局、稲見と戦うことになってしまった。2人のファイトシーンは迫力充分で、かつて小栗と金子が共演した映画『クローズZERO II』を思い出した人も多かったのではないだろうか。『クローズZERO II』では小栗が鈴蘭高校の滝谷源治、金子が鳳仙学園の鳴海大我を演じ、学校の屋上で壮絶なタイマン勝負を繰り広げた。あれから8年、鳴海は純粋に“強さ”を追い求め、決してナイフを使わない男だったが、それを演じた金子が今回はナイフを駆使する結城を演じていたのが興味深い。高校生を演じていた彼らも、いまや30代半ば。役柄も俳優としての立場も、現実的にならざるをえない。

 1982年生まれの小栗は現在34歳。その年代の俳優には『クローズZERO』シリーズに出演した金子、山田孝之、綾野剛を始め、瑛太、向井理、鈴木亮平、松田龍平らがいる。2018年の大河ドラマ『西郷どん』(NHK)では、鈴木亮平が主演、瑛太が準主役になるなど、まさにメインストリームの中で作品を背負うポジションになりつつある彼らだが、今回、『CRISIS』が革命的だったのは、数々のインタビューで明かされているように、小栗みずから企画の段階から映像化に向けて動いたということだ。30代になり発言力を得つつある彼らは俳優の枠を越えて、プロデューサー的な働きをするようになってきている。

 例えば、山田孝之はドキュメンタリードラマ『山田孝之のカンヌ映画祭』(テレビ東京系)で見せたように、自分は出演せずプロデューサーとして映画を作ろうとしていたし、そのどう見ても無茶すぎる企画が頓挫した後も、同じスタッフと再び組み『映画 山田孝之 3D』(6月16日公開)を作った。また、向井理も映画『いつまた、君と ~何日君再来~』(6月24日公開)で自らの祖母の半生を描く企画を実現させている。34歳と言えば、一般企業人(大卒)なら就職して10年目。そろそろマネージメント側に回る年頃で、彼らの動きはキャリア形成として考えれば自然な流れとも言えるかもしれない。ただ、芸能界では彼ら以前の世代に自分から作品を発信するというムーブメントがこれほどは見られなかったので、その“意識高い”アクションを応援したい。もちろん、その背景には彼らが所属する芸能プロダクションが制作に積極的に関わるようになったという流れもあるのだが、演者として常日頃からハードな撮影をこなし、映像業界の現状をよく知っている彼らから、『CRISIS』のようなブレイクスルー企画がさらに生まれてくる可能性はある。

 ちなみに、その下の世代の俳優を見てみると、1989年生まれの岡田将生を始め、松坂桃李、柳楽優弥、佐藤健、東出昌大、永山絢斗、窪田正孝、三浦春馬といった顔が並ぶ。現在27歳前後の彼らは、岡田、松坂、柳楽がドラマ『ゆとりですがなにか』(日本テレビ系)で共演したことで認知されたように、いわゆる“ゆとり世代”。これまでは独立独歩でキャリアを築いてきた感があり、「僕達は同世代と組む機会があまりなくて、小栗さんたち先輩がうらやましかった」という言葉も聞いたこともあるが、『ゆとりですがなにか』は好評を得てスペシャルドラマに(7月2日、7月9日放送、日本テレビ系)。小栗旬が金城一紀と組んでいるように、彼らが宮藤官九郎というクリエイターと組むようになったことは大きい。4月クールでも、岡田が『小さな巨人』(TBS系)で、東出が『あなたのことはそれほど』(TBS系)で存在感を見せたように、今後、着実に主演クラスへとステップアップしていくだろう。

 さらに5つほど下の年代は“さとり世代”とも呼ばれるが、1993年生まれの菅田将暉を始め勢いのあるメンバーがそろっている。この春、ヒットした『帝一の國』のキャスト陣である菅田、竹内涼真、野村周平、間宮祥太朗、志尊淳、『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』(8月4日公開)で共演する山崎賢人や神木隆之介、さらには福士蒼汰や成田凌もいて、層が厚い。同じ学園ものにしても、昭和生まれの小栗世代はいわゆる“ツッパリもの”である『クローズZERO』でブレイクし、その10年下、平成生まれの菅田たちは『帝一の國』でエリート優等生たちを演じたというのは、分かりやすい時代の変化とも言える。俳優間で交流があり、すでに同世代ネットワークが確立している彼ら。今後は金城や宮藤のように、この年代ならではの物語を書いてくれるクリエイターが現れるかどうかが、飛躍のポイントになりそうだ。

 世代分析になってしまったが、どの年齢でも俳優自身が発信する、またはみずからクリエイターをバックアップするという動きが続けば、視聴率を気にするあまり思い切ったことができずにいるドラマ業界にも新しい風が吹くのではないだろうか。『CRISIS』は4月クールで唯一、その可能性を感じさせてくれる作品だった。

小田慶子

最終更新:6/13(火) 6:00
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