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秦 基博、岡崎体育、TETSUYA……正統派SSWからネット発新世代まで男性ソロの充実

6/13(火) 13:00配信

リアルサウンド

 今回は男性ソロアーティストの新作を紹介。普遍的なポップスを志向するシンガーソングライター、おもしろネタで注目を集めるクリエイターから、ボカロ経由の新世代アーティストまで、男性ソロアーティストたちの幅広い表現を楽しんでほしい。

 デビュー曲「シンクロ」、ブレイクのきっかけになった名曲「鱗(うろこ)」、新海誠監督の映画『言の葉の庭』のイメージソング「言ノ葉」、映画『STAND BY ME ドラえもん』の主題歌として大ヒットを記録した「ひまわりの約束」など秦 基博のデビューから10年の軌跡を追体験できる初のオールタイムベスト『All Time Best ハタモトヒロ』。時期によってサウンドの手触りはかなり変化しているのだが、日常の風景と奥深いメッセージを融合させた歌詞、アコースティックギターと歌を中心としたアレンジ、すべてのフレーズに鮮烈な感情を与えるボーカルなど、音楽の核になる部分はまったくブレていない。この芯の強さこそ、彼の楽曲が幅広い層のリスナーに愛されている理由だろう。それにしても本当にいい声。歌い出した瞬間に名曲感が溢れてしまう、稀有なシンガーだと思う。

 “英語のように聴こえる日本語”というネタのMV「Natural Lips」を見事にバズらせ、再び注目を集めている岡崎体育の2ndアルバム『XXL』。「Natural Lips」は本格的なファンク・サウンド、さらにもうひとつのリードトラック「感情のピクセル」(こちらのMVはサビのパートで、うさぎさん、キツネさんなどがワイワイしてます)はオーセンティックなヘヴィロックで、“質の高いサウンド×おもしろネタ”という特性がしっかりと追求されている。アニメのタイアップが付いたシングル曲を収録せず、インディーズ時代の代表曲「Snack」「鴨川等間隔」(どちらも名曲!)を収録しているのも、一時の話題性だけに頼らず、良い曲を聴かせたいという意志の表れ(たぶん)。いずれにせよ本作が、彼のキャリアハイになることはまちがいない。

 「STAY AWAY」「READY STEADY GO」「Link」などL‘Arc-en-Cielのポップサイドを象徴する楽曲を手がけてきたTETSUYA。ソロデビュー15周年のアニバーサリーを飾るシングル『愛されんだぁ I Surrender』表題曲にも、彼の際立ったポップセンスが強く反映されている。基本となるサウンドは、80年代のポップなハードロック(このタイトルを見た瞬間、反射的に“RAINBOW”を思い出した人はまちがいなく40代以上)。キャッチーなギターリフ、ヌケのいいバンドサウンド、そして、サビのフレーズで気持ち良く解放されるメロディライン。アレンジ、ソングライティング、ボーカルのスタイルを含め、日本的な情緒みたいなものが1mmも感じられず、TETSUYA流のポップワールドが展開されているのだ。華やかで派手なコーラスワークも楽しい。

 歌の主人公は、娘を必死で愛し続け、育ててきた“パパ”。しっかり見守り、そんな娘が愛する人と出会い、結婚することになった。そして彼女はこう呟く。「お父さん、お母さん、今まで本当にお世話になりました」とーー。Kのニューシングル『桐箪笥のうた』表題曲(作詞:寺岡呼人/作曲:K)は、泣けるウェディング曲の新たな定番になりそうな“卒パパ”ソング。まず寺岡呼人が歌詞を書き、Kがまるで童謡のような素朴なメロディを与えたこの曲は、現代版「親父の一番長い日」(さだまさし)と呼ぶべき楽曲に仕上がっている。ストーリーテラーに徹し、日本語の歌詞をしっかりと手渡すように歌うKのボーカルに心を打たれる。

 ねこぼーろ名義でのネットシーンを中心とした活動を経て、2014年から自分が歌う形でキャリアをスタートさせたササノマリイは、エレクトロニカ、ロック、ポップスを融合させた音楽性、優れた映像表現(楽曲「共感覚おばけ」のMVは国内外のアワードで多数の賞を獲得)を併せ持つ新世代のクリエイター。緻密かつハイブリッドなサウンドメイクも彼の大きな武器だが、本作『game of life EP』ではソングライター/作詞家としての才能を大いにアピールしている。その中心は、盟友・ぼくのりりっくのぼうよみをフィーチャーした「game of life feat.ぼくのりりっくのぼうよみ」。ヒップホップとポップスをきわめてナチュラルに共存させながら、“人生という名のゲーム”の息苦しさ、儚さをリリカルに描いたこの曲はこの先、ササノマリイの代表曲として認知されることになりそうだ。

森朋之

最終更新:6/13(火) 13:00
リアルサウンド