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世間のイメージは間違いだらけ!? 春風亭昇太が語り尽くす「軟弱ではない今川義元」

6/13(火) 15:30配信

週プレNEWS

先月19日、静岡市で「今川義元・生誕500年」のキックオフイベントが行なわれた。
今川家の菩提寺で静岡市市長は、義元の名君ぶりを正しく現代に伝えようと、熱い「今川義元復権宣言」を読み上げた。確かに、桶狭間の戦い(1560年)で織田信長に討たれた義元は、「公家かぶれ」「軟弱」「負けて当然」といったイメージが根強い。

【画像】大河ドラマで今川義元を演じきった春風亭昇太

でも、真実の姿はそれとはまったく異なると、放映中の大河ドラマ『おんな城主 直虎』で義元役を見事に演じきった、現代最高の噺家・春風亭昇太が前編記事に続き語る。

■義元の最期はあまりに壮絶!

―いよいよ桶狭間(おけはざま)の戦い(1560年)ですが、ここでも世間の誤解ってありますか。

昇太 さまざまな研究で、今までいわれているような織田軍の奇襲ではなく、正面攻撃だった説も有力になってきています。

大高城(おおだかじょう)という、松平元康(後の徳川家康)が今川軍に救援用の兵糧(ひょうろう)を入れた場所(現・大高城跡公園/名古屋市緑区)は遺(のこ)っていて、僕も実際にそこに立ってみたんですが、織田軍の砦(とりで)があった山に囲まれていて、敵が目の前なんですよ。敵中突破のすごい緊張状態だったんだろうなあと。

―義元は桶狭間で輿(こし)に乗ったままで、馬に乗れなかったという話さえありますが。

昇太 当時は輿に乗ることを許された人間なんて少なかったわけで、これは威嚇(いかく)だったんですよ。あと、義元が馬に乗っていたことは史料にも書かれているし、自ら剣を取って戦ってもいる。義元の首を討ち取った毛利新助とは最後まで争い、相手の指を一本食いちぎったとある。これのどこが軟弱なのかと。そもそも馬に乗れなくて武術もできなくて、戦場に行くはずないだろうと。

―そんな壮絶な最期、本当は今回のドラマでも演じてみたかったんじゃないですか?

昇太 やりたかったァ!(笑)。で、ここからは感情論だけどサァ、義元は家臣を助けるために自ら桶狭間まで行き、敵と斬り合い、指まで食いちぎっているんですよ。片や、寺で寝ていたら部下のだまし討ちに遭った織田信長とサァ、どっちが戦国武将の最期としていいのかって! 義元は信長より壮絶な死に方をしているのに!……とか言うと信長ファンに怒られちゃうけど、なんでドラマだと信長は自害する前に能とか舞っちゃうわけ? カッコよすぎるだろ。誰が見たんだよ!


―もし師匠が義元だったら、信長とどう戦いました?

昇太 急がず慌てずかな。というのも、信長が今川家の城に攻めてきて、その援護として義元は後詰め(援軍派遣)をしたわけです。

これは僕の個人的な意見ですけど、義元は自分で行かずに家来に行かせればよかったんじゃないかなと。ただ、自分が行けば味方の士気が上がり、織田軍を一気に攻められると考えて勝負に出たんでしょう。

そして信長を破って尾張の海岸線を支配し、伊勢まで出たかったんだと思います。東海道と海域を拡大できますからね。天下統一なんて考えていなかったと思いますよ。

あと、義元の不幸は桶狭間の前に、幼少期から義元の教育係で軍師だった太原雪斎(たいげん・せっさい)が亡くなっていることで、「義元の功績は雪斎がいたから」と言われてしまうことです。でも、雪斎が亡くなったのは桶狭間の5年前ですよ。その間も義元は領土を広げているんです。

それと、徳川家康が幼少期の頃から今川家の人質だったことも、義元が悪く言われる要素になっているんだけど……最後にいいですか?

―どうぞ!

昇太 人質の竹千代(後の家康)はとてもいい待遇を受けていたはずなんです。竹千代の教育係に自分の教育係だった雪斎をつけたんだから、これは英才教育ですよ。今も静岡市にある臨済寺(りんざいじ)には竹千代が勉強した部屋がありますが、最高級の扱いだったと思います。しかも家康の正室・瀬名姫(築山殿[つきやまどの])は今川家の親戚です。

それで本題なんだけど、義元が討ち取られた後、家康、当時の松平元康は、今川家から独立した証(あかし)に、義元からもらった「元」を返上して改名するんです。そのとき姓も自分で決めたんだけど、どうして「徳川」と、わざわざ今川と同じ「川」の字が入った姓を選んだのか。家康は義元を本当はどう思っていたのか。

―師匠の戦国研究、ロマンがありますねえ。

昇太 金もかからない趣味だしね(笑)。今川義元のためにも次はカッコいい役者さんに演じてもらいたいけど、僕も今回、「軟弱ではない今川義元」を少しは広められたかな、と思っています。余は満足じゃ!

●春風亭昇太(しゅんぷうてい・しょうた)
1959年生まれ、出身は今川義元のお膝元、静岡県静岡市清水区(旧清水市)。落語家生活35周年を迎え、日本一多忙な落語家にして、ご存じ『笑点』の6代目司会。趣味の城巡りは本格的でエッセイ集『城あるきのススメ』(小学館)もある。現在、三宅裕司率いる「東京喜劇 熱海五郎一座~フルボディミステリー消えた目撃者と悩ましい遺産」に出演中(6月27日まで、新橋演舞場にて)

(取材・文/三ヶ尻智昭 撮影/本田雄士)

最終更新:6/13(火) 15:30
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