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コブクロのバラードは女々しくも図々しくないか――近田春夫の考えるヒット

6/14(水) 18:00配信

文春オンライン

『心』(コブクロ)/『あなたに贈る愛の歌』(THE ALFEE)



 このわたくし、バラードだかバラッドだか何が正しい表記なのかもよく存じあげぬものだが、物心ついて以来――よほどに感情を込めていればそうなってしまうことも想像に難くないのだけれど――あの、歌手(男性の場合殊にですかね)が自身の声やらポーズに陶酔してしまうことに一切の照れた様子さえ見せず、堂々切々と歌い上げている景色てぇのを眺めるのが、まぁ割と“観客的”にダメである。

 といって66年間の我が人生、本来不得手な筈の、そうしたいかにも思い入れタップリの歌唱だというのに熱いものがこみ上げてきて仕方がないという、そんな経験が一切なかったわけでもない。

 二十代の前半、俺は一時期日劇恒例「布施明ショー」のハモンドオルガンを担当していたことがあった。当時、そうした劇場での興行は1日3回、都合1週間で21公演が通例であったがその日々、気がつけば私は演奏も上の空で、布施さんの歌についつい聴き入ってしまうことがよくあった。アップテンポもパワフルでご機嫌だったけれど、布施明といえばやはり、情感も豊かに心から歌い上げる一連のスローナンバーであろう。なかでも圧巻は『愛の終りに』であった。毎回毎回この曲の歌い出しのところで、もう俺はたまらなくなってしまうのだ。本当に1週間で21度聴こうとも、必ず胸がジーンと熱くなったことを今でもよく思い出す。あ、そうだ。よく考えたら布施さん、御自身の歌にまったく酔いしれてなんぞいなかったワ。完璧にお客を相手のプロの仕事だったっす。その姿勢が俺の琴線に触れたってことでしたね。

 閑話休題。

 時代がjpop主流になってから俺の“堂々切々”系への苦手意識はますます強まった。

 その理由を挙げれば、ひとつには殆どが自作自演になってしまったというのはあるように思う。よほどのファンならいざ知らず、歌手が自身の書いたコトバにうっとりの姿なんて誰が見たいもんですか。

 さてコブクロの新曲だが、まさに今述べてきた文脈の真っただ中、俺の一番受けつけぬ、jpopで、自作自演で、切なさ全開、というヤツだ。

 しかもこの歌、主人公がやたら繊細な心の持ち主ときた。自分の方が弱いけれど君を必ず守るよと。要約すればそんな歌詞だ。なんかこう、この主人公、女々しくも図々しいって感じがするのよね(笑)。

 ま、しかし。いつもいってる話だけど、そんな、俺には超勘弁な部分こそにたまらなく萌える人もいる訳だ。むしろそちらがマジョリティの可能性さえある。だから色々いってることを気にしないでくださいね、ファンの皆様!

 ところで、♪どんな優れたえあーいも、とどうしても聴こえちゃう箇所があるのだが、ここはちゃんと“AI”とわかる抑揚にしてくれないと……。歌詞で時代に言及をする結構重要なとこなんですから。

 ALFEE。

 流石手慣れてるといいますか、43年やってる感あるよ。

近田 春夫

最終更新:6/15(木) 10:48
文春オンライン

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