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教員の長時間労働は、部活だけが原因ではない

6/14(水) 18:00配信

BEST TIMES

◆スケープゴートとしての部活

 あるところで「長時間労働の解消なら、部活より授業に休養日を設けてはどうだろうか」という記事を書いたら、「授業より部活を優先するとはケシカラン」とか「部活は授業科目ではないのだから、やらなくてもいい」といった意見をいただいた。この反応には、正直、驚いた。

 まず断っておくが、「授業より部活を優先しろ」という趣旨の記事ではなかった。教員の長時間労働が注目されるなかで、「部活悪者論」のようなものが一気に巻き起こった。教員の長時間労働をとりあげるさいにマスコミも、必ずといっていいほど教員が部活のために割いている時間の長さを引き合いにだしてくる。それもあって、教員の長時間労働は部活だけが原因かのような雰囲気がつくりだされていった。

 そうしたなかで今年1月6日、文部科学省(文科省)は中学校の部活について休養日を設定するよう求める「通知」を、全国の教育委員会などに送った。これに各教委も敏感に反応し、たとえば川崎市教育委員会は5月、「1週間に少なくとも1日の休養日設定」を学校に求める方針を決めた。川崎市より早く方針を固めた教委も少なくなく、休養日をもうける学校が全国的に増えてきている。

 これで文科省も教委も長時間労働問題に対処したつもりになっているなら、とんでもないことだ。

 4月28日に文科省が公表した教員勤務実態調査で、マスコミが「10年間で倍になった」と騒ぎたてた中学教員が部活のために割いている時間とは、「土日の部活」でしかない。平日を見てみれば、10年前の34分から2016年度は41分と7分増えたにすぎない。

◆平日で勤務時間が増加している仕事

 文科省も土日に関しては「部活動・クラブ活動の時間が増加している」と指摘しているが、平日については部活についての指摘はない。平日で勤務時間が増加していると指摘しているのは、「授業」「授業準備」「成績処理」「学年・学級経営」だけである。

 これには理由がある。2008年の学習指導要領(中学での完全実施は2012年度完全実施)で、文科省は「脱ゆとり教育」へと転換した。そして授業時間が1割増え、学ばなければならない内容も大幅に増えたのだ。そのため教員が授業に割く時間も、授業準備や成績処理、さらには学年・学級経営に割く時間も増えた。そこについては文科省も対処策を示すわけでもなく、多くのマスコミも触れない。

  部活に問題がないとは言わないが、教員の長時間労働の原因になっている授業時間の増加と授業内容急増には触れないで、部活だけを責めるのは問題がある。だから、「長時間労働の解消なら、部活より授業に休養日を設けてはどうだろうか」という記事は、部活だけをスケープゴートにしないで、根本的な要因である授業時間のことも問題にすべきではないか、という主旨だった。それが、書き方が良くなかったのか、タイトルだけに引きずられたのか、先述したような意見をもらうことになったわけだ。

 ただし、そうした意見の背景には、「授業時間なら、どんどん増やしていい」「授業時間以外のものはいらない」という考え方があるのではないだろうか。文科省は脱ゆとり教育で再び知識偏重主義へ舵を切ったが、それを受け入れる風潮があるということだ。

 教員の長時間労働問題で部活がスケープゴートにされている状況は、脱ゆとり教育の知識偏重主義が加速され、受け入れられる土壌ができつつあることの表れでしかない。それは、教育にとっての危機でもある。

文/前屋 毅

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