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歴史は繰り返すか 「牛肉」を巡る米中貿易摩擦の予兆

6/14(水) 15:12配信

日経BizGate

30年前の「牛肉とオレンジ」を連想

 1988年1月に留学のため、筆者は初めて来日した。来る前に、中国で数年間日本語を習い、それなりの自信があったが、来てみたらやはり分からないことだらけだった。典型的なのは、新聞やテレビでよく「牛肉とオレンジ」といった表現に接する時だった。

 なぜ、日本のマスコミは毎日「牛肉とオレンジ」の話をこんなに大々的に取り扱うのか、なぜ、アメリカ人は日本に「牛肉とオレンジ」を必死に売り込もうとするのか、言葉は分かるが、意味はまったく分からなかった。ちなみに、約30年後、顧客訪問やセミナーの際に筆者が平成生まれの日本の若者たちに「牛肉とオレンジ」を聞いてみたら、どこかで聞いたことのある話だが、分からないと回答する人が少なくなかった。

 1988年は、日米が第3次牛肉・オレンジ交渉で輸入割当撤廃及び関税の段階的な引き下げについて最終合意した年である。その後、日米貿易摩擦に関する知識が増えるにつれ、あの偉大なアメリカは牛肉とオレンジ以外に日本に売り込むものがないのか、アメリカの凋落を嘆いたことを覚えている。

 しかし、わずか数年後、バブル崩壊をきっかけに日本が長期低迷に突入し、アメリカが復活の道を辿り始めるとは夢にも思わなかった。

トランプ大統領の対中政策が大きく転換

 歴史は繰り返すものである。5月11日、米商務省は7月16日から、中国がアメリカ産牛肉の輸入を再開することで合意したと発表した。ほぼ同じ日、中国財務省と商務省の関係者も記者会見を開き、合意事項を認めた。

 トランプ大統領は選挙段階で巨額の対中貿易赤字を激しく批判し、貿易不均衡の是正に向けた中国の努力を促すため、為替操縦国の指定や懲罰的輸入関税の導入などの制裁を辞さない姿勢を見せていた。しかし、4月6日、フロリダの別荘で中国の習近平国家主席と会見したことを契機に、トランプ大統領による中国批判が鳴りを潜め、むしろ手放して中国を褒める場面が増え始めた。

 トランプ氏の対中政策が180度の転換を見せたのは、北朝鮮問題を巡る緊張感が高まるにつれ、中国の協力が不可欠だとの判断が働いたと考えられる。また、「百日計画」を柱とする米中の通商貿易交渉が想定外に順調に進んでいることも見逃せない。

 トランプ・習近平会談からちょうど100日目になる7月16日を選んで、中国がアメリカ産牛肉の輸入及びその他の市場開放を公約したのは、即効性を重視するトランプ大統領のメンツを立てるのが狙いだろう。

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最終更新:6/14(水) 15:12
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