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ハリルJ、体裁を整えることで精一杯。攻撃のオプションなく、勝ち点1は悪くない結果【西部の戦術アナライズ】

6/14(水) 11:20配信

フットボールチャンネル

 13日、ロシアW杯アジア最終予選イラク戦に臨んだ日本代表。早い時間にセットプレーから先制ゴールを奪ったものの、終盤に失点を喫し勝利を逃した。けが人が出たことも含めて消耗度の高い試合となったが、ハリルジャパンは守備的なゲームプランでこの一戦に臨んでおり、ドロー自体は想定内だったと言えるのではないか。(文:西部謙司)

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●悪くない1ポイント。消耗とミスが重なっての失点

 気温37度、非常に厳しいコンディションで行われた消耗戦で1ポイントを持ち帰れたのは悪くない結果だ。次のホームのオーストラリアに勝てば予選突破である。今回のオーストラリアはそれほど脅威ではなく(日本もだが)、ホームで勝つ可能性は十分ある。

 日本はハリルホジッチ監督の基本戦術であるミドルゾーンでのブロック守備からのカウンターという戦い方で臨んだ。シリアとのスパーリングマッチで4-3-3が機能せず、負傷者やコンディションが整わない選手もいる中で選択肢を失ったのだろう。

 本来なら、ベースの戦術プラス、対戦相手に合わせた人選で勝機をつかむのが得意な監督なのだが、今回は最低限の体裁を整えるので精一杯だったという印象である。

 早い時間に先制しながら、後半に追いつかれたのは残念だ。だが、日本の守備ブロックはそこまで強固ではなく、追加点を奪えるほどの攻撃力もなかった。引き分けはある意味妥当な結果であり、あの状況と今回のメンバーおよび戦い方では仕方ない。

 日本のフォーメーションは4-2-3-1。急造ボランチコンビの井手口と遠藤は、運動量と守備力が特徴であり彼らのゲームメークは最初から期待していない。トップ下の原口もゲームを作るタイプではなく、右サイドの本田ぐらいしかプレーメーカータイプはいなかった。

 つまり、相手にボールを持たせることがこの試合のゲームプランである。持たせておいてカウンターアタックを狙う。

 井手口は守備力を発揮し、吉田と昌子のセンターバックコンビも落ち着いてイラクの攻撃を防いでいた。ほとんど相手にチャンスを作らせていない。しかし、相手を引き込んでしまうので必然的に自陣でミスが発生しやすくなる。失点の直接の原因は吉田とGK川島の一瞬の連係ミスだった。

●ボールに食いつきすぎるという弱点。攻撃のオプションはなし

 日本の守備の弱点はボールに食いつきすぎるところだ。アグレッシブにいけと指示されているのだろうが、ときどきそれが裏目に出る。失点場面では遠藤がボールに釣り出されところから玉突き的に対応が遅れ、ペナルティエリア内まで侵入を許していた。ただ、イラクの選手は転倒していて危機はいったん終わっている。

 こぼれ球の近くにいた吉田は、飛び出してきた川島に任せようとした。ところが、吉田の背後からカッラールが足を伸ばしてボールをつつき、こぼれ球をシルターに蹴り込まれてしまう。

 吉田がカッラールの来る方向に立ってブロックしておけばなかった失点だろう。ただ、その前の展開でイラクに押し込まれていて守備ブロックが深くなりすぎていたのが遠因であり、消耗して足をなくしていたのが根本的な原因といえるかもしれない。

 同点にされた後、日本は2点目を狙って攻勢をかけた。しかし、左サイドは久保が負傷して走れないために長友が不用意に前に出ることはできなかった。酒井高徳と本田のコンビで右から崩そうとするが打開しきれず。

 もともと攻撃のオプションが限られているうえ、負傷者2人の交代で3枚のカードを使い切ってしまっていたので打つ手もない。最後は吉田をトップに上げて本田のシュートにつなげたがGKの正面をついた。

 守備的なゲームプランで臨んでいるのでドローは想定内といっていい。

 カウンターアタックでの優位性を出せるスピードのあるFWはおらず、大迫か本田が絡んだときの単発的なコンビネーションぐらいしか攻め手がない以上、点がとれないのは仕方がない。

 ゼロで抑えてしまえばプランどおりで、それに近い守備はできていた。引いたときの吉田、昌子の安定感もあった。ただ、日本の守備組織に安定感があったわけではなく、イラクのフィニッシュへのアプローチがハイクロスだったので助かったところはあったと思う。

 次のホーム、オーストラリア戦は全く違った試合になるはず。メルボルンでの守備的な試合も再現されない。日本の長所を発揮して勝ち、ワールドカップ出場を決めてほしい。

(文:西部謙司)

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