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映画『20センチュリー・ウーマン』春期男子の人生指南役の適役は? [mi-mollet]

6/14(水) 12:01配信

講談社 JOSEISHI.NET

自分とは何者なのか、これから先、何をよりどころにして生きていけばいいのかと青臭く考え込み、触る者みな傷つけたりしてしまうやっかいな思春期。誰にでも訪れるそんな時代の渦中にいる男の子に手を焼いたワーキングマザーが“教育係”に任命したのは、世代の違う女の人たちだったら!? というお話『20センチュリー・ウーマン』。壮大な印象を受けるタイトルですが、マイク・ミルズ監督は前作『人生はビギナーズ』でゲイであることをカミングアウトした父親についての物語を撮ったクリエーター。この最新作では母親をモデルに、とてもパーソナルでありながら時代の変わり目のうねりを感じさせる、普遍的な広がりを持つ映画を完成させています。

79年、サンタバーバラ。シングルマザーのドロシアは反抗期を迎えた15歳の息子、ジェイミーに手を焼きはじめていました。そこで、家に間借りしている写真家のアビーと、夜ごとジェイミーの部屋に忍び込んでくる幼なじみのジュリーに、息子の人生の指南役になってほしいと相談を持ちかけます。

ジェイミーのことがだんだん理解不能になっていくドロシアを見ながら、同じく40歳で息子を生んだ私は、これは近い将来の自分では……? と他人事とは思えなかったのと同時に、自分にはない感性を持つ周囲の女の人たちから“男らしさとは?”を学ばせようとする自由な発想が面白く、まぶしくも感じました。

『地球に落ちて来た男』のデイヴィッド・ボウイに影響されて髪の毛を真っ赤に染め、自分も人生に惑いながらパンクやアート、フェミニズムについて一生懸命教えてくれるアビーと、「セックスでオーガムズは感じないけど、そのときの男のかっこ悪さが愛おしい」と言いつつ、若い肉体を持て余しているようなジュリー。息子に幸せかどうかと聞かれ、取り繕った答えなどせずに「そんなことを人に聞くもんじゃない。幸せかなんて考えたら、鬱になる」と言うドロシア。この映画に出てくる三世代の女性たちはみんな何だか、どこか危なっかしい。

そしてそんなかっこ悪さも不機嫌も、理不尽さもすべてひっくるめて描いているのに女性讃歌、というか人間賛歌の域まで感じさせるマイク・ミルズ監督の視点に、とても温かでフェアなものを感じました。母性を崇めたてることなく、こんな風に女たちを愛おしく描ける男の人がいる世界は素敵だなぁ、なんてことを思わせてくれる作品です。3人の女優たちもベストアクトを見せていますので、ぜひスクリーンで!

『20センチュリー・ウーマン』
監督:マイク・ミルズ
出演:アネット・ベニング、エル・ファニング、グレタ・ガーウィグ 
配給:ロングライド 丸の内ピカデリーほかにて公開中